サウジアラビアがどこにあるのか、ご存じの方も多いと思います。「中東の雄」とか「アラブ世界の盟主」と呼ばれる地域の大国であることも。ただし「行ったことがある」という方はほぼいらっしゃらないのではないでしょうか。
それもそのはず実はサウジアラビアは2019年までイスラム教徒以外の観光での入国を制限していました(世界中のイスラム教徒にとってはメッカやメディナという聖地がある「一生に一度は訪れたい国」です。)ところがそのサウジアラビアは隣国アラブ首長国連邦のドバイの大成功を目にしたからか、観光を産業の柱の一つにすることを決め、非イスラム教徒も受け入れるようになりました。と思ったら新型コロナウイルスで世界中がロックダウン。サウジアラビアに行ったことがある人が少ないのはこうした事情からです。
さてそんなサウジアラビアの首都リヤドに2025年11月取材で訪れました。リヤドは人口約800万人の大都会です。サウジアラビア全体の人口が3,217.5万人(2022年。サウジアラビア国勢調査)とのことなので、人口の4分の1が集中しています。そして世界で第2位の生産量を誇る産油国なので、オイルマネーで近代的な超高層ビルが建ち並びます。
メトロ全6路線をほぼ一斉開通!
そのリヤドで驚かされたものの一つが交通事情です。それまで市内を走る鉄道はなかったのですが2024年12月~2025年1月の約1ヵ月で、メトロ(地下鉄)全6路線をほぼ一斉開業。このあたりは世界一高い建物ブルージュハリファを始めとする「世界一好き」の隣国ドバイと同じく「打ち上げ花火好き」なのかもしれません。
そしてこのメトロ、車掌はもちろん運転手もいない完全自動運転。揺れもほぼないし、都心部の地下深くの駅から郊外の高架駅まで高低差がかなりあるはずなのですがグイグイと痛快に加速していきます。
さらに街の中心部を南北に縦断する主要路線のブルーラインでは4両編成で4分おきの運行。あまり利用者がいない市内と空港をつなぐイエローラインでは2両の編成で8分おきの運行(いずれも時間帯によっては増減するかもしれません)。そう、運行本数を少なくするのではなく、車両数を少なくして運行頻度を確保しています。完全自動運転で人件費がかからないからというのも理由の一つでしょうが、利用者の利便性を重視していました。
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Family車とSingle車?
さらにユニークなのは車両編成です。この短い編成で日本のグリーン車にあたる「First Class(一等車)」があるだけでなく、二等車は「Family」と「Single」にわけられています(もちろんアラビア語もありますが英語でも表示されています)。
「Family」と「Single」、つまり直訳すると「家族向け」と「独身者向け」となるのですが、後者に女性客は1人も乗っていません。「Single」は「独身の乗客」が対象なのではなく、「男性のみ」の場合乗るのです。たとえその男性が既婚者であろうと、自分だけまたは男性同士だけの場合はこちらに乗ります。
ただし既婚者男性も家族といっしょの場合は「Family」に乗ります。そして女性は1人でも「Family」に乗車します。つまり「Single」は日本の「女性専用車両」とは逆の「男性専用車両」ですね。だったら「Male」と「Family」に分ければいいと思うのですが……。
ちなみに女性の社会進出も少しずつ進んではいますがまだ男性客のほうが圧倒的に多いのか、4両編成の場合は2両が「Single」、1両が「Family」、1両が「First」という編成でした。
超快適なバス停の待合室
さてもう一つ驚かされたのがバス停です。頻繁にバスが来る都心部ではなく、20分に1本くらいしか来ないちょっと郊外でGoogleマップ片手にとあるバス停にたどりついたのですが……。
なぜ利用者が少ないところ冷房をつけるのかというと、待ち時間が長いための「熱中症予防」という意図があるようです。ただここで15分くらい待ったのですが利用者は私1人。それでも「費用対効果よりも熱中症対策」という考え方なのでしょう。
こんなふうに地下鉄もバスも近代的なリヤド。でも実はいまだに「自家用車」の利用が中心で、特に朝夕の渋滞はすさまじいものがあります。さらに排気ガスも多く大気汚染も深刻です。
それでも人々が自家用車に頼る理由。それはさきほど書いた「暑さ」とともに「ガソリンの安さ」。私が訪れたときは1リッター85円ほどと、日本や私が住むオーストラリアの約半額です。ガソリンを湯水のごとく使える産油国ならではのちょっと変わった悩みですね。
Visit Saudi Arabia (サウジアラビア政府観光局のサイト)
https://www.visitsaudi.com/ja
TOURISE (2025年11月にサウジアラビアで開催された世界的な旅行業界カンファレンス。今回はここの招待で訪問)
https://www.tourise.com/en/home
オーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどうぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)のお世話係。