不動産ニュース

2017/1/5

「2017年 年頭挨拶」(業界団体等)

 国土交通大臣および住宅・不動産業界団体トップが発表した年頭所感は、以下の通り。(順不同)

国土交通大臣 石井啓一氏
(一社)不動産協会理事長 木村惠司氏
(公社)全国宅地建物取引業協会連合会会長 伊藤 博氏
(公社)全日本不動産協会理事長 原嶋和利氏
(一社)不動産流通経営協会理事長 田中俊和氏
(一社)全国住宅産業協会会長 神山和郎氏
(独)都市再生機構理事長 中島正弘氏
(独)住宅金融支援機構理事長 加藤利男氏
(一社)マンション管理業協会理事長 山根弘美氏
(公財)日本賃貸住宅管理協会会長 末永照雄氏
(一社)賃貸不動産経営管理士協議会 末永照雄氏
(一社)住宅生産団体連合会長 和田 勇氏
(一社)プレハブ建築協会会長 樋口武男氏
(一社)日本ツーバイフォー建築協会会長 市川俊英氏
(一社)日本木造住宅産業協会会長 市川 晃氏
(一社)日本ビルヂング協会連合会会長 髙木 茂氏
(一社)不動産証券化協会会長 岩沙弘道氏
(公社)日本不動産鑑定士協会連合会会長 熊倉隆治氏

(順不動)

■国土交通大臣 石井啓一氏

 平成29年の新春を迎え、謹んでご挨拶を申し上げます。

 今年も国土交通行政に対する皆様の変わらぬご理解とご協力をお願い申し上げます。

 さて、昨年は、4月の熊本地震、8月から9月にかけての北海道や東北への度重なる台風の上陸など、大きな自然災害が発生しました。犠牲となられた方々に対して謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。被災地の皆様が、1日でも早く元気に元の暮らしを取り戻していただけるよう、引き続き総力を挙げて取り組んでまいります。

 東日本大震災から3月で6年が経過し、被災地では復興の確かな歩みが見られますが、今なお多くの方々が避難生活を続けておられます。本年は「復興・創生期間」の2年目に当たります。基幹インフラの復旧・復興や、住まいの確保などに引き続き取り組みながら、被災地の自立につなげ、被災地が地方創生のモデルとなるような復興の実現に未来志向でしっかり取り組んでまいります。

(中略)

 我が国の人口は2008年の約1億2,800万人をピークに減少が始まっています。少子化は深刻で、高齢化も極めて早いスピードで進んでいます。当面、生産年齢人口が減少していくことは、もはや動かしがたい事実です。しかしながら、働き手の減少を上回る生産性の向上により、潜在的な成長力を高め、新たな需要を掘り起こしていくことによって、経済成長を続けていくことは十分可能です。現在、政府はGDP600兆円の実現を目指していますが、ビックデータやICTといった新技術の活用や既存インフラの徹底活用などの取組を通じて生産性向上を図り、この目標達成に貢献していきたいと思っています。こうした観点から、昨年を「生産性革命元年」と位置付け、生産性向上に向けた先進的な取組として20の「生産性革命プロジェクト」を選定してまいりました。今後は、できるだけスピーディーにこれらのプロジェクトの具体化を進め、本年を生産性革命「前進の年」にしたいと考えています。あわせて、生産性向上の意識を国土交通省の様々な施策分野に浸透させてまいりたいと思っています。

 社会資本整備には、移動時間の短縮等を通じて生産性を高めて民間投資を促進する効果、災害リスク等を低減させる効果、国民生活の質を向上させる効果といった「ストック効果」があります。厳しい財政制約の下、こうした社会資本本来の効果を最大限発揮させることが重要です。このため、異なる分野の事業を一体的に実施したり、既存施設に小さな投資を行なうことでその施設の機能を大きく高める取組など「賢く投資」する取組や、ビックデータや新技術の活用によって利用効率を向上させるなど「賢く使う」取組を全力で推進してまいります。

 昨年の訪日外国人旅行者数は、年間2,400万人前後となり、過去最高となったほか、訪日外国人旅行消費額は4兆円も視野に入る勢いで増加し、引き続き好調に推移しました。昨年3月に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」に基づき、「観光は真に我が国の成長戦略と地方創生の柱である」との認識の下、「2020年訪日外国人旅行者数4,000万人・訪日外国人旅行消費額8兆円」など新たな目標の達成に向け、「観光先進国の実現」に取り組んでまいります。

(中略)

 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催は、東日本大震災から復興した力強い日本の姿を示すとともに、世界を代表する成熟年になった東京を発信する絶好の機会です。大会まで4年を切りましたが、その準備とスムーズな運営に国土交通省を挙げて対応してまいります。

■(一社)不動産協会理事長 木村惠司氏

 新年を迎え、今年は未来に向け新たな飛躍の年となるよう期待したい。
我が国の経済は、緩やかな回復を続けているが、先行きの見通しは不透明な状態であり、デフレ脱却を確実なものとし、GDPを拡大していくためには、都市と地方を通じたさらなる活力の向上が不可欠である。

 国際的な都市間競争がますます激化する中、我が国の大都市の魅力と国際競争力を高め、世界中からヒト・モノ・カネ・情報を呼び込まなければならない。都市再生事業をスピーディーに進められるよう、国家戦略特区のさらなる有効な活用が必要であり、ソフト面でまちづくりを支えるエリアマネジメントの充実や大都市のシティセールスも重要である。

 良好な住宅ストックを形成するために、建替等による新規ストックと既存住宅の活用は車の両輪である。老朽化マンション建替えのさらなる促進方策の検討が必要であり、少子化・高齢化や世帯構成の変化などを踏まえた多様な住宅供給のあり方を検討することも大切だ。

 当協会としても、魅力的な都市づくりや質の高い住宅の供給を通じて、真に豊かさを実感でき、将来に希望が持てる社会の実現に貢献していきたい。

■(公社)全国宅地建物取引業協会連合会会長 伊藤 博氏

 新年あけましておめでとうございます。年頭にあたり一言ご挨拶を述べさせていただきます。

 ご承知のとおり、昨年は英国のEU離脱、米国大統領選挙トランプ氏勝利・TPP離脱表明等、今後の世界経済に大きな影響を及ぼす出来事がありました。国内では、日銀のマイナス金利政策による住宅ローン金利の史上最低更新、国勢調査で戦後初めて総人口が減少に転じるなど少子高齢化傾向が進んでおります。

 このような中、喫緊の課題である既存住宅流通活性化対策としては、税制面で住宅や土地の所有権移転登記に係る登録免許税の軽減措置や事業用買換え特例など各種流通課税の特例が延長されました。空き家対策として本会が要望してきた所有者情報開示は、国交省にて関係省庁と協議のうえ今年度中にガイドラインが策定される見込みです。また、空き家・既存住宅活性化のため実態に則した媒介報酬規定の見直しも引き続き検討する所存です。

 本年4月1日施行の改正宅建業法にて全宅連に対し体系的な研修実施の努力義務が課せられるとともに、全宅保証は研修費用の助成を行うことができるようになります。これを契機に不動産キャリアパーソンの更なる充実に取り組んでいく所存です。また弁済業務保証金の弁済対象者から宅建業者が適用除外となるため引き続きコンプライアンス等の徹底を図っていきます。

 平成29年は全宅連創立50周年・全宅保証創立45周年の節目の年であります。昭和42年の全宅連発足、同47年の全宅保証発足以来現在に至るまで両団体は、土地・住宅政策要望、大手フランチャイズ対策、レインズの構築、銀行の不動産業進出問題、宅建士名称変更、苦情解決・弁済業務等、業界最大の公益団体として宅地建物取引の適正な運営と消費者保護の面で多大な役割を果たしてきました。

 本会では次なる50年に向け、現状を分析し戦略課題を明らかにし「ハトマークグループ・ビジョン2020」を策定いたします。本ビジョンにより各都道府県協会の進むべき道筋を示すとともに、全宅管理・ハトマーク支援機構と連携し、「地域により添い、生活サポートのパートナー」である皆様の経営基盤の強化・業務支援を展開する所存です。

 「みんなを笑顔にするために」会員各位のますますのご繁栄とご健勝をお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

■(公社)全日本不動産協会理事長 原嶋和利氏

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 我が国は、今や本格的な人口減少や少子高齢化の時代を迎え、政府では、地方創生を推進するとともに、東日本大震災や熊本地震からの復興、そして想定される大規模災害に備えての防災対策など国土強靱化への対応を重点政策項目として位置づけ、土地・不動産分野では、国民資産である住宅ストックを有効的に活用し、消費・投資の喚起を図る政策方針が定められております。

 政府与党におかれましては、これら施策を通じて、日本経済が活況を取り戻すことのできる政策推進を大いに期待するものであります。
又、昨年6月には「宅地建物取引業法の一部を改正する法律」が公布されました。

 既存住宅取引における建物状況調査(インスペクション)の結果の有無について我々宅地建物取引業者の説明が義務づけられるとともに、弁済業務制度改正と本会をはじめとする事業者団体に対して体系的な研修実施が盛り込まれました。不動産取引では、高度化・専門化された知識がこれまで以上に求められており、我々宅地建物取引業者は、取引の専門家として、さらなる知識のレベルアップに加え、コンプライアンス意識の向上に精進していく必要があります。

 平成29年を迎え、本会では、空き家問題を含む既存住宅流通市場の活性化対応をはじめ、不動産業界が取り組むべき諸課題の調査研究、税制を含めた政策要望活動、全日ステップアップトレーニング等の研修事業の充実強化、「ラビ-ネット」の普及促進等を積極的に推進し、併せて組織の充実強化と活性化をはかりつつ、消費者利益の保護の徹底と国民の安心安全な住環境に寄与するため、公益目的事業を適正かつ確実に実施して参る所存でございます。

 会員の皆様には、本年も本会の運営にご理解ご支援を賜りますようお願い申し上げるとともに、会員の皆様にとりまして本年がすばらしい年になりますよう、皆様のご健勝とご商売のご繁栄をお祈りし、平成29年年頭にあたってのご挨拶とさせていただきます。

■(一社)不動産流通経営協会理事長 田中俊和氏

 我が国経済は、3四半期連続のプラス成長となっている。本年は、海外経済の不確実性が懸念されるが、雇用・所得環境の改善や政策効果等により、景気は緩やかに拡大するものと期待されている。

 既存住宅流通市場は、レインズの成約件数が過去最高を更新するなど、堅調に推移している。本年も、低金利や税制等の政策効果にも支えられ、高水準な取引が続くと期待している。

 昨年の改正宅建業法では、宅建業者にインスペクションについての役割が位置付けられ、年末の社会資本整備審議会において、その運用方法がとりまとめられた。本年は建物状況調査(インスペクション)が、スムーズに実施されるよう会員と共に取り組んでいく。

 昨春策定された『新住生活基本計画』は既存住宅流通市場の倍増を目指しており、その実現に向けて、国において種々の研究や試行が行われている。FRKは全国に店舗を持っている会員の声を反映し、協会と現場が一体となりスピード感を持って意見具申していく。

 不動産流通市場が大きな変革期を迎える中、積極的な情報発信にも努めていく。昨年は、協会初のオピニオン誌『FRKコミュニケーション』を創刊した。本年は消費者の視点を取り入れた調査研究事業の強化を図り、今まで以上に市場活性化を促す施策についての提案や、新たなIT技術の活用により、既存住宅の魅力について情報発信を行っていく。

 経済成長を持続・拡大していく上で、既存住宅市場の活性化は国の住宅政策の重要なテーマとなっている。それだけに我々に課せられた使命は重いが、会員一丸となって、創意工夫をこらし、対処すべき課題に取り組んでいく。

■(一社)全国住宅産業協会会長 神山和郎氏

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 昨年発生しました熊本地震、度重なる台風による土砂災害や浸水害で被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。
 我が国経済は、外需主導によるところが大きく、中国経済の減速、イギリスのEU離脱、アメリカ新政権の誕生等により、景気の先行きに不透明感が増幅しています。また、内需を支える個人消費は、企業業績や雇用状況の改善、賃上げ等による効果が期待されていますが、社会保障の将来への不安感から生活防衛意識が高まり、消費意欲に十分結びついておりません。

 住宅・不動産市場は、新設住宅着工戸数は全体として堅調に推移しているものの、相続税対策などから貸家の供給は増加していますが、分譲マンションは需給ともに低調な状況が続いております。加えて、資材価格や労務費が横ばい基調にあること、事業用地の取得難などから、新規の住宅市況は一層厳しさを増しております。

 本年4月からの消費税率10%引上げが2年半延期になり、住宅に係る税負担増の緩和及び反動減対策として住宅ローン減税の拡充、すまい給付金、贈与税の非課税限度額を最大3,000万円とする措置も同様に2年半延長となりました。この間、引上げまでの時間を活用して不動産取得税を始め、多重な課税の排除を含む住宅と消費税のあり方について、是非、抜本的な検討がなされることを強く期待したいと思います。

 昨年3月には、少子・高齢化の急速な進展を背景に住生活をめぐる現状と今後の課題を踏まえ、新たな目標と基本的な施策を内容とする新しい住生活基本計画が定められました。結婚・出産を希望する若年世帯・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現、建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新、住宅地の魅力の維持・向上等が目標として掲げられました。これら計画の目標は、市場を通じて実現されることが基本であり、民間事業者としてその重要な役割を果たしていきたいと思います。

 住宅政策上、空き家問題が大きな課題となっておりますが、空き家数820万戸にのみ主眼が置かれ、新築不要との意見も散見されます。簡単な手入れで利活用可能な空き家は、おのずと絞られかなり限定的であると推定されます。老朽化・腐朽が進みリフォームによる更新が不可能な場合は、計画的な解体・撤去を推進し更地にする必要があります。

 特に、今後はマンションの空き家問題が懸念されております。建築後50年超の分譲マンションは、10年後51万戸、20年後には151万戸に急増すると見込まれています。建築時期が古いマンションほど空き家率が高く、適切な維持・管理機能が低下し共用部分の電気が消え、エレベーターが止まるなど、防災・治安・衛生面等の問題が顕在化しスラム化の進行が避けられません。空き家住戸を抱えたマンションは、やがて流動性のない負の資産となってしまいます。

 修繕積立金不足や機能の陳腐化により大規模修繕が困難なマンションは、建替えを促進することが必要です。その際、建替えが円滑に進まない理由の一つに多額の費用負担が上げられます。建替えを積極的に促進するためには、参加する事業者の事業意欲が高まることが不可欠であり、容積率の特例制度(ボーナス)について本格的な検討が望まれます。経済効果及び良質な住宅ストックの形成を促進する観点から、建替えも含めた新しいニーズに対応した新築住宅の供給を促す施策も重要であると考えます。

 昨年12月、平成29年度税制改正大綱が公表になり、買取再販で扱われる住宅取得に係る不動産取得税の特例措置の延長、住宅用家屋の所有権保存登記等に係る登録免許税の軽減措置の延長、既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充、特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得課税の特例措置の延長、優良住宅地造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得課税の特例措置の延長などが実現したことは、住宅取得者の負担軽減を通じて、良質な住宅供給に寄与するものと思います。

 また、同じく12月に、会員の皆様の協力により34,000名余の署名活動を展開し、法案の早期成立の実現を強く要望してまいりました無電柱化の推進に関する法律案が成立しました。今後、国、地方公共団体、事業者、国民の連携により無電柱化の進捗率が上がることを期待するものです。
いうまでもなく安全・安心で良質な住宅を供給することは、われわれ事業者の責務であり、国民の豊かな住生活を実現するため、全力で取組んでまいる所存です。

 最後になりましたが、皆様方のますますのご発展とご健勝を祈念申し上げまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

■(独)都市再生機構理事長 中島正弘氏

 明けましておめでとうございます。平成29年の新春を迎えるに当たり、一言ご挨拶を申し上げます。

 振り返りますと昨年は、全国各地で地震、大雨による洪水など自然災害が多かった年でありました。中でも、4月14日から発生した熊本地震は、熊本県全域に被害をもたらしたところであります。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々につきましても心よりお見舞い申し上げます。熊本地震につきましては、機構として、震災発生直後から被災者の方々にUR賃貸住宅を提供するなどのご支援を行ってまいりましたが、今後も地域のご要請に対応しつつご支援を行ってまいります。

 また、第三期中期計画(平成26~30年度)の中間時点にあって、東日本大震災の復興事業の一層の推進、住宅セーフティネットとしての役割の充実などの政策的な取組みを精力的に推進してまいりました。
例えば、東日本大震災の被災地においては、宮城県東松島市野蒜北部丘陵地区や岩手県山田町織笠地区、大沢地区における全宅地の工事完了、建設要請を受けた災害公営住宅約8割の完成・引渡しなど、早期生活再建に向けた支援を着実に行ってまいりました。

 また、原子力災害からの復興を進めている福島県双葉町、浪江町と復興まちづくり推進に向けた覚書を交換するなど、復興拠点の整備支援も本格化しつつあります。

 さらに、賃貸住宅事業においては、昨年3月に閣議決定された住生活基本計画において、今後10年間に約150団地の医療福祉拠点化をすることが位置づけられたことなどを踏まえ、超高齢社会に対応した、多様な世代が生き生きと住み続けられる住まい・まちづくりを推進してまいりました。
 加えて、機構発足以来の課題である経営基盤の確立については、繰越欠損金の解消と賃貸住宅事業の収益構造の改善を最優先課題として、20年先を見据えた経営改善計画の取組みを着実に実行してまいりました。

 本年は、引き続き東日本大震災からの復興支援を最優先業務として取り組むとともに、超高齢社会に対応した住まい・まちづくり、グローバルな都市間競争への対応と地方のニーズに対応した都市再生などに注力してまいります。
 具体的には、被災地の復興支援については、災害公営住宅の完成・引き渡しがほぼ完了する見込みであるほか、復興市街地整備事業や福島県の復興拠点の整備支援も着実に進めてまいります。
賃貸住宅事業においては、引き続き住宅セーフティネットとしての役割を果たしていくとともに、人口減少、超高齢社会といった課題に対応し、地域医療福祉拠点化やUR団地ストックの再生・再編事業に取り組んでまいります。

 都市再生事業においては、地方公共団体や民間事業者との適切な役割分担の下、民間事業者との連携を一層強化してまいります。都市の国際競争力強化のためのプロジェクトを推進するとともに、地方都市におけるコンパクトシティの実現、密集市街地等における防災性の向上等、政策的意義の高い事業を推進してまいります。
また、我が国の成長戦略・国際展開戦略の一環として、官民が連携して進める都市開発の海外展開に必要な技術・ノウハウ等の支援を行ってまいります。

 ニュータウン事業については、事業の完了に向け総仕上げの段階に入ってまいります。
 その一方、昨年千葉ニュータウン北環状線事業に関連する補償交渉の過程において、職員のコンプライアンス違反が判明したことは、公的な使命を担う機構にとって極めて遺憾な事態でありました。この場をお借りして、深くお詫び申し上げるとともに、こうした事案が二度と起きないよう再発防止策の確実な実施、コンプライアンス遵守の再徹底に取り組んでまいります。

 今後も、役職員一丸となって経営改善、コンプライアンス遵守の再徹底に取り組むとともに、これまで培ってきた経験やノウハウを遺憾なく発揮しながら、民間事業者や地方公共団体の皆様との連携を強化し、機構が国の政策実施機関として求められているミッションや変化する国民ニーズに対応した業務を実施していくことで、皆様の期待に応えてまいる所存です。最後に、機構の業務につきまして、日頃から格別のご理解・ご協力を賜っている関係各位に改めて深く感謝を申し上げます。

 本年の皆様方の益々のご発展とご健勝を祈念いたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

■(独)住宅金融支援機構理事長 加藤利男氏

 謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

 住宅金融支援機構は、4月に設立から10年を迎えます。この間、多くのお客さまにご利用いただき、金融機関、住宅事業者、地方公共団体等の皆さまにご理解、ご協力いただいたことを、心より御礼申し上げます。

 全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」の取扱いは堅調に推移しており、累計実績は80万戸を超えました。10月からは、「フラット35リノベ」の提供を開始し、既存住宅流通・リフォーム市場の活性化及び住宅の質の向上に向けて取り組んでおります。

 東日本大震災は、昨年3月で発生から5年が経過いたしました。足下では、被災地における宅地供給が本格化しており、私どもは、三陸復興支援センターを拠点に、地元の公共団体や金融機関の皆さまとともに住宅再建をお手伝いしております。また、昨年発生した熊本地震をはじめとする多くの自然災害についても、災害復興住宅融資等を通じて、被災された方々に寄り添った支援を行ってまいります。

 少子高齢化社会における地域の住まい・まちづくりを支援する観点から、リバースモーゲージ型住宅ローンの提供支援や再開発の立ち上がり時の資金提供など、公的機関として、必要とされる住宅金融を提供しております。今年は、地域と連携して子育て世帯の住宅取得を金融面で支援する新たな制度を創設し、積極的に取り組んでまいります。

 今後とも、住宅金融市場における安定的な資金供給を支援し、住生活の向上に貢献することで皆さまのご期待に応えられるよう、役職員一丸となって業務に邁進いたします。

■(一社)マンション管理業協会理事長 山根弘美氏

“高齢化”など変化する業務環境に対応
「品質向上」へ標準契約書改訂に注力

 新年おめでとうございます。まず、昨年4月に発生した熊本地震、10月の鳥取県中部地震において被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

 最近の社会経済や国際情勢の変化は目まぐるしいものがあります。昨年は、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射、英国のEU離脱決議、米国大統領選挙、12月の日ロ首脳会談などありました。一方訪日外国人の数は過去最高を記録、20年東京五輪・パラリンピックを控え、今後益々観光立国として注目が集まるでしょう。

 マンションの周辺環境も同様です。建物と居住者の「二つの老い」に加え、昨今では我々の業務従事者、特に管理員や清掃員の高齢化と人材採用難が深刻です。「もう一つの老い」であり、従来のビジネスモデルが維持できなく懸念すらあります。

 昨年の我が業界の大きなトピックは3月のマンション標準管理規約の改正です。国交省検討会の立上げから4年余、ようやく一応の区切りがつきました。改正規約条文では、「コミュニティ条項」は削除されましたが、上位の「マンション管理適正指針」で初めて「管理組合のコミュニティ形成は、積極的に取組むことが望ましい」とされ、大変満足のいく結果となりました。改正では「外部専門家の活用」「議決権の価値割合」「理事の代理出席・議決権の代理行使」などもありました。会員会社が適切な助言等ができるよう引き続き、強力にバックアップして参ります。

 7月にはマンション標準管理委託契約書第14条も改正されました。管理会社による管理組合の情報ストックのあり方がより重要となりました。当協会では仲介業者へ管理情報を提供する際のガイドラインを公表していますが、引続き適切な開示への取組みを進めます。

 分譲マンションでの「民泊」議論も活発化しました。管理組合からの相談は「管理規約で民泊を禁止する条文のひな形」が大半でしたが、リゾートや観光地エリアなどでは民泊開放への期待もあります。協会からの「民泊の可否にかかる規約条文の作成」についての要望を踏まえ、国交省では11月、国家戦略特区での自治体条例に基づく「民泊」について、管理規約条文案を示しました。現在検討されている「民泊新法」でも居住者に混乱が生じないよう対応します。

 個人情報保護法施行規則の本年中に施行により管理組合も事業者と見なされ、組合員名簿など個人情報の厳格な取扱いが必要となります。当協会では昨年、内閣府の意見募集に「管理組合への特段の措置」を求める意見を2回提出しました。引き続き、管理組合に適切な情報発信を進めてまいります。

 マンションは、計画的な修繕や耐震化促進、高齢者ニーズに対応した居住者サービスの提供など、管理組合、管理業者双方にとっての課題が山積していますが、今年特に注力したいのがマンション標準管理委託契約書の改訂です。標準管理規約の改正で管理組合の業務に初めて定められた「防災」など、重要な業務を標準管理委託契約書に反映させ、管理業者が適切に実施することが求められます。また現行規定の曖昧さから、管理組合の期待と管理業者が担う負担に大きな乖離も散見されます。業務の仕様を明瞭・明確化させ、契約内容に関する相互理解を高めることで、業務品質の向上を図って参ります。

 管理組合活動への支援として12月に「マン活トレンド発表会2016」を実施しました。800通超の応募があった「マンションいい話コンテスト」の表彰式、「マン活成功事例の紹介」に加え、初めて「認知症になっても長く住み続けられるマンション」をテーマとしたミニドラマ上映と専門家による講演会も行いました。認知症高齢者対策を今後の最重要テーマの一つと位置付け、正しい理解の啓発に努めて参ります。

 さらに、建物の高齢化に対する取り組みとして、立地、築年数に応じたマンションの再生・長寿命化に向けた処方箋「リ・デザインモデル」の提案、会員会社の若手向け海外研修(中国・大連)などによる、業界の人材育成にも注力します。

 新年を迎え、改めて申し上げますが、管理会社の法令遵守の徹底と、コンプライアンス体制の整備は、業務の基本中の基本です。管理組合の財産毀損事故を防止するため、引き続き会員社に対する新モニタリング制度の徹底運用を図ります。

 今、マンションは種々の課題を抱えています。管理会社は、常に管理組合に寄り添う最も身近なサポート役として、時代の変化に適合していかなければなりません。マンション居住者及び管理会社に実効ある施策の実現に向けて、力強い活動を展開して参ります。

 最後になりましたが、会員の皆様のご活躍と、当協会のさらなる発展のため、引き続きご支援とご指導をお願い申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。

■(一社)日本賃貸住宅管理協会会長 末永照雄氏

 当協会は、本年も賃貸住宅市場の整備・適正化を目的とし、全国約1,400社の会員と一体となって、賃貸住宅管理業の法制化と賃貸不動産経営管理士の国家資格化の実現に向けて全力で取組む。昨年9月、国土交通省の賃貸住宅管理業者登録制度改正によって、経営管理士への専任業務の付与と事務所への必置義務化がなされた。この大きな前進を足掛かりとして目的達成へ邁進し、賃貸住宅の住環境のさらなる向上を図る。

 少子高齢化、地方都市の過疎化、居住地域の二極化等を背景とし、不動産の流動化が加速し管理業者に求められる役割は増している。空き家問題の解決策として、準公営住宅や民泊サービスの研究を継続すると共に、相続支援コンサルタント等の普及を通じ、賃貸住宅居住者の安定した住まい確保と所有者の資産の管理や組み換え等ができる管理業者の育成にも継続して取組んでいく。

■(一社)賃貸不動産管理士協議会会長 末永照雄氏

 当協議会は、賃貸不動産経営管理士の国家資格化を実現すべく、国土交通省と連携を図りながら構成3団体と新たな体制で検討を加速させます。

 昨年、国土交通省「賃貸住宅管理業者登録制度」が改正され、経営管理士に管理受託契約時の重要事項説明が義務付けられ、登録事務所に1名以上設置されることになりました。登録制度に経営管理士の役割が付与されたことで、試験受験者は1万3千人と大幅に増加し、国家資格化への機運の高まりを感じました。

 本年は、経営管理士の増加と登録制度の普及促進を一体で担います。賃貸不動産が持つ公共性と社会的意義を認識し、安心・安全な住生活の提供のため、賃貸不動産管理業の確立と、賃貸不動産市場の適正化を図り、賃貸不動産経営管理士の国家資格化を推し進めて参ります。

■(一社)住宅生産団体連合会長 和田 勇氏

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 様々な世界情勢のなか、我が国は経済回復の歩を進めておりますが、戸建住宅市場においてはその足取りは重く、8%増税後の落ち込みを取り戻せていないのが現状です。内需の中核とも言える住宅建設が及ぼす社会・経済への影響は大きく、将来を見据えた活発な民間住宅投資を促していく必要があると考えます。

 一昨年のCOP21に続き、昨年11月のCOP22において、環境問題は世界各国の最大のテーマであることが再認識されました。パリ協定における我が国の目標は、家庭部門で2030年までに2013年比約40%温室効果ガスの削減が求められており、住宅に課せられた責務は非常に大きいと感じております。

 同じく一昨年11月の『第3回 未来投資に向けた官民対話』では、安倍総理より「2020年までにハウスメーカー等の新築戸建の過半数をZEH化すると共に、省エネリフォームを倍増させる」との方針が打ち出されましたが、その進捗はまだまだ鈍いと言わざるを得ません。ZEHの加速度的な普及に向けた国レベルでの体制構築、普及支援策の充実を期待すると共に、我々住宅事業者の更なる普及啓発も不可欠であります。また現在、我が国の住宅ストック約6,000万戸の内、約8割は断熱性が著しく低い状況にあり、既存住宅の省エネ性向上に向けたリノベーションは、新築住宅のZEH化同様、大変重要な課題であります。省エネリノベーションに伴う、断熱性に優れた住宅の普及は居住者の疾病発生や要介護の抑制につながり、社会保障費の削減という観点からも極めて効果的です。

 「住宅」は、まさに社会インフラであり、社会的資産であります。そのような視点のもと、我々住宅事業者は良質な住宅ストック形成、維持管理、リノベーションの推進に努めていかなくてなりません。更には、そのような良質な住宅ストックが正しく評価されることが既存住宅の流通活性化につながり、「良質な住宅を作って、適切に維持管理し、長く住まう」という新しい住宅循環システムが構築できると考えております。

 昨今、世の中では「高齢化社会」とマイナスイメージで捉えられがちですが、年齢を重ねても活躍できる社会が構築できれば、他国のモデルとなるような「長寿先進国」となるはずです。先述の既存住宅の断熱化など、健康長寿社会の構築に向けて住宅の果たす役割は極めて重要であり、『健康』は今後の住宅産業の大きなキーワードになると考えております。「エネルギー・ストック・健康」という視点での住宅の良質化を進めれば、住宅市場はまだまだ成長出来る余地を持っており、無限の広がりをもっております。住団連と致しましては、良質な住環境の提供を通じた「ストック型社会」・「健康長寿社会」の構築を目指し、国民一人ひとりが生き生きと活躍できる「一億総活躍社会」実現につながるよう取組んでいきたいと考えております。

 末筆になりましたが、皆様のご健勝、ご多幸をお祈りして新年のご挨拶とさせて頂きます。

■(一社)プレハブ建築協会会長 樋口武男氏

 新年あけましておめでとうございます。

 日本経済は、アベノミクス効果の浸透から着実に歩みを進めており、緩やかな回復基調が見られています。特に、米国大統領選でトランプ氏が選出されて以来、同氏の経済対策を期待して、日米の金利差の拡大、ドル高・円安により株価の上昇が見られました。この傾向がこれからも日本経済にいい影響をもたらすことを期待しています。1月20日の正式就任後、同氏が主張する「アメリカ・ファースト」が具体的政策となって日本の政治・経済にどういう影響を及ぼしてくるか注意深く見ていく必要があります。さらに、今春から開始される予定の英国のEU離脱交渉や、仏大統領選・独総選挙の結果によっては、保護的色彩が強まり、日本経済にも影響を与える可能性もあり、世界全体の政治・経済の動向には目が離せない1年となりそうです。

 さて、昨年の住宅着工戸数は、消費税10%引上げ時期の2年半延期が決定されたことから、消費税率変更による需要の変動はほとんど見られず、持家は昨年比で微増、貸家は約1割増、全体で6~7%の増となっています。特に貸家は、相続税基礎控除額の引下げ、低金利の状況からまだ好調が継続していますが、今後の需給動向を注意深く見守る必要があります。また、持家も前回の消費税率引上げによる反動減のあった一昨年及び昨年の低水準を多少上回った程度で必ずしも好調な水準であるとは言えません。
 消費税率10%への引き上げが平成31年10月まで延長されましたが、住宅取得に係る負担増の課題が消えたわけではありせん。わが国が持続的に成長し、より豊かな住生活を実現するためにも、取得と保有における多種の税制が、将来景気の減速と市場の大きな変動を招かないよう、恒久的な負担軽減措置の実現に向け努力したいと考えます。

 昨年、政府は「ニッポン一億総活躍プラン」を決定し、「名目GDP600 兆円」、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」に向かって各種の政策を打ち出しています。その中では、AI、IoT(インターネット・オブ・シングズ)などによる第4次産業革命、環境・エネルギー投資の拡大、観光、地方創生、国土強靭化、働き方改革などが進められています。
 また、今後10年間の住宅政策の指針となる「住生活基本計画」が閣議決定されました。少子高齢化・人口減少、空き家の増加等を背景に、若年世帯・子育て世帯、高齢者が安心して暮らせる住生活の実現、建替え・リフォームによる質の高い住宅への更新、流通の促進、空き家の活用・除却の推進、住生活産業の成長、住宅地の魅力の維持向上等が掲げられました。

 当協会の会員企業の皆様は、これらの政策において中心的推進役を果たしていかれるものと考えています。特に、わが国の住宅ストックを見ますと、耐震性の低い住宅、無断熱の住宅、バリアフリー化がされていない住宅が未だに数多く存在しています。これらの住宅を性能・品質の優良な住宅ストックに建替えあるいは改善し、安全・安心で快適な住生活を実現することは緊要の課題です。会員企業の皆様は、すでに長期優良住宅やZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)などの良質な住宅供給を積極的に行っておられます。また、IoTやロボットなど新技術の導入も進めておられます。当協会では、これらの優良な住宅供給がさらに促進されるよう関係各方面に働きかけ、国民の皆様の豊かな住生活の実現に寄与していきます。

 また、昨年は、地震や豪雨など多くの自然災害が発生しました。とりわけ、4月には熊本県を中心に震度7の地震が発生し、多くの人命が失われ、インフラ・家屋などに甚大な被害をもたらしました。当協会では、直ちに応急仮設住宅建設本部を現地に設置し、規格建築部会を中心に一刻も早い応急仮設住宅の完成を目指してご尽力いただきました。建築中も余震が続き、例年にない豪雨も発生する中、11月上旬までに3,605戸の応急仮設住宅を完成することができました。今回は熊本県のご指導のもと、畳・内装・ぬれ縁などに県産材を原則使用するとともに、断熱性・遮音性の向上等を図り、ご入居された皆様からもご好評をいただいているとお聞きしています。国土交通省住宅局長及び熊本県知事より当協会に対して各々感謝状をいただき、皆様のご努力の賜物と心より感謝申し上げます。

 さらに、9月末には台風10号による豪雨被害が東北・北海道地方に大きな被害をもたらしました。岩手県からのご要請で河川の氾濫で人的・物的被害の大きかった同県岩泉町において被災者向けの応急仮設住宅171戸の建設を行い、12月中に完成いたしました。

 今後、南海トラフ巨大地震、首都直下地震をはじめ、各地で自然災害の予想がなされています。万が一大規模災害が発生した場合に備え、応急仮設住宅の供給体制の整備等に引き続き取り組み、迅速な復旧・復興に貢献できるよう、会員相互間の協力体制を築いていけるよう尽力したいと考えております。

 一方、協会では、今年も引続きプレハブ建築技術の向上と時代の要請に応じた新しいニーズに対応できる人材育成事業やプレハブ住宅の性能品質などの良さを広く社会に啓発する活動などを推進します。

 会員の皆様とともに、住宅産業のさらなる発展を目指して努力してまいりますので、引続きのご支援ご指導賜りますようよろしく申し上げます。
皆様にとりまして、本年がさらなる発展・成長の年になりますよう心からお祈り申し上げて新年のご挨拶といたします。

■(一社)日本ツーバイフォー建築協会会長 市川俊英氏

 新春を迎え、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

 昨年の新設住宅着工は、低金利の効果や相続税改正による賃貸住宅の増加などにより、4月から10月までの累計で58万7千戸と前年同期比で7.1%増加しました。ツーバイフォー住宅については、全住宅着工に占めるシェアが28年度も伸びが見込まれており、概ね順調に推移していると思っております。

 高品質で高性能なツーバイフォー住宅は消費者の皆様からの高い信頼を得てきておりますが、本年も当協会会員一丸となって皆様に安全安心で快適な住まいをお届けするよう努めて参る所存であります。

 また、住宅用途以外の社会福祉施設や商業施設、教育施設などの大規模建築の分野において、ツーバイフォー工法での建設が拡大するなど、コストや工期、あるいは木の建築としての居住性の再評価により新たな建築用途での期待も高まっています。こうした期待に応えられるよう高強度耐力壁の開発やパネルの標準化などに一層積極的に取り組んで参ります。

 さらに、昨年はツーバイフォー工法による我が国初めての「木造6階建て実大実験棟」を建設し、現在、実験や性能検証を行っておりますが、昨年秋には2時間耐火構造の大臣認定が床、外壁、間仕切り壁について出そろいましたので、本年はそれらの成果を設計指針等としてとりまとめ、ツーバイフォー工法による木造高層建築の実用化をさらに推進したいと考えております。

 当協会は昨年設立40周年を迎えたところですが、今年はこの蓄積の上に立ち新たなスタートの年としてツーバイフォー工法の技術革新による進化と再生可能循環資源として地球環境にもやさしい木材の持つ特性と魅力を積極的に発信し、持続可能な社会の構築にも貢献して参る所存です。

 本年も皆様の変わらぬご支援、ご指導をよろしくお願い申し上げます。

■(一社)日本木造住宅産業協会会長 市川 晃氏

 新春を迎え、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

 国内経済は、雇用や所得の環境に改善が見られ、実質GDP成長率もプラス基調にあり、景気は横ばい圏から抜け出しつつあるとの見方もありますが、個人消費は依然として足踏み傾向であり、内需の勢いに力強さが求められています。

 また、人口の減少、少子高齢化による社会構造の問題が将来に向けての不安要素として、クローズアップされています。とりわけ若年世代の生活や成長の基盤は、大きく揺らいでおり、早急に再構築しなければなりません。我々の取り組みはもちろんのこと、政府施策による下支えが不可欠です。

 住宅業界では、平成31年10月に予定される消費税10%導入までの時間を有効に生かし、消費税の恒久的な負担軽減策と共に、住宅に課せられている多岐多重にわたる税の抜本的見直しを訴えてまいります。
また、ストック型社会を迎え、新築はもとより、リフォームによる耐震化、断熱化等を進め、良質な住宅ストックを形成する為の経済対策を要望してまいります。

 一方、国内林業に目を向けますと、伐期を迎えた森林資源が存分に活用されているとは、まだまだ言えない状況にあります。私は昨年、木住協の会長に就任致しました。改めて、協会設立時の原点に立ち返り、良質な木造軸組工法住宅の普及を図ると共に、木造耐火建築物、省令準耐火構造の普及、非住宅建築物の木質化、非木造建築物の内装木質化などの具体的な取り組みを推進し、国産材の利用拡大と、尚一層の協会の活性化、発展を目指してまいります。

 本年も、豊かな住生活を実現させるため、全力を尽くしてまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

■(一社)日本ビルヂング協会連合会会長 髙木 茂氏

 新年あけましておめでとうございます。

 今の干支は酉です。酉年は「取り込む」という言葉にかけて「商売に縁起が良い年」と言われています。昨年はイギリスのEU離脱、アメリカ大統領選挙でのトランプ氏の勝利と、日本では想定していなかったサプライズ的な結果が示され、そのたびに円相場や日経平均株価はともに乱高下を繰り返しました。そういった外的要因はありましたが、おおむね日本の景気は緩やかな回復を見せています。今月20日に誕生するトランプ新政権の政策の動向をはじめ、EUやロシア、中国といった海外の動きを注視しなければなりませんが、今年も経済が持続的な成長を続けていくことを期待しています。

 安倍政権には、経済の好循環を民間の本格的な動きへとつなげていくための新たな有望成長市場の創出、生産性革命を実現するための規制改革や制度改革の実現、働き方改革やイノベーションの創出といった重点施策にスピード感を持って取り組んでいってもらいたいと強く願っています。

 ビル事業を巡る市場環境をみると、好調な企業業績に支えられ、前向きな統合移転や拡張移転ニーズが顕在化しており、全国的にオフィス市況の改善傾向が進んでいます。今後もこうした回復の流れを確実なものとすることが大切で、そういった観点からも経済の好循環を維持する政策が重要と考えます。

 オフィスビルは、企業の知的生産を支える「経済インフラ」としての役割に加え、高度化・グローバル化する現代社会においては都市の防災機能を高め、魅力ある都市景観に貢献する「都市インフラ」としての重要な役割を担っています。さらには、国際的な都市間競争が激しさを増す中、インバウンドを支える魅力ある地域社会を形成する重要なインフラともなっています。

 オフィスビルを巡っては耐震性の向上、省エネへの取組みなどが大きな課題となっていますが、オフィスビルが現代社会に果たしている役割を踏まえ、業界を挙げてこれらの課題に対応していこうと考えています。また、昨年は人工知能AIやIoTが大きな話題となりました。オフィスのあり方やオフィス需要の動向などビル業界を取り巻く情勢も今後大きく変わっていく可能性があります。ビル業界としても時代の要請に応えた経営を展開していく必要があります。

 連合会では、地方協会との連携を深め、会員の総力を結集しながら、さらにはご参集いただいている友好団体の皆様と協力し合いながら、諸課題に対応し、業界の健全な発展に向けた活動を展開していきたいと考えています。

■(一社)不動産証券化協会会長 岩沙弘道氏

 昨年は、海外では英国のEU離脱に関する国民投票や米国大統領選挙、また国内では日銀のマイナス金利政策の導入等、国内外において今後の経済の行方に影響を与える重要な出来事が数多くあった。
 わが国経済は、安倍政権の一連の経済対策等により緩やかな回復基調を辿っている。本年は、デフレ脱却と経済再生の確実な実現に向け、企業の積極的な設備投資等により経済の好循環を生み出す正念場の年である。
 「2020年までに名目GDPを600兆円にする」目標の達成に向け、政府には各種の具体的施策を着実に実行されるよう期待している。

 2001年に創設されたJリート市場は、15年間で世界第2位となる時価総額約11兆円、保有資産総額15兆円超の市場へと成長を遂げ、国内外の投資家から大きな期待を集めている。
 一方、私募リートは、年金や地銀等機関投資家の代表的な不動産の運用先として急速に普及し、現在、20銘柄が運用され、資産規模は約2兆円に達した。
 Jリートをはじめ不動産投資市場は、個人や年金等幅広い投資家層に対し魅力的で安定した金融商品を提供するとともに、社会資本の整備・更新に対する民間資金の供給を通じて、都市の国際競争力強化や地方創生を後押ししている。また、近年、投資対象資産の一層の多様化が進み、物流施設やホテル、ヘルスケア施設等、成長産業に不可欠な施設を提供する役割を果たす等、社会が抱える多様なニーズに対してその資金供給機能が存分に活かされている。

 当協会の中期事業計画および政府の「日本再興戦略2016」では、Jリートおよび私募リート等の資産総額30兆円を目標として掲げている。当協会としては、不動産投資市場のさらなる成長を実現し、わが国経済の成長を牽引すべく、使命感を持って取り組んでまいりたい。

■(公社)日本不動産鑑定士協会連合会会長 熊倉隆治氏

 新年おめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
 
 今年も昨年に引続き、不動産鑑定評価制度の社会一般への認知の向上と不動産鑑定業の拡大に努め、不動産鑑定評価制度の充実を目指してまいります。昨年を振り返ってみますと、連合会の活動としては不動産鑑定法改正の取組と熊本地震への対応、そしてPPCの開催という三点が挙げられます。

 4月に発生した熊本地震につきましては、未だに被災に遭われた多くの方々が元の生活を取り戻すには至っていません。東日本大震災や、その後の自然災害に遭われた方々もまた同様のことと存じます。一日でも早く元の日常を取り戻せるよう願ってやみません。今回の熊本地震では、これまでの自然災害を受けて、被災者支援の新しい仕組みが適用になりました。我々不動産鑑定士も関与する、自然災害による被災者の債務整理に関する特定調停制度です。この制度は、災害救助法の適用を受けた自然災害が対象で、全国で今後起こりえます。熊本地震では数百件の適用が見込まれているようです。

 また、平成25年に改正された災害対策基本法に基づく住家被害認定業務や相談業務も今回大きく取り上げられました。東京都不動産鑑定士協会をはじめとする各士協会の協力のもと、南阿蘇村等での活動は大きな成果がありました。わが国は自然災害と向き合わざるを得ません。如何に自然災害の被害を小さくするか、そして、被災から如何にスピーディーに立ち直るか。制度的な取組みは整備されてきており、我々不動産鑑定士が担う役割も増えてきました。今後は士協会と連携して的確な行動が速やかに取組めるよう、規程の制定等態勢を整備することが求められています。

 昨年の3月に、不動産鑑定士制度推進議員連盟に日本不動産鑑定士政治連盟とともに不動産鑑定法の改正要望を行いました。不動産鑑定制度創設時に不動産鑑定評価の対象から除かれた農地等を、農地法の改正等の社会情勢の変化をうけて鑑定法の対象にすることや、不動産と動産の集合物への的確な取組ができるよう鑑定業務の充実を要望しました。併せて、不動産鑑定業務に従事している不動産鑑定士を中心としたコンプライアンスの充実と、連合会や士協会の団体としての位置付けの明確化等、制度整備による信頼向上施策を要望しました。農地の鑑定評価については、農林水産省等の理解を求める活動により、鑑定評価の必要性の認識や鑑定評価手法等への信頼が醸成されてきております。これからは農地の鑑定評価業務指針の作成や研修会等による取組みの充実を図り、関係者の一層の理解を深めていくことが重要です。

 不動産鑑定評価制度の監督機関である国土交通省では、「土地政策の新たな方向性2016」を昨年8月にまとめましたが、鑑定評価制度の社会の変化に対応するための取組が必要であるとして一層の検討を進めることとしました。それを受け、不動産鑑定評価制度懇談会を8月に発足させ、本年3月には答申をまとめる予定となっています。連合会では、会員各位の意見を踏まえつつ、企業活動のグローバル化やストック経済の進展といった社会経済情勢の変化のなかで、利用者の多様なニーズに的確に応えられるような鑑定法の改正を実現しなければならないと考えています。

 昨年9月に、22年ぶりに我が国でPPCを開催しました。PPC京都大会は700人を超える参加者を迎えて、不動産鑑定士の役割と専門性の拡大をテーマにパネルディスカッションや発表が行われました。会議の詳細は、特集記事がありますのでそちらで確認いただくとして、資産評価の世界において会計制度と連動した取組みが進みつつあり、我々もこの動向に適切に対処していくことが必要だということをPPCにおいて確認しました。また、新興国と言われるアセアン諸国等では不動産鑑定評価が確立されつつあり、我が国の協力を求めていることも確認されました。国際交流を引続きおこない、一定の協力を果たすことは私たちの使命だと受け止めております。

 一昨年の50周年記念行事で行った不動産鑑定制度のPR動画コンテスト等の、不動産鑑定制度及び不動産鑑定士の広報活動や、不動産鑑定士試験の受験者を増やすためのセミナーや講座提供等の活動を、国土交通省と協力して取組みを強化しております。これは、単に不動産鑑定士の団塊世代の高齢化対策ではありません。若年世代に不動産鑑定制度を広く知ってもらい、ともに担ってくれる人材を確保することが目的だと考えています。

 不動産鑑定評価制度は公的評価に依存するだけでは、縮小均衡にならざるを得ないことは誰でもが認めるところです。わが国の鑑定評価制度をガラパゴス化させずに、グローバル化の潮流のなかで、主体性をもって鑑定評価のニーズの多様化に適応することが必要です。そのための不動産鑑定法の改正です。そして、評価の対象資産を不動産に限定せず拡大させ業容の幅を広げることです。鑑定評価の潜在ニーズはリバースモーゲージや住宅流通、コンバージョン等に見られます。これ等を如何に顕在化するか、簡単ではありませんがしっかり取組むことが求められています。政策提言等も積極的に行い、ICTの更なる導入等のために、研究機能を充実させることは専門性の深化に欠かせませんし、不動産鑑定制度の絶えざる変革と魅力の向上のためにも必要な施策です。

 不動産鑑定制度を社会の変化に対応した国民にとって欠かせない制度インフラとするために、会員各位と共にこれ等の諸課題に取組んでまいります。新たな一年の着実な前進を目指した連合会の取組に対し、ご理解とお力添えをいただきますようお願い申し上げます。

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