不動産ニュース

2016/12/8

熊本地震建築物被害調査・課題などについて報告/建築研究所

「大きな課題に向け『持続可能プログラム』、『安心安全プログラム』の2つのプログラムを柱に、今後も従来通りしっかりと研究開発を推進していく」などと述べる坂本理事長
「大きな課題に向け『持続可能プログラム』、『安心安全プログラム』の2つのプログラムを柱に、今後も従来通りしっかりと研究開発を推進していく」などと述べる坂本理事長

 国立研究開発法人建築研究所は7日、国土交通省で専門誌記者に向け、これまでの取り組みについて成果報告を行なった。今回で14回目。

 研究報告では「平成28年熊本地震の建築物被害調査と原因分析を踏まえた課題について」「津波避難計画を支援するための津波火災シミュレーションモデルの開発について」など、7つの取り組みについて各担当研究員が発表。

 熊本地震の建築物被害調査と課題については、すでに、国土交通省国土技術政策総合研究所と合同で調査検討の成果をとりまとめた速報を出版・公開しており、今回は、このうち構造分野の話題を中心に、被害状況および原因分析結果とそれらを受けた検討の方向性について紹介した。
 全体的な被害の傾向については、現行規定による、あるいは耐震改修を行なった建築物は、適切に倒壊防止性能を確保することができていたが、新耐震基準より前の建築物や現行規定の主旨が徹底できていない建築物については、倒壊・崩壊等の甚大な被害につながったものがあったと指摘。引き続き現状の研究活動を継続し、解説書等を通じて新築・改修・補強の各段階において適切な設計の周知・普及に努めるとした。
 木造建築物については、旧耐震基準では多数が倒壊するなど大きな被害を受け、新耐震基準以降であっても2000年改定(現行規定)を境に被害状況に差が見られたため、安全性に及ぼす影響を評価し、適切なルール(仕様規定・計算規定)を検討の上、周知・普及に努めるとした。
 そのほか、建物の被災後の継続利用について、その阻害要因を分析し、災害時の要求性能やその確保に必要となる留意事項、留意事項を満たすための適切なルールについて、検討していく。

 津波火災シミュレーションモデルの開発については、津波火災の危険性評価に用いる計算ツールとして開発を進めており、その構想と開発状況を紹介した。危険性の評価結果を津波火災ハザードマップとして可視化することで、津波避難計画の改善に役立つ可能性を示した。

 その他、「CLTパネル工法実験棟と枠組壁工法6階建て実験棟の建設を通した施工検証と技術データの収集について」「高齢者の地域活動参加のためのまちづくりの手引き公開」や、「中南米 建物耐震技術の向上・普及」研修の拡充についての報告なども行なった。

 同研究所理事長の坂本雄三氏は、「今年の4月より第4期の中長期目標として新たにプログラム制を導入した。住宅建築分野においてキーワードとなる、高齢社会、エネルギー環境問題、防災など大きな課題に向け『持続可能プログラム』、『安心安全プログラム』の2つのプログラムを柱に、今後も従来通りしっかりと研究開発を推進していく」などと述べた。

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