2017/04/26 18:00更新
英の大学と提携。認知症対応強化の介護施設


看護小規模多機能型居宅介護事業所「ナースケア・リビング世田谷中町」が入居するコミュニティプラザ外観。その奥がシニア住宅「グランクレール世田谷中町」。写真右側が分譲マンション「ブランズ世田谷中町」。コミュニティプラザは、これら施設と地域住民とを結ぶ多世代交流拠点と位置付けられる




 東急不動産(株)は25日、英国スターリング大学認知症サービス開発センター(DSDC)のデザインコンセプトを導入した高齢者住宅「グランクレール世田谷中町」ケアレジデンス(東京都世田谷区、75戸)と、多世代交流拠点「コミュニティプラザ」内の看護小規模多機能型居宅介護事業所「ナースケア・リビング世田谷中町」を報道陣に公開した。


 両施設は、分譲マンションとシニア住宅の複合開発「世田谷中町プロジェクト」の核となるもの。同プロジェクトは、子育て期から高齢期まで安心して生活できる環境の提供と、住民同士の多世代交流と地域との交流を促すことで、「世代循環型」の新しいまちづくりを目指している。


 DSDCは、四半世紀以上にわたり認知症に関するさまざまな研究を手掛けており、研究をもとにした評価項目による「認知症にやさしいデザイン」の認証制度を提供している。東急不動産は2016年8月、ヘルスケアコンサルティング・施設運営会社の(株)メディバとDSDCと3者で提携。自社で開発するケア施設へのDSDCデザイン導入に向け準備していた。


 DSDCデザインは、認知症の人が不安や混乱、ストレスを感じず、転倒等の危険性を軽減することが目的。照明の照度や床・壁、手すり等の色調を選び、また認知症の人でも容易に認識できる案内マークを適切な高さに配置する、トイレや浴室などの設備を明確に認識できるよう扉をカラーリングするなどの工夫を施すことを求めている。それらを取り入れることで、廊下での転倒減少、薬による鎮静行為の減少、患者の自立行動を促す効果などが認められているという。


  両施設には(1)エントランスは不安や転倒リスクを軽減するため、反射を抑えた床材を使用、(2)デイルームには家具との距離感がつかみやすい床・家具・壁を導入、(3)浴室・トイレは、一目で機能が分かるように色を統一、(4)案内サインは、低い目線でも分かりやすいように高さ1,200mmのものを設置、といったDSDCデザインを取り入れている。英国外では同デザインの認証を受けた施設はなく、東急不動産は英国外初の認証取得を目指す。


 ケアレジデンスは17年9月開業予定で、一般シニア向けのシニアレジデンス含め、現在入居者を募集中。2〜3年での満室稼働を目指す。一方「ナースケア・リビング世田谷中町」は、(株)メディヴァの運営により5月に開業。訪問介護、訪問看護、デイサービス、宿泊など在宅医療サポートをワンストップで提供する。


 同日会見した同社ウェルネス事業ユニットヘルスケア事業本部執行役員本部長の小室明義氏は「世田谷中町プロジェクトでは、認知症増加、介護離職、健康寿命の延伸といった超高齢社会の課題に対する、具体的な解決策を提示した。また、コミュニティプラザを地域包括ケアの拠点とし、認可保育園や多世代交流施設を開設し、地域の人たちに使ってもらうことで、地域に開かれた、地域の人たちに喜んでもらえる施設としていきたい」などと語った。


 また、同日講演したDSDCチーフアシスタントのレスリー・パーマー氏は、「デザインとは、使う人たちのことを考えること。身体や思考能力が低下した認知症の方々はそれだけでストレスを感じており、照明や色調、器具等により空間をやさしく分かりやすくデザインする必要がある」とDSDCデザインの意図を語った。












DSDCデザインの一つ、案内サインは大きく分かりやすく、高さ1,200mm前後に揃えて表示






浴室やトイレなど機能別にカラーリング。手すりも一目で分かるよう赤に統一している



 



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