2019/12/09 18:00更新
リニア中央新幹線開通後の経済効果等を検討

パネルディスカッションの様子


 (公社)日本不動産学会、資産評価政策学会は7日、合同シンポジウム「リニア中央新幹線が不動産市場に与える影響と経済効果」を椙山女学園大学(名古屋市千種区)で開催した。


 シンポジウムでは、「品川」〜「大阪」駅を約1時間で結ぶリニア中央新幹線の開通により、経由する「名古屋」駅 を含めた3都市を包含するスーパー・メガリージョン(複数都市で構成される経済圏、以下「SMR」)が誕生することで、地域経済、不動産市場にどのような影響があるか検討した。


 基調講演を行なった(公財)名古屋まちづくり公社上席顧問兼名古屋都市センター長の奥野信宏氏は、「人口は三都市合計で7,000万人に上る。3都市が一体となって日本の成長を牽引し、東京一極集中型の現状を脱することが期待される」などと述べた。名古屋エリアについては「国内のみならず世界中から人・情報が流れ込む日本の中心地として、イノベーション拠点となることが期待できる」とした。


 パネルディスカッションでは、5人のパネリストがリニア開通による経済効果や名古屋のまちづくりについて語った。東京大学大学院工学系研究科の浅見泰司氏は、東京・大阪対名古屋でストロー効果(都市間の格差により弱い都市の経済活動が吸い取られる現象)発生のリスクについて「名古屋はターミナル駅ではあるものの、単なる乗換駅、通過地点に位置付けられる危険性もある」などとし、「東京・大阪へのアクセス性を重視する企業に向けたオフィスを整備するなど、中間地点のメリットを生かせるまちづくりが必要」とした。名古屋大学未来社会創造機構モビリティ社会研究所教授の森川高行氏は、名古屋のまちづくりについて、「“古い日本らしさ”が息づく都市で、歴史的観光資源は他の地域を凌駕する。地理的中心地であり、心のふるさとでもある魅力を極めることで、リトル東京化を防げるのでは」などと話した。


 コーディネーターの椙山女学園大学現代マネジメント学部教授・前川俊一氏の「リニア開通により東京一極集中型の経済は変化するか」との問い掛けに対しては「移動時間が短くなることで、名古屋に住んで東京の職場に通う、ということも可能になり、東京一極集中型から脱却できるのでは」、「東京一極集中型からSMR一極集中型に変化するだけで、一極集中型経済の課題は継続する。そこから漏れる地域へのサポートは必要」などの声が挙がった。



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