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vol.439 進む経済成長、進む環境配慮(前編)【ベトナム】

人口は今や1億人を突破。日本を抜く日も近い?

 ベトナム社会主義共和国(Socialist Republic of Viet Nam/以下、「ベトナム」)政府は、中華人民共和国(以下「中国」)同様に共産党の一党支配体制を敷いており、現在は第8代のトー・ラム書記長が最高指導者に就いています。グエン・フー・チョン前書記長は2011年の就任後、内政では汚職撲滅運動を展開して民衆の支持を取りつけ、外交では米・中間のバランスを取るなど、巧みな手腕を発揮しました。
 日本との間についても、23年11月に二国間関係は最上位の「包括的な戦略的パートナーシップ」に格上げされました。現在では、オーストラリア、フランス、マレーシア、ニュージーランとも締結し、締結国が10ヵ国となっている模様で、東西を問わない全方位の外交姿勢(俗に「竹外交」と呼ばれている)が特徴的な国です。

 そんなベトナムの人口は、23年に1億人を超え、アジアでは、インド、中国、インドネシア、パキスタン、バングラデシュ、日本、フィリピンに次ぐ大台突破国となりました。国連の人口推計でも、近いうちに日本を抜くことが予想されています(図表1)。

図表1 人口推移予想

 多国籍化した大手企業にとっては、政情が安定していて近未来の発展余地のある国は、進出・投資の候補先として大変魅力的に映ります。ベトナムの特徴は若い労働力で、相当数の就業者がいるだけでなく、人口に占める就業者数も7割を超えており、現地で労働力を調達・販売しようという進出意欲が高まるわけです(図表2)。

図表2 15歳以上就業者数・就業率(2030年)

 さらにベトナム政府は外資を誘致するべく、投資分野や地域、投資規模に応じた優遇措置を実施しています。
 こうした取り組みの結果、24年のベトナムの1人当たりGDPは4,535米ドル(1ドル=150円で約68万円)となった模様です。08年のリーマンショック時にはわずか1,446米ドル(同約21万7,000円)でしたから、15年間で3倍以上所得水準が上昇したことになります。

絶え間なく通り過ぎるバイク群は“活気あふれるアジア”そのもの

 私は昨年11月にホーチミンに滞在する機会を得ました。道路を走行する大量のオートバイが「活気あふれるアジア」の象徴のようにニュース映像などでもよく使用されますが、ホーチミン市街はまさにそのままの都市でした。二人乗りを含むもの凄い数のオートバイが絶え間なく道路を行き交い、青信号で渡るのにもたじろぐほどでした。その多くが日系メーカー製の車両で、日本人としては大変誇らしく思います(写真1)。

写真1 都市部の“足”は圧倒的に二輪車

 実は25年7月、ファム・ミン・チン首相が「1年後、ハノイ中心部への化石燃料使用オートバイの乗り入れ禁止」を打ち出したことが、大きく報じられました。その打撃は大きく、ロイターによれば、公表翌月の8月の(同国でシェア1位の)ホンダのベトナムでの売上高は、前月比で約22%、前年比では13%減少した模様です。オートバイメーカー側は、移行・規制実施までの期間が短か過ぎるとしてベトナム当局に交渉などをしたようですが、1月9日にはホンダが新型電動オートバイ「UC3」をベトナムとタイで今春から発売することを公表したところを見ると、交渉は難しかったのかもしれません。

 ベトナム当局が電動車両への急速な切り替えを進めている背景には、

(1)ハノイが「世界で最も大気が汚染された首都」と評価されていること
(2)自国の複合企業大手のビングループ傘下の自動車会社ビンファストなどが電動オートバイを市場投入していること、

があるようです。実際、ビンファストの電動車(四輪車)は、青緑色に着色されたタクシーを含め、ホーチミン市内のそこかしこで見掛けます(写真2)。

写真2 ベトナムでも電動自動車の普及が進んでいる

 環境への意識はベトナムでも着実に高まってきているようです。そして、ODAを基盤に本邦企業が多数参画した地下鉄の敷設についても、広い意味では(1)の流れの中で出てきたもののようです。

 後編では、ベトナムの地下鉄について触れていきたいと思います。

佐々木城夛
1967年東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、信金中央金庫入庫。2019年地域・中小企業研究所主席研究員、信用金庫部上席審議役などを経て、21年4月より沼津信用金庫参与。「ダイヤモンド・オンライン」(ダイヤモンド社)、「金融財政ビジネス」(時事通信社)ほか一般誌・専門誌に連載多数。


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