記者の目

2014/6/13

バイク愛好家の救世主となるか!?

空き店舗・倉庫をバイク駐車場に再生

 近年、「駐車場不足」「取り締まり強化」等が原因でバイク人口が激減しているという。また、警察庁のまとめによると、2013年における全国の二輪車盗難認知件数は5万1,588件(前年比13.3%減)。10年から4年連続で前年を下回っているとはいえ、依然として5万件余りの盗難が発生しており、悔しい思いをしているバイク愛好家は少なくない。一度盗難に遭うと、買い控えの原因になるとも言われている。  こうした中、東京・福岡の5ヵ所で空き店舗や空き倉庫をバイク駐車場に再生しているのが、売買・賃貸仲介、管理、リノベーション等を手掛ける(株)ライズグループ(東京都新宿区、代表取締役:黒沢 勉氏)。5人待ちの駐車場があるほど需要が高く、現在も3つのプロジェクトを進行中だという。

バイク駐車場「シェローバイクパーク三ノ輪駅前」(東京都荒川区)。庫内はバイク愛好家が集まるコミュニティスペースにもなっている
バイク駐車場「シェローバイクパーク三ノ輪駅前」(東京都荒川区)。庫内はバイク愛好家が集まるコミュニティスペースにもなっている
バイクを仕切る「シェロープレート」のおかげで、東日本大震災のときもバイク転倒事故が起こらず被害ゼロだったという
バイクを仕切る「シェロープレート」のおかげで、東日本大震災のときもバイク転倒事故が起こらず被害ゼロだったという
シャッターや床、プレート等の設備投資は発生するが、一度設置してしまえばその後の新たな設備投資は必要ない
シャッターや床、プレート等の設備投資は発生するが、一度設置してしまえばその後の新たな設備投資は必要ない
バイク駐車場「シェローバイクパーク早稲田」(東京都新宿区)のリフォーム前・リフォーム後
バイク駐車場「シェローバイクパーク早稲田」(東京都新宿区)のリフォーム前・リフォーム後

◆半年や1年もの空室が続く…

 「店舗や倉庫の長期空室を何とかしてほしい」という相談が黒沢社長のもとに持ちかけられるようになったのは、今から5~6年ほど前のこと。景気低迷に加え、インターネットの普及により実店舗なしでのビジネスが可能となったことなどから、店舗や倉庫で半年~1年もの空室が続くようになったからだ。
 また、駅から遠く立地が悪い場所では、より安い賃料の物件が選ばれるようになる。借り手がつかないと値を下げ、それでも借りられないとさらに値下げする…といった悪循環に陥ってしまう。

 これまで、マンションの空室対策は数多く手掛けてきた同社だったが、「店舗や倉庫の空室問題はもっと深刻」(黒沢社長)と実感したそう。そこで思いついたのが、バイク駐車場への転換だった。
 「知人のバイク愛好家から、駐車場が足りなくて困っているという話はよく聞いていましたし、いくらリノベーションしても店舗や倉庫に対する需要が少ないのであれば借り手はつきにくい」(同氏)と考え、駐車場運営を提案することとした。

◆設備投資が少なく、回収は短期間で

 半年も1年も賃料が入らないというのは、オーナーにとっての死活問題につながる。しかし、オーナーに話を持ちかけても、最初は「そんなにバイクの駐車場に需要があるのかねぇ…」と半信半疑の人が少なくなかったという。

 だが、黒沢社長には勝算があった。
 バイク愛好家は、手塩にかけた愛車をそれはそれは大事にし、中には(大げさではなく)命の次に大事だとさえ思っている人もいるのだとか。そのバイクに、傷を付けられたり盗まれたりするなんて、とても我慢ができない。とはいえ、分譲・賃貸マンションでセキュリティに優れたバイク用駐車場を確保するのは難しく、需要があるのに供給がまったく追いついていないことを十分に理解していたからだ。
 また、駅から遠くても立地が悪くても、バイク利用者にはデメリットにならない。さらに、設備投資が少なくて済む。もちろん、シャッターや床、プレート(隣との仕切り)などの設備投資は必要だが、掛かる費用は平均で260万円といったところ。バイクの設置台数にもよるが、この金額は約2年(満車の場合)で回収できる計算だという。
 しかし何といっても、収入がゼロにならないのが大きなメリット。店舗や倉庫の場合、入居者が決まるまで家賃はまったく入ってこないが、バイクガレージは複数の人が借りているため、一括で解約になることはほぼあり得ないのだ。

 こうしたメリットをオーナーに伝え、現在は東京4ヵ所、福岡1ヵ所でバイク駐車場を展開中。1ヵ所に収容できるバイクは平均10台ほど、全エリアで100%の入居率を実現している。
 賃料は、中型で1万1,000円(税別)~、大型で1万3,000~1万5,000円(税別)。5人待ちの駐車場や、納車が9月にもかかわらず先に駐車場を確保し、6月から賃料を支払っている人もいるそう。オーナーからも、「以前の賃料よりもアップした」「収入がゼロという不安がない」と好評だという。
 「現在は、神奈川県の本厚木、東京都の春日、浅草で3つの新プロジェクトが進行中。月平均で4~5件の問い合わせがあるので、今後もプロジェクトを随時立ち上げていく予定です。供給に対して需要が多すぎる市場ですが、やみくもに手を出して客付けできなければ何の意味もない。物件周辺の綿密なマーケティングを行なった結果、安定的な収益を得られないと判断したら断ることも大切」(同氏)。

◆ブランディングを強化し、年内100台を目指す

 「年内に100台くらいまで増やしたい」と抱負を述べる黒沢社長。近いうちに、バイク駐車場専用のホームページを立ち上げるとともに、知名度アップのためバイク雑誌への広告掲載も検討する予定。ブランディング強化に注力していく考えだ。また、ゆくゆくは1階が駐車場、2・3階が住居というバイカー専門のアパートやマンションを手掛けたいという夢もあるそうだ。

 「駐車場さえあればバイクに乗りたい」と思っている人は決して少なくない。供給が追い付けばバイクを購入する人が増え、メーカーが潤い、景気活性化の一助を担うことにもつながるだろう。同市場の今後の動向に注目したい。(I)

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2024/3/7

「海外トピックス」を更新しました。

飲食店の食べ残しがSC内の工場で肥料に!【マレーシア】」配信しました。

マレーシアの、持続可能な未来に向けた取り組みを紹介。同国では、新しくビルを建設したり、土地開発をする際には環境に配慮した建築計画が求められます。一方で、既存のショッピングセンターの中でも、太陽光発電やリサイクルセンターを設置し食品ロスの削減や肥料の再生などに注力する取り組みが見られます。今回は、「ワンウタマショッピングセンター」の例を見ていきましょう。