不動産ニュース / 政策・制度

2016/3/18

「IT重説」社会実験の検証検討会が初会合。事業者、消費者とも肯定的評価

 国土交通省は18日、「ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会」の初会合を開いた。

 ITを活用した重要事項説明(IT重説)については、「ITを活用した重要事項説明のあり方に係る検討会」の最終とりまとめ(2015年1月)に基づき、その実施方法や効果、問題点等を把握するため、賃貸取引と法人間の売買取引に限定した社会実験を行ない、最大2年間の検証を行なった上で解禁するとして、15年8月から社会実験が開始されていた。実験結果については、半年に1回の結果検証を行なうこととされており、今回、約半年間の実施結果と、重説を行なった事業者と重説を受けた消費者のアンケート結果などを検証したもの。

 社会実験には、246社が参加。15年8月~16年2月までの半年間で、37社により、183件のIT重説が行なわれた。うち178件が個人の賃貸仲介・代理で、法人賃貸は3件、法人売買が2件。個人賃貸仲介では、海外所在者への重説が2件あった。事業者の利用機器は、パソコンが9割以上だったが、消費者の利用機器は「スマートフォン」が6割弱だった。

 消費者のアンケートでは、「取引士証の確認」「説明者の表情の確認」「重説の聞き取りやすさ」などについて、いずれも8~9割が「十分だった」と回答。重説の理解状況についても、9割弱が「(事業者に)十分伝えることができた」と答え、「今後もIT重説を利用したい」との意向も、52.2%となった。

 事業者のアンケートでも、「身分証の確認」「表情の確認」「声の聞き取り状況」「説明内容の伝達度合に関する認識」「図表資料の理解状況の確認」「説明のしやすさ」などの項目で、いずれも8割弱~9割強の回答者が「十分だった」とした。また、IT重説に対する評価では、「対面での重説と同程度」との回答が初回時には3割弱にとどまったが、2回以上実施した後でのアンケートでは65%まで高まった。

 一方、事業者・消費者とも、約3割の回答者が音声や映像など、重説中「機器にトラブルが生じた」と回答。約半数の業者が「実施後のアンケート」「重説の録音・録画」などを理由に、顧客からIT重説を断られていたほか、IT重説実施件数の3分の2を、3業者が占めるといった課題も見られた。

 これらの実験結果を受け、委員からは「対面と非対面で、重説に質的な差がないことが示された。少なくとも賃貸住宅に関しては、本格運用しても問題ないのでは」「検討会で問題とされていた“なりすまし”の心配も、杞憂だった」「IT重説は受けたい人、説明したい人が利用するもので、わざわざ禁止することはなく早めに本格運用すべき」といった声があったが、「参加業者数は少ないし、賃貸の繁忙期でこの件数では、ほとんどニーズはないのでは」「参加業者は若い事業者が多い。老舗の事業者の参加を増やしていくべき」「重説のトラブルは後々まで響くので、重説中の機器のトラブルは問題。今の段階で実験を止めるのは時期尚早」「賃貸のトラブルは退去時に出る。半年後に退去時のサンプルをみて、初めて(IT重説の是非が)評価できる」といった否定的意見もあった。

 また、会合では、宅建事業者や消費者に対するIT重説の認知度の低さ、参加事業者数の少なさ、消費者のアンケートを事業者が同省に再送するという煩雑さ、録画録音に対する消費者の警戒感などが、IT重説件数が伸び悩む課題との指摘が多くなされた。同省は、IT重説実施事業者の追加募集を検討するとしたほか、事業者や消費者に対するIT重説の周知徹底に注力していく。今後、さらに半年間IT重説のサンプルを集め、半年後のフォローアンケート結果を含め、9月末めどに開催する2回目の会合で検証していく。

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重説IT化

不動産取引における重要事項説明を、インターネット等を活用して対面以外の方法で行なうこと、またはその方法を導入すること。 重要事項説明は、宅地建物取引士が対面で行ない、書面を交付しなければならないとされていた(宅地建物取引業法)。

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