記者の目 / イベント・セミナー

2009/8/31

エコ時代のオフィスビルとは?

環境・経済性配慮型オフィス「秋葉原クロスゲート」の公開内覧会

 最近あらゆる分野で注目されている「エコ」。オフィスビルにおいても「エコ」を意識したビルの供給が活発化している。  2009年4月、東京都では改正「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」が施行され、温室効果ガス排出量の「総量削減義務と排出量取引制度」が導入された。  これにより、都内で一定以上のエネルギーを使用する事業所は、CO2の削減義務が課せられるようになり、入居するテナントも積極的なCO2削減の協力義務を課せられるようになる。また、一定規模以上のテナントには、温暖化対策の計画書を作成・提出する義務も課せられる(義務化は2010年4月から)。そうしたこともあり、ディベロッパー、管理会社はもちろん、入居テナントであるユーザー側のエコに対する関心度は否が応にも高くなりつつあるようだ。  今回は、「エコ」に関する最新鋭の設備に加え、家具・建具などの再利用にも配慮、さらに「経済性」にも優れたオフィスビル「秋葉原クロスゲート」(東京都千代田区)を紹介する。

「秋葉原クロスゲート」のリニューアル前(左)とリニューアル後(右:イメージ)
「秋葉原クロスゲート」のリニューアル前(左)とリニューアル後(右:イメージ)
入居テナント用の打ち合わせスペースなども設置されている屋上庭園
入居テナント用の打ち合わせスペースなども設置されている屋上庭園
省エネタイプに更新した空調機器(上)と省エネ型衛生機器TOTOネオレスト(下)
省エネタイプに更新した空調機器(上)と省エネ型衛生機器TOTOネオレスト(下)
中古オフィス家具が設置された5階のモデルオフィス
中古オフィス家具が設置された5階のモデルオフィス
再利用可能なパーティション(間仕切り)
再利用可能なパーティション(間仕切り)

「秋葉原クロスゲート」の環境配慮

 「秋葉原クロスゲート」は、JR・つくばエクスプレス「秋葉原」駅徒歩5分、東京メトロ日比谷線「秋葉原」駅徒歩3分、都営新宿線「岩本町」駅徒歩1分と、秋葉原界隈でも好立地に位置する、地上9階地下1階建ての、1973年竣工のオフィスビルだ。

 サンフロンティア不動産(株)は2008年秋に同ビルを取得。耐震工事等を含む「リプランニング」(不動産再生事業)を実施、09年3月からテナント募集を開始した。
 また、今回は劣化した部分のリニューアルにとどまらず「エコ」にも配慮した「リプランニング」を実施。屋上緑化をほどこしたほか、空調設備・照明設備を省エネタイプに更新。電気料金の約36.6%削減に成功した。また、省エネ型衛生機器を標準装備し、水道料金の約53.6%の削減をも可能にした。さらに、光熱費削減のため、断熱性に優れた「Low-E複層ガラス」を採用し日射透過率を約68%カット、光熱費の約16%削減も実現した。

 今回の内覧会は、同ビル5階部分を、環境・経済性配慮型オフィス「【E+E Office】プロジェクト」の第一号案件を、借り手やメディア向けにプロモーションするために開催したもの。
 「【E+E Office】プロジェクト」とは、予めパーティション(間仕切り)や中古オフィス家具などを設置し、モデルオフィスのような状態でそのまま貸し出す試み。今回同社は、同ビルの5階フロアに中古オフィス家具、パーティション(間仕切り)を提供する(株)オフィスバスターズとコマニー(株)、そしてオフィス居抜き情報サイトを運営する(株)リンクゲートアドバイザーズとタッグを組み、同プロジェクトを始動した。


パーティション(間仕切り)設置型ビル

 パーティション(間仕切り)を入居前時点で設置したのは、(1)入居時の内装設置工事の必要がなく、テナントによる内装設置コストがかからない、(2)当然、退去時はパーティション(間仕切り)撤去の必要がなく、廃棄物・廃棄コストの削減につながる、(3)内装設置工事・原状復旧工事が必要ないため工事期間の短縮になる、ことを狙ってのものだ。
 パーティション(間仕切り)に可変性がなく、入居時のレイアウトを変更できないというデメリットはあるが、それさえ気にしなければテナントにとってのメリットは大きい。


コスト削減の新発想

 現在(2009年8月時点)、同ビルの空室は、事務所用途の8フロアのうち5階を含む3フロア。近年のオフィスマーケット市況の冷え込みにより、都心部でも長期間空室を保持するビルが多く、同ビルにとっても厳しい状況は同じであろう。
 そんな中、同ビルでは「環境」に「経済性」を盛り込み、できる限りコスト削減をしたいというテナントのニーズを掴む試みを積極的に始めたといえる。

 このご時世、環境に配慮したオフィスビルというだけでは入居の決め手にはならない。「秋葉原クロスゲート」は「環境」に+α、つまり、コスト削減という「経済性」のメリットも享受できることがテナント誘致の肝になっているのではないだろうか。
 オフィスビルだけでなくさまざまな分野の、「環境」+αの仕組みに注目である。(Tam)

※なお、「秋葉原クロスゲート」は2009年9月1日、「秋葉原SFビル」に名称変更された。

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