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2002年基準地価公示に業界・各社がコメントを発表

 国土交通省より20日に発表となった「2002年都道府県地価調査(基準地価)」結果について、業界団体・各社のトップが以下の通りコメントを発表した。


■(社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 藤田 和夫氏

 2002年の都道府県地価調査(基準地価)は、「地価の二極化」傾向は続いているものの、全体では11年連続の下落となった。
 3月に発表された地価公示や8月の路線価もほぼ同様の動きを示しており、また全宅連の9月1日時点での中小不動産業経営動向調査においても経営上の問題点として「地価下落」がトップに挙げられていたので予想はしていたが、一向に資産デフレから脱却できない状況に強い危機感を抱いている。
 先行きの不透明感が払拭できない状態にある中で、地価の安定無くしては景気の回復は望めない。資産デフレの解消のためには、1,400兆円という個人金融資産の流動化が不可欠で、そのためには不動産に係る税、特に登録免許税や不動産取得税等の流通課税や譲渡税の緩和等の抜本的見直しを行い、買換え層も含めた不動産の流動化を図ることが急務である。さらに1,400兆円の約5割を占めるといわれる高齢者の金融資産を流動化させるため、住宅取得資金贈与制度の大幅拡充も必須。また、来年度の固定資産税評価額の見直しにあたり、土地建物等に係る固定資産税の実効税率の引き下げも不可欠であることから、是非とも実現を期待したい。
 住宅投資は経済全体への波及効果が高く、幅広く即効性を有していることから、日本経済を自律的成長に導くためにも、土地住宅税制の抜本的見直しを切に望むとともに、住宅取得を促進するような思い切った施策を期待する。


■三菱地所(株) 取締役社長 高木 茂氏

 商業地については、都心優良地への買い意欲は依然強いが、同一エリア内でも、条件の違いによって物件の価格差が広がり、個別性がより一層強まっている。例えば、丸の内はこれまでのオフィス立地としての特性に加え、丸ビルのオープンにより商業立地としての魅力も高まっている。
 住宅地については、都心の超高層・大規模マンション敵地はディベロッパーが競合するケースがあるものの、価格が弱含みになる地域は依然として多い。また、都心部の同一エリアであっても、商業地と同様、条件により価格差が大きい。
 マーケット全体としては、企業が引き続き保有不動産を圧縮していることから、需給関係は緩んでいる。
 重い負担を強いられている固定資産税・都市計画税等は、不動産への投資意欲を冷え込ませている。不動産投資を促進し、市場を活性化するために、税負担の軽減を図るなど、制度面でのサポートをこれまで同様強く望んでいる。


■東京建物(株) 取締役社長 南 敬介氏

 日本経済が長引く不況の根本原因は「土地資産の収縮」に起因する「バランスシート不況」であり、地価の11年間連続下落からもわかるように、法人・個人を問わず日本全体がこのバランスシート不況からなかなか抜け出せないでいる。この土地資産デフレを進行させている最大の要因が土地保有課税・流通課税等の「土地税制」である。
 日本経済を立て直すためには、「土地税制」の抜本的改革を大胆かつ集中的に断行し、長引く「資産デフレ構造」から一刻も早く脱却することが何より急務であり、土地税制に焦点を当てないデフレ対策は何の効果も期待出来ない。


■東急不動産(株) 取締役社長 植木 正威氏

 住宅需要については、交通利便性・生活利便性の格差が需要の二極化を生み、地価の二極化を促進させている。今後も、このトレンドに変化はないだろう。
 商業地についても、集客力=収益力の格差が地価の二極化を促進させている。但し、2003年問題などから都心オフィスビルの空室率が拡大する傾向にあり、今後の都心部商業地に与える影響が懸念される。
 全体的には今なお地価下落は継続しており、日本経済へ与える影響は深刻なものである。地価下落そして新たな不良債権の発生という「負の連鎖」を立ち切らなければならない。
 そのためにも不動産市場にあける需給ギャップの解消に向けた努力が必要だ。取得・保有・譲渡の各段階で不動産取引を抑制する税制を改め投資意欲を喚起させるのと同時に、再開発や都市基盤整備などを通じて投資対象となる魅力的(利便性・集客力を高める)な街づくり・都市づくりを推進するなど、需要・供給の両面から不動産取引を活性化させることが重要だ。


■(株)大京 取締役社長 長谷川 正治氏

 地価の「二極化・個別化」がさらに進行したという結果が出たが、マンション業界が取得を検討するような優良物件は、競合もあり、下げ止まり状況が続いていることから、全般の地価が未だ低下傾向にあるのは、デフレ対策が十分実施されていない現れ、と思われる。
 また、バブル期以降の、種々の土地税制の矛盾を早急に是正しない限り、日本経済再生は難しいのではないか。


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