2020/09/18 18:00更新
「外国人との共生」テーマにシンポジウム

 (公社)日本不動産学会は16日、シンポジウム「国際化に対応した不動産政策―外国人との共生をいかに進めるか」をオンラインで開催した。


 シンポジウムではまず、東京都豊島区政策経営部企画課文化共生推進係長の阿部治子氏が、外国人との共生を促進するために同区が行なっている取組事例を紹介した。
 同区は、1988年を「豊島区国際化元年」と位置付け、全国に先駆けて多国語対応の暮らしの相談窓口を設置。以降30年間で、外国人居住者は3倍に増加。「豊島区外国人区民意識調査」の結果では、約6割が「住みやすい」、約4割は「当分住み続けたい」と感じているとの結果を得られているという。
 2012年には、「豊島区居住支援協議会」を設置し、不動産事業者と共に、空き家を活用した住宅の提供に取り組むなど、官民連携での働きかけも進めている。同氏は、自治体単体での働きかけには限度があると話し、「民間の力を借りることはとても重要。区内で活躍する外国人専門の賃貸仲介・管理事業者の存在も、区内への外国人の流入、区内に住む外国人の暮らしやすさ向上に大きく貢献していると感じる」などと述べた。


 その後、日本で暮らす外国人が増加する中での、不動産政策の在り方について、経済学・社会学・都市工学の専門家が知見を述べた。


 成蹊大学経済学部教授の井出 多加子氏は、技能実習生等は景気変動の影響を受けやすく社会的に弱い立場となる可能性が高いとし、「国籍にかかわらず、技能や資格によって同一労働同一賃金とするべき」と指摘した。
 東京大学大学院人文社会系研究科准教授の祐成保志氏は、移民が受け入れ先の国で安定的な社会的地位を得るためには、「『移民自身が高い人的・経済的資本を有すること』、または、『受け入れ国内でもエスニックコミュニティ(母国が同じ人同士のつながり)を維持すること』が重要とし、その維持のため、受け入れ先の国では、居住や就労をサポートする必要があると話した。
 筑波大学システム情報系社会工学准教授の藤井 さやか氏は、「特定技能実習生の制度が本格開始されたことを背景に、今後は期限制限付き滞在ではなく定住を視野に入れたサポートが求められる」とし、「現状では特定技能生であっても1号要件では家族の帯同が許可されておらず、今後はそうした制度も見直すべき」などと話した。



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