記者の目 / IT・情報サービス

IT重説実験開始で、Web接客導入の動き

ネット対面でリアルタイムに接客

 「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験」が8月末から始まり、これを機に、インターネットを介し対面でリアルタイムに対応するWeb接客を導入する動きが出てきている。

ネットを通じてユーザーに説明する不動産事業者イメージ
ネットを通じてユーザーに説明する不動産事業者イメージ
Web接客画面イメージ。画面を通して物件情報を説明。画面右上が入居希望者(ユーザー)
Web接客画面イメージ。画面を通して物件情報を説明。画面右上が入居希望者(ユーザー)
バーチャル内見中。ユーザーの要望で窓からの風景を確認
バーチャル内見中。ユーザーの要望で窓からの風景を確認

◆対面の必要がなくなることで、一貫した接客が可能に

 IT重説は、これまで対面で行なう必要があった重説を、インターネット等を利用して(対面と同様の状況を作って)行なうことができる、というものだ。つまり、ユーザーは必ずしも来店する必要がなくなり、導入されれば、事業者は接客から内見、契約に至るまで一貫してWebで行なう「Web接客」も可能となる。

 この機をチャンスと捉えた会社の一つが(株)日本財託(東京都新宿区、代表取締役:重吉 勉氏)だ。同社では、3年前より、法人営業部で、主に遠方、海外居住など来店できない顧客への対応策として、動画やライブ配信システムを使った内見サービスに注力してきた。あらかじめ物件を動画撮影してYou Tubeを利用した専用のサイトで閲覧できるようにしたり、あるいはUstreamのライブ配信やSkypeなどを接客に取り入れてきたのだ。
 ところが同システムは比較的手軽に利用できる一方、再生画質の悪さや、表示のタイムラグなど、機能面である程度目をつぶる必要があった。加えて、契約時に必ず来店しなくてはいけない規則もネックとなり、本格的なWeb接客システム導入には至っていなかった。しかし今回、IT重説の実証実験スタートを機にシステムを導入。積極的な取り組みをスタートする考えだ。

◆PC等のモニターを介して対面と同様に

 では、「Web接客」とは具体的にどういうものか。その一例として同社が今回導入したシステムを紹介しよう。

 同システムでは、IT重説同様に、Web会議システムを用いる。PC等のモニターを介して“対面と同様のリアルタイムな接客”をするのだ。

 まず、設定した日時に、ユーザーと事業者双方でシステムにアクセスする(ユーザーには、あらかじめアクセス先をメールで送付しておく)。アクセスした後は、双方の人物確認等を経て、画面に物件情報を表示させながら、物件の説明や条件等の確認をするなど、カウンター接客と同様のサービスを行なう。

 希望物件が決まればバーチャル内見を行なうことも可能だ。希望物件にあらかじめスタッフを派遣し、入居者の要望に応じて、その場で確認したい箇所を映像に映して見せることができる。あらかじめ撮影した動画を配信するより柔軟な対応ができるといえるだろう。

 先日、同社がマスコミに公開したIT重説・Web接客模擬実験では、TV会議システムを用い、同社スタッフ(東京・新宿)と入居希望者(東京・日比谷)、物件の現地にいるスタッフ(東京・幡ヶ谷)をインターネットでつなぎ、リアルタイムで「契約前の重要事項説明」「部屋探しの接客」「部屋の内覧」の様子が披露された。バーチャル内見では、現地の不動産会社スタッフがiPhoneから内見希望物件を生中継した。(なお、タブレットやスマートフォンなどのモバイル端末もアプリを入れれば同システムの画面表示が可能となる)

◆ユーザーの利便性向上や、業務効率アップに貢献

 Web接客が有効なのは、まず時間がない、来店が難しいといったケースへの対応だ。同社が想定しているのも、海外赴任を含めた急な異動で転勤するといったユーザーで、Web接客を使えば、そうした人たちにも対応できるようになる。ユーザー側から見れば、従来の物件検索や、メールや動画、インターネット電話などの手段と比較して、少ない手間暇で希望に沿う物件をより素早く見つけることができ、「利便性向上」にも通じる。なお、「来店が難しい」という点では、同社ではこうした転勤者以外にも、不動産取引をする海外投資家や、高齢者、障害者などへの対応も想定している。

 さらに利用が広まれば「土日に集中しがちなユーザーを平日に分散できることによる業務効率化」や、応対するスタッフも必ずしも会社にいる必要がなくなることで、育児や介護が必要なスタッフの「在宅勤務の実現」といったことにも通じると考えられる。

◆システムのメリットを生かして接客サービス向上へ

 個人的には、システムの特性を生かした接客の多様性に期待したい。例えば、このシステムは同時に最大10名(10ヵ所)をつなぐことができる。同社では、この機能を生かし離れた場所に居住する親子をつないで同時に部屋の契約内容の確認や内見をしてもらうといった接客も始めている。初めて部屋探しをする人にとってはWeb接客やバーチャル内見だけでは厳しい面もあるだろうが、信頼できる人と一緒に利用できるなら、そうした際にも有効だろう。

 またバーチャル内見について同社では、物件のイメージが伝わりやすくなるため、居住後の「思っていたのと違う」といったクレームを減らすことに役立てたい考えだ。さらに、内見が集中するような2~3月といった繁忙期に素早く現地へ赴くのが難しい場合などに利用すれば、物件が埋まる前に動くことも可能となり、物件案内・成約のスピードアップにつながる可能性も見込んでいるとのこと。

◆動画や音声の品質はサービスの広がりを十分期待させるレベル

 IT重説を導入する事業者側では、画面上で宅地建物取引士証の記載内容が確認できるレベルの解像度での映像配信が求められている。その要件基準に合わせたシステムなので当然のことではあるが、模擬実験では想像以上に画質や音声がクリアで、双方のやりとりもタイムラグをほとんど感じなかった。もちろん、実際の場面では、回線の使用状況や双方のシステム環境なども影響してくるだろうが、同社によれば、模擬実験用に特別な回線を用意したわけではないとのこと。あえて比較すれば、最近物件紹介でも使われているYouTubeなどの動画よりは格段にきれいに見える。
 もはや技術的には、ほんの数年前の品質の追求が目的だった段階はとうに超えており、今後、サービスの広がりが十分期待できるレベルに達しているといえそうだ。

◆どこまで対応するか等、適切な運用が必要

 一方、今後こうしたシステムを普及させていく上では、メリットばかりでなく課題も見えてくる。
 まず考えられるのは、システム的な不具合。そうした際には双方からの申し出で取りやめることはできるが、一度取りやめると逆にユーザーの心証はかなりマイナスになると思われる。さらに、こうしたWeb接客のシステムでは、映像の解像度同様、IT重説の要件基準に合わせて、ユーザーとのやりとりを録画・録音するケースも考えられる。説明内容のあいまいさや理解不足によるトラブルを防止するためのものだが、ユーザー側からすれば、クレーム対策等に映ることもある。これに難色を示し、録画をされない来店を選ぶユーザーもいるだろう。やりとりを再確認できる等のユーザー側のメリットをどこまでうまく伝えられるか。
 また、事業者側の対応面でも、一例を挙げれば、時間的な成約がなくなる分、「どこまで対応するか」が問題となってきそうだ。実際、模擬実験でも、時差のある海外在住者への対応も視野に入れていることもあり「時間的にどこまで対応すればいいのかの線引きが難しくなる」といった声も聞かれた。また、例えば最寄り駅からの道や夜の様子、学校や生活利便施設がどんな様子か映像で見たいといった、周辺情報等への要望なども同様。

 そもそも物件や状況によっては、Webを通じてではなく、実際に対面で説明する、あるいは物件を見てもらうほうがいいケースもあると考えられる。そうした際に、例え相手がWeb接客をのぞんでも、それで済ませない適切な運用、対応の使い分けは必要だろう。

 とはいえ、今どきはWeb接客やバーチャル内見にそれほど抵抗がない層もそこそこいると思われる。こうした層へのアピールの仕方によっては、ユーザー層も広がる可能性も十分あり、今後の可能性に大いに期待したい。(meo)

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【関連ニュース】
ITを活用した重要事項説明の模擬実験を実施/日本財託(2015/7/15)

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