海外トピックス

2015/4/20

vol.272 インテリアデザイナーカップルが選んだ住まいは?

シーブリッジ・ハンティングトンハーバー・ゲイティッドコミュニティ(カリフォルニア州ハンティングトンビーチ市。以下同)
シーブリッジ・ハンティングトンハーバー・ゲイティッドコミュニティ(カリフォルニア州ハンティングトンビーチ市。以下同)
共同の外壁や散歩道がよく管理されているのに感心する。緑が濃い
共同の外壁や散歩道がよく管理されているのに感心する。緑が濃い
コミュニティ全体に統一感があり、美しくまとまっている
コミュニティ全体に統一感があり、美しくまとまっている
1979年に建てられたが、モダンで西海岸にぴったりの建築デザインではなかろうか
1979年に建てられたが、モダンで西海岸にぴったりの建築デザインではなかろうか
バックヤード、パティオの全景(写真提供 Y. Youlin)
バックヤード、パティオの全景(写真提供 Y. Youlin)
港へ出られるドック付きのタウンハウスもある(写真提供 Y. Youlin)
港へ出られるドック付きのタウンハウスもある(写真提供 Y. Youlin)
一年中楽しめるプールつき。やはり陽光溢れるカリフォルニアという感じ(写真提供 Y. Youlin)
一年中楽しめるプールつき。やはり陽光溢れるカリフォルニアという感じ(写真提供 Y. Youlin)

濃い緑と真紅やオレンジ色の花々が、白亜のタウンハウスに濃い影を映している。
「これがカリフォルニアの陽光だ!」
厳寒の12月に中西部から2800kmはるばるとやってきた西海岸だが、この陽射しは眩しすぎる。光と影のコントラストが強烈だ。
友人のインテリアデザイナーカップル、チィとディビッド夫妻は、港に沿うゲィティッドコミュニティ「シーブリッジ」内のタウンハウスに住んでいる。ロスアンゼルス市の南、毎年サーフィン世界選手権大会が開催されるので有名なハンティングトンビーチ市だが、一筋入ると閑静な住宅街で、周囲は大きな屋敷ばかり。海はすぐそこなのに喧騒からは程遠い。

築36年のヴィンテージ物件

シーブリッジは正式にはシーブリッジ・ハンティングトンハーバー(SeaBridge Huntington Harbour)。
1979年、ランドゥ・パートナーシップ建築設計事務所 (Landau Partnership Architectural Firm) により132戸のタウンハウスがハンティングトン港近くに完成した。2階建てまたは3階建て4戸続きのタウンハウスで、多くは3BR+3バスルーム。広さは137平方メートルから170平方メートル。すでに築36年になるが、現在中古物件が3戸売りに出ていたので調べてみたら、価格は7,000万円から8,000万円。内部はいずれも新しく改装してあり、立地条件を考え合わせると稀少なヴィンテージ物件に違いない。中西部に比べると30%は割高な感じがするが、カリフォルニアという立地、そして海岸沿いという理由で納得できる。

コミュニティ内の問題は、テーマに応じ小委員会が論議

コミュニティ内は散歩道がゆるやかに曲がっているためか、丘や色鮮やかな花々やひとかたまりの林など、景色が次々と移り変わってゆき、歩くほどに楽しめる。月々約4万円の管理費(ホームオーナーズアソシェーション)で共用部分をまかなう。
チィによるとこの金額は割安で、このあたりの相場では5万円から7万円らしい。住民で組織される委員会が月1回開かれ、必要となる経費は管理費から引かれる。委員会はメィンテナンスや門扉、駐車規則の変更など、コミュニティ内で起きる共同の問題を取り上げ審議する。多くの場合、小グループに枝分かれして細部を打ち合わせているという。例えばランドスケープ小審議会では、道路ぎわに植える花の種類を決めたり、植樹の有無などを論議するが、以前、外壁の色を全棟統一して塗り替えた時には、インテリアデザイナーであるチィがアドバイザーとして審議会に加わり、色の選択をした。

リゾート地としてたっぷり楽しめる設計

シーブリッジはロスアンゼルス都心へは高速道路で1時間。リゾート地として最大限楽しめるようなモダンな暮らし方を想定して当時設計された。コミュニティ内のタウンハウスはどこもたっぷりと自然光が入って明るく、居間と主寝室からはハンティングトン港か水辺が眺められる設計となっている。何棟かは、ヨットやクルーザーが繫留できるボートダックつき。気が向いたら居間からひょいとクルーザーで港へ、そして外洋に乗り出す…なんて夢ではないのだ。
コミュニティ内にはプール、2面のテニスコート、クラブハウス、スパが供えてあり、年齢制限はなくペットフレンドリー。幼児のいる家族や、動物好き、シニアなど誰でも入居できるのだが、チィとディビッドのように専門分野で活躍する入居者を含め、中流の上クラスがターゲットと見受けられた。

好きな海を眺め、癒される生活

チィとディビッドがシーブリッジを選んだ理由は、建物を含むコミュニティ全体がモダンで、彼らの美的感覚に合致したからだろう。加えて海辺に近い事も大きな理由に違いない。
ディビッドは海と船とサーフィンが大好きで、ガレージには1950年代から現在までの沢山のサーフボードが飾られている。
チィは大学でインテリアデザインを教えているので忙しい毎日だが、海辺を散歩すると緊張がほぐれ気持ちが休まると言う。居間からガラスの引き戸をあけてパティオに出、デッキチェアに座って塩の香りをかぎ、海風にそよぐ大きな葉をぼんやり眺めるのが好きなのだそうだ。
アメリカ、特に南カリフォルニアでは、陽が落ちてから闇に包まれるまでの薄青い時間が日本より長いのではなかろうか。バラ色から青紫色、そして藍色に包まれてゆく外気を感じながら、パティオでワインを飲み、チィとたわいない話で笑い合うのは贅沢な時間であった。


参考資料
http://www.bcre.com/idx/residential/NP14226081/details.html
http://www.hbwaterfront.com/seabridge/
http://www.realtorzeb.com/condom
iniums/seabridge-townhomes-in-huntington-beach/
Ruta Lee’s Magnificent Home magazine/March 1979

Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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