2019/12/09 18:00更新
事業性確保しながら旧耐震共同住宅を全面刷新









「(仮称)初台2丁目リファイニング建築計画」施工前の外観




完成予想図



 三井不動産(株)は8日、(株)青木茂建築工房との業務提携による「リファイニング建築」を活用した物件再生の第3弾となる「(仮称)初台2丁目リファイニング建築計画」(東京都渋谷区)の解体・施工現場を報道陣に公開した。


 同物件は、京王線「初台」駅徒歩10分に立地する、1968年竣工の鉄筋コンクリート造地上4階地下1階建て(延床面積約1,400平方メートル)の共同住宅兼倉庫(24戸)を賃貸住宅(26戸)に再生するもの。3年前、銀行経由で同社が、同物件の老朽化を心配するオーナーから相談を受けたのがきっかけ。「売却、建て替えを含め、さまざまな検討を行なった。単なる耐震補強ではコストが回収できず、建て替えると、現行の高さ規制により1層低くなるため事業収支が成り立たず、同一規模の建物が建たないため売却もできない。既存建物をリファイニングで再生するのが最適だと判断した」(同社ソリューションパートナー本部レッツ資産活用部資産活用グループ・宮田敏雄氏)。


 リファイニングでは、既存建物をフルスケルトン化したうえで、耐震診断と躯体検査を実施。躯体の劣化箇所を500ヵ所以上補修し、耐震性の不足を補うため新たな耐震壁を設置。不要な窓も閉塞して耐震性を向上させた。


 1階の倉庫は住戸2戸とエントランス、ごみ集積所、エレベータを新設。2つの住戸(2LDK)は、セールスポイントとして専用庭を配し、直上のスラブを撤去し、吹き抜けとした。2〜4階住戸は、マーケットニーズに合わせた間取り(1LDK)に、新築同様の設備・内装へと刷新。パイプスペースは共用廊下に出し、Low−Eサッシ、断熱改修、二重床を導入。快適性を上げ、メンテナンス性を高めた。住戸面積は約30〜56平方メートル。


 1階の倉庫の用途変更やエレベータ等の新設を含めた建築確認申請を行ない、竣工後検査済証を再取得することで、金融機関からの借り入れも可能に。事業費は非公開だが「概ね、同規模新築の約80%」(同氏)。竣工は来年3月。周辺新築物件の90〜95%の賃料で貸し出す予定。


 設計管理を手掛けた、(株)青木 茂建築工房代表の青木茂氏は「リファイニング建築は、これまで全国10棟を手がけてきた。旧耐震建物を新築同様にするだけでなく、検査済証の再発行、家歴書の発行、銀行との提携による融資もパッケージにしているのが特長。今回の建物は傾斜地であること、1階とそれ以外の構造が異なることなど難しい点も多かった。これからも1棟1棟着実に手掛けながら、全国に安全な建物を増やしていきたい」などと語った。


 両社は現在、この建物のほかに目黒区でも案件を進行中。練馬区と新宿区での新規案件も予定している。












耐震力不足を補うため、既存の開口部を新たな耐震壁とする




完成した新たな耐震壁




鉄筋の入っている開口部は従前の窓だが、間取りの工夫などで採光を確保できることから、耐震力を高めるために閉塞し壁とする



 



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