不動産ニュース / その他

2016/9/20

「平成28年 都道府県地価調査」、業界各トップがコメント

 国土交通省が20日に発表した「平成28年 都道府県地価調査」結果を受け、業界団体・企業のトップから以下のようなコメントが発表された。(以下抜粋、順不同)

(一社)不動産協会 理事長 木村惠司氏
(一社)不動産流通経営協会 理事長 田中俊和氏
(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 伊藤 博氏
(公社)全日本不動産協会 理事長 原嶋和利氏
三井不動産(株) 代表取締役社長 菰田正信氏
三菱地所(株) 代表取締役 杉山博孝氏
住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏
東急不動産(株) 代表取締役社長 植村 仁氏
東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 佐久間 一氏
野村不動産(株) 取締役社長 宮嶋誠一氏

◆(一社)不動産協会 理事長 木村惠司氏

 今回発表された都道府県地価調査は、全国平均では住宅地の下落幅が引き続き縮小し、商業地は昨年までの下落から横ばいに転じた。三大都市圏では、住宅地は上昇を継続し、商業地は上昇基調が強まるなど、我が国経済が緩やかに回復する中、三大都市圏の商業地を中心に、地価の回復傾向が持続していると評価している。

 世界経済の先行きにも不透明感が漂う中、少子化・高齢化を伴う人口減少等、山積する諸課題に立ち向かいながら、こうした地価の回復の動きをより確実なものとし、デフレ脱却をさらに進めるためには、将来の成長に資する国内投資や円滑な買換の促進による土地・不動産ストックのフロー化を通じて、イノベーションを加速し、企業の生産性を向上させる成長戦略の強力な推進が不可欠だ。

 我々としても、2020年の東京五輪やその先も見据え、経済成長の重要な原動力である都市の国際競争力の向上や良質な住宅ストックの形成を通じ、一億総活躍社会を実現するまちづくりに貢献して参りたい。

◆(一社)不動産流通経営協会 理事長 田中俊和氏

 今回の都道府県地価をみると、三大都市圏と地方の四市の地価は、住宅地が低金利や住宅ローン減税の効果等で小幅上昇、商業地は外国人観光客の増加や主要都市のオフィス空室率の低下等により上昇基調の継続、となったことは地価の安定的回復を示すものと評価している。

 東日本不動産流通機構(レインズ)によると、本年4月以降の首都圏の成約状況は、土地取引の平均価格が前年同期比で若干のマイナスとなっているが、中古マンションの成約価格は上昇基調が継続し、法人による投資需要は相変わらず強いものがあるので、今回の都道府県地価は現場の相場観に近いのではないか。レインズの全物件の取引件数も高水準な状況で推移しており、消費者の「低金利で買い時」の声は強く、足元の流通市場は堅調だ。

 今後も、過去最低水準の住宅ローンや住宅取得の政策的下支え、大規模な金融緩和の継続により、活発な不動産取引は続くものと期待している。

 我が国経済が足踏みの状況にあるなか、今後の持続的経済成長の実現のために地価の安定的な回復は不可欠であり、不動産流通取引の更なる拡大が求められている。

 先般成立した改正宅建業法では、インスペクション(建物状況調査)について、宅建業者の役割が位置づけられた。不動産流通市場の拡大を第一に掲げる当協会としても、インスペクションを浸透させる仕組みづくりに協力するなど、良質で魅力的な既存住宅としての市場評価や流通を目指す『新たな住宅循環システム』の構築に取り組んでいく。 

◆(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 伊藤 博氏

 平成28年の都道府県地価調査の結果は、全国平均では、住宅地は依然として下落傾向ではあるものの、下落幅が縮小し、商業地が前年までの下落傾向から横ばいに転じたことは、公示地価、路線価同様に上昇傾向への反転に期待が持てる結果となった。

 三大都市圏や地方主要都市においては、住宅地は前年並みの小幅な上昇となり、商業地は総じて上昇基調となった。これは、住宅地においては、マイナス金利政策に後押しされた住宅ローンの金利低下や住宅関連税制の拡充施策による需要の下支え、商業地においても、インバウンド需要や金融緩和の効果により商業施設用地取得等の不動産投資が活発になっていることにより、暫くは上昇基調が続くのではないかと考えている。

 地方圏においては、前年に引き続き住宅地、商業地ともに下落幅は縮小してきているが依然として下落傾向が続く等、地域間格差が見られる。これに歯止めをかけるには地方経済の活性化が不可欠であり、国による地方創生の総合的な政策の更なる推進が期待される。

 本会としても、グループビジョンに掲げている「地域の笑顔」の実現に向けて各種提言や施策に取り組むとともに、地価回復の傾向をさらに後押しすべく既存住宅流通市場の活性化に鋭意取り組んでいく。
 
◆(公社)全日本不動産協会 理事長 原嶋和利氏

 三大都市圏や地方観光都市を中心に、引き続き、国内外の不動産投資家による旺盛な投資需要等により、地価が上昇基調にあることは心強い。特に2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、ホテル等に対する需要が高まり、商業地域が上昇を示している。
 一方、地方において地価の下落基調が収束しているものの、「地方創生」に根ざす住みよい日本の創造、地域活性化推進のため、低金利環境や住宅ローン減税などによる需要の下支えに加え、更なる国内不動産需要の喚起に向け、時代の変化に応じた既存住宅流通市場の拡大による効果の発現など、効果的な政策運営を期待する。

 高齢化と人口減少を抱える日本にあって、地方都市を再生し、主要都市部とその他の地方都市との間に抱える格差是正を促進することは喫緊の課題である。本会としても積極的に既存住宅市場の活性化と増大する空き家の利活用の促進のための施策に取り組むとともに、若年世帯・子育て世帯の居住支援事業に協力していく。

◆三井不動産(株) 代表取締役社長 菰田正信氏

 今回の地価調査結果によると、昨年に引き続き三大都市圏における住宅地および商業地の地価は、総じて堅調に推移しており、特に商業地については上昇基調を強めている。また、全国平均で見ると、商業地が下落から横ばいに転じるなど、全用途平均で下落幅の縮小傾向が継続している。

 首都圏のマンション市況は、雇用、所得の改善や低金利が続いていることから、都心・湾岸物件を中心に引き続き好調に推移している。一方で、供給量の前年割れの状態が続いており、郊外部では、価格上昇もあって物件によっては販売に時間を要するものもあるため、今後の動向を注視している。
 オフィスビルについては、企業のオフィス増床や拡張・立地改善を目的とした移転等の動きは引き続き見られ、東京都心のオフィス空室率は低水準で推移している。また地方都市においてもテナント需要が拡大し、空室率が改善している。今後もBCP意識の高まりや優れた人材確保への動きもあり、防災・省エネ対策や利便性に優れたビルへの需要の拡大が続くとみている。
 ホテルについては、堅調な国内レジャー需要やインバウンド観光客の宿泊需要を背景に、首都圏・関西圏を中心に好調に推移している。
 不動産投資市場においては、都心を中心としたオフィス賃料上昇基調や低金利、また不透明感を増した世界経済において、相対的に安定した日本経済・不動産への評価などを背景に、国内外の投資家の投資意欲は引き続き高い。

 当社グループにおいては、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年やその先を見据え、東京そして日本各地において、その地域の特性を活かした魅力ある「街づくり」を進め、日本経済の確実な再生に一層貢献していきたい。

◆三菱地所(株) 代表取締役社長 杉山博孝氏

 今回発表された都道府県地価調査では、三大都市圏において、商業地では上昇基調を強め、住宅地でも小幅な上昇を継続した。緩やかな景気回復基調が続く中、地価の回復が持続していると感じている。

 当社オフィスビル事業においては、立地改善、BCP 対応を目的とした事務所移転等、オフィス需要が引き続き旺盛であることを受け、空室率は低水準で推移し、賃料も緩やかな上昇傾向が継続している。今後も街づくりを通じて、都市競争力向上やオフィス需要創出に努めていきたい。
 丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)では、法律事務所等のプロフェッショナルファームや金融機関等の集積が続いており、昨今では企業集積の流れがフィンテック等の成長業種にも波及している。大規模再開発が進む大手町では、エリア全体の企業集積や防災機能の高さ等が評価され、本年4月に「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」が満室で竣工した他、2017年1月竣工予定の「大手町パークビル」のリーシングは堅調に推移している。2018年10月竣工予定の「(仮称)丸の内3-2計画」の引き合いも強い。

 当社グループが運営管理するホテルでは、訪日外国人の増加等により、高水準な平均稼働率を維持しながら、客室単価が上昇し、売上増加につながっている。
 本年7月着工の「(仮称) 京都四条烏丸ホテル計画」や8月着工の「(仮称)大阪南船場ホテル計画」等、ホテル需要の底堅いエリアにおいて、4物件のホテル開発を進めている。

 当社住宅事業においては、雇用情勢の改善や歴史的低金利、住宅ローン減税等の施策を背景に、分譲マンションの取得需要は引き続き堅調に推移している。
 本年5月に販売開始した「ザ・パークハウス 新宿御苑」(東京都新宿区新宿2丁目)が3ヵ月で全戸完売するなど、都心物件の販売は引き続き堅調であることに加え、近郊の物件も駅近などの特徴がある物件を中心に堅調である。
 優良な資産形成や都心への良好アクセス立地での自己居住・セカンドハウス等のニーズに対し、今秋より、資産形成用のコンパクトマンション「ザ・パークワンズ」の販売を開始予定。

◆住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏

 今回の地価調査では、前回に続き住宅地、商業地ともに総じて回復傾向を示す結果となった。東京都心をはじめ、大都市部を中心に上昇基調が続いている。

 東京のオフィスビル市場では、拡張移転や増床などの新規需要により空室率は低位安定、賃料も緩やかな上昇傾向が続いている。

 分譲マンションの売れ行きは、東京都心部に加え郊外・地方においても交通・生活利便性の高い地域を中心に、低金利下で引き続き堅調だが、足元の景況感に変化が現れており、今後の動向に注視していきたい。

 地価は回復傾向にあるが、経済情勢は未だ先行き不透明感が強く、不動産市況を取り巻く環境は依然として楽観できない。政府には、今後も適正な地価形成を促すため、引き続き都市再生の推進や住宅投資を促進する税制改正など実効性のある経済対策を期待したい。

◆東急不動産(株) 代表取締役社長 植村 仁氏

 今回の都道府県地価調査においては、三大都市圏では住宅地・商業地ともに上昇が継続しているとともに、全国的には下落幅が縮小し、かつ、商業地においては下落から横ばいに転じるなど、回復基調である。これは、景気回復・株価上昇などを背景に、地価の回復基調がより鮮明になったものと捉えている。

 住宅地については、低金利や住宅ローン減税等の政策的支援により、総じて堅調に推移しており、上昇ないし下落幅の縮小がみられた。
 都心部を中心とした駅前や再開発地域などのマンション適地の需要がますます高まっており、供給が希少な地域においては、上昇傾向が一段と強まっている。当社販売物件では、日本有数の高級住宅街エリアに立地する『ブランズザ・ハウス一番町』や、駅前再開発事業により更なる発展が期待される横浜駅西口から徒歩6分の『ブランズ横浜』、地下鉄御堂筋線本町駅直結という都心立地の『ブランズタワー御堂筋本町』などが好調であるほか、大阪市北区では、旧東洋ホテル跡地にて、『(仮称)ブランズタワー梅田北プロジェクト』の開発を進めている。

 商業地においては、雇用情勢の改善によりオフィスの拡張需要に伴う移転が増加し、空室率低下および賃料上昇の傾向が顕著であるとともに、国内外からの来街者の増加等により店舗やホテル等の需要が増加傾向である。銀座や表参道といった商業集積の高い地域の更なる繁華性の向上が見込まれ、当社が開発した『東急プラザ銀座』も3月の開業以来、多くのお客様にご利用いただいている。その他にも、当社は地価上昇の顕著な立地で開発を進めており、渋谷駅周辺では3つの再開発事業を推進するとともに、『東急プラザ表参道原宿』など、エリア特性に合わせた先進的な商業施設・オフィスを多数運営し、渋谷を中心とした「広域渋谷圏」でのNO.1のポジション確立を目指している。
 また、国家戦略特区に指定された竹芝地区開発計画、(仮称)内幸町二丁目プロジェクトなども手がけており、優良立地における都心再開発の積極的な展開を図ってまいりたい。
 地方圏においては、下落幅が縮小傾向を継続しているとともに、交通利便性の向上や独自の取り組みなどを行っているエリアでは大きく上昇しており、当社では、東急グループにて参画し今年7月に民営化が開始した仙台空港の運営や、投資が活発化しているニセコエリアでのリゾート展開、国内外の観光客が増加している沖縄におけるホテル事業計画など、需要が旺盛な地域での事業を推進している。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、企業収益の改善や、設備投資への資金流入、資金調達環境の好転、消費意欲の改善などにより、都心部のオフィス需要や店舗の出店については、継続して堅調な状態が続いているとの認識を持っている。

◆東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 佐久間 一氏

 今回発表された地価調査では、住宅地は住宅ローン減税等による住宅需要の下支えの効果もあり、三大都市圏では緩やかな上昇が継続、商業地はオフィス空室率の改善に加え、訪日外国人の増加等による店舗、ホテル等の需要が旺盛であり、三大都市圏では上昇基調が一層強まっている。また、地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)では、住宅地・商業地ともに三大都市圏を上回る伸び率となっており、不動産マーケットの回復が着実に地方圏にまで波及していることを示していると思われる。

 日本経済は穏やかな回復基調が続いているものの、中国をはじめとするアジア新興国や資源国等の景気下振れ、英国のEU離脱問題に伴う金融市場の変動の影響などから、先行きについては不透明感が増しつつある。
 不動産業界においては、賃貸オフィス市場は空室率の低下傾向が継続し、賃料水準も引き続き上昇傾向にある。分譲マンション市場は都心部の駅近およびタワー物件を中心に好調を維持している一方で郊外に加え都心部の一部にやや翳りが見られる等、販売価格の上昇に伴う二極化の傾向がさらに鮮明になっている。不動産投資市場は日本銀行による大規模な金融緩和の効果もあり、物件取引は引き続き高水準で推移しており、都心部の過熱感から、地方中枢都市に投資エリアが拡大する動きも見られている。

 経済の先行きについては決して予断を許さないが、当社グループは、これまで培ってきたノウハウと革新的なグループシナジーを発揮することによって、ハード面のクオリティだけではなく、上質なソフトやサービスを提供し、お客様から次も選ばれる存在になるとともに、社会の成熟化に伴う様々な課題の解決や都市の国際競争力強化に積極的に貢献していきたい。

◆野村不動産(株) 取締役社長 宮嶋誠一氏
 
 今回の地価調査では、全国的に住宅地の地価は総じて底堅く推移し、東京圏では3年連続で小幅上昇となった。商業地の地価は、インバウンド需要の増加等により店舗やホテル等の需要が旺盛であり、オフィスについても空室率の低下傾向、賃料水準の改善が引き続き見られるなど、収益性の高まりがみられることから、総じて堅調に推移している。なお、地方四市では住宅地、商業地ともに上昇傾向が強く見られた。

 分譲住宅市場に関しては、首都圏の分譲住宅価格は高い水準で推移しており、都心立地や駅周辺再開発等による新規分譲マンションでは、引き続き価格上昇も見られる。この傾向は、首都圏のみならず近郊部や地方中核都市にも波及が見られ、共働き世帯やシニア層による需要は旺盛といえる。また低金利や住宅ローン減税による需要の下支え効果もあり、中古住宅市場も堅調に推移している。

 オフィスビル市場に関しては、空室率の低下傾向は引き続き顕著であり、新規募集、改定ともに賃料上昇傾向が継続している。商業施設に関しては、東京都心部を中心にテナントの出店意欲は引き続き堅調に推移している。

 住宅地、商業地ともに事業用地の取得環境は引き続き厳しく、今後の地価動向については、不動産市場の中長期的トレンドの指標として引き続き参考にしていく。

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