2017/03/24 18:00更新
都市づくりは「ネットワーク型」へ/森記念財団

「これからの都市づくりではエリアマネジメントといった
『ネットワーク型』の手法が重要になる」と話す、小林理事長


  (一財)森記念財団 都市整備研究所は23日、第5回都市ビジョン講演会「エリアの価値をいかに高めるか?〜『エリアマネジメント』と『エリアリノベーション』への期待〜」を開催。約250人が参加した。


 エリアマネジメントとは、地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための取り組み。エリアリノベーションとは、(株)オープン・エー代表で、東北芸術工科大学教授の馬場正尊氏が「まちづくり」の次の概念として示したもので、建物単体を再生する点のリノベーションが周辺地域への面的な広がりをみせ、まちの賑わいや収益性の向上等につながっている活動。いずれも住民・事業主・地権者等による主体的な取り組みを指す。


 同財団理事長で、2016年7月に発足した「全国エリアマネジメントネットワーク」の会長でもある小林重敬氏は、「これまでの都市の全体から考えるマスタープラン型は限界がきており、エリアマネジメントやエリアリノベーションといった、限定された地域での活動が全体の都市づくりにつながっていくネットワーク型の都市づくりが重要となる。その方向性を議論する必要性がある」と述べた。


 講演では、大阪市立大学大学院工学研究科准教授の嘉名光市氏が「大阪市におけるエリア価値向上の取り組み」について、馬場氏が「エリアリノベーション」について解説。


 嘉名氏は、大阪が町人のまちとして発展したことから、もともと民間主導のまちづくりが根付いており、中心部の各地でエリアマネジメント活動が活発に行なわれていると発表。2014年4月には「大阪市エリアマネジメント条例活動促進条例(大阪版BID条例)」が策定され、その取り組みが加速。既成市街地での公共空間の利活用や広域でストックを活用したエリア価値向上などが進められているとした。


 馬場氏は、各地のエリアリノベーション事例を紹介。ヒト・モノ・コトに多様性が求められる中、都市づくりでは、地方を中心に「計画的」なものから「工作的」なものが必要とされているとし、これまでは計画側が主体となっていたが、今後は事業者やテナントといった使用者側が主体となって進めていくことが求められているとした。


 続いて、小林氏がモデレーターを務め、嘉名氏、馬場氏のほか、札幌駅前通まちづくり(株)統括マネージャーの内川亜紀氏をパネリストに迎え、座談会を開催。エリアマネジメント・リノベーションを進める上で、「資金調達や財源確保ができる仕組みの構築」「エリア内外におけるネットワークの形成」「活動を広げていく上で公共と民間の間にある“コモン”のような空間の設定」「実施エリアを細分化し、それぞれが個性も持ってつながっていくこと」など、今後の課題を示した。



パネルディスカッションの様子。
左から内川氏、馬場氏、嘉名氏、小林氏



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