国土交通省は13日、「マンション建替え円滑化のための懇談会」を開催。関係団体およびマンション建て替え問題に尽力するNPO法人の代表者らを集め、マンション建て替えに関する課題および対応策について検討を行なった。
マンション建て替え問題については、昨年12月にマンション管理の建替え円滑化法が施行、区分所有法も一部改正され、また、平成15年度予算措置として支援制度の抜本的な拡充が決定している。同懇談会はこうした一連の流れを受け開催されたもので、横浜国立大学大学院教授の小林重敬氏を座長に、NPO法人、居住者団体、消費者団体、業界団体、東京都、大阪府、住宅金融公庫、都市基盤整備公団、内閣官房都市再生本部事務局、国土交通省住宅局で構成。今後の建て替え円滑化にかかる推進施策の協議のほか、NPO法人からは活動状況が報告された。
開催の冒頭、内閣官房都市再生本部の和泉洋人事務局次長が挨拶に立ち、「法整備は整ったものの、マンションの建て替え問題は、行政と居住者だけで実現するのは難しい。よってその中間領域をNPOの力を借りて埋めていくことが最善。もちろん都市再生についても大いなる力を発揮して欲しい」とNPOの重要性を強調。続いて小林座長が、「マンション建て替えは、言わば『小さな都市再生』であり、大変重要な位置づけにある。2つの新法案によりその障壁、障害を取り除く手だてはできたものの、今後どう活用していくのかが大事。まずすべきは情報の提供であり、これには各方面の協力が必要」と、開会の辞を述べた。
懇談会は、まず事務局側が、現在のマンションストック400万戸超のうち新耐震設計法の制度化以前に建設されたマンションが約100万戸、約17万戸が築後30年以上を経過し、そのうち耐震性能が不十分な住宅は約7万戸にのぼると報告。住戸面積やエレベーターの設置状況、バリアフリー対応などの現状についても発表した。
続いて各NPO法人より、活動状況および具体的取り組み事例、現状の問題点の報告、また促進策に対する提言を行なった。その中で、「集合住宅の将来を考える会」の島野哲夫理事長は、「建て替えにあたっては、市場性や資金等の外的要因だけでなく、居住者それぞれのプライバシーも含め、深く分析する必要がある」と建て替え問題の難しさを述べた。また、現在取り組んでいるディベロッパーが参入しない建て替え事例を紹介。「資金的な問題はもちろんのこと、工事を発注しようにもゼネコンは前例がないとどうしても躊躇しがち」と、いわゆる「自力建て替え」の困難さを訴えた。
また、「全国コープ住宅推進協議会」の高田理事は、「協議は、建て替えを前提に行なっては危険。改修などの選択肢もあるという認識を持たねばならない」と、初動期の協議について問題を提起。これについては、すべてのNPO法人の共通認識のようで、「建て替えはあくまでも最終段階」「協議は建て替えありきではならない」などの意見が飛び交った。また、主婦連合会住宅部長の渡辺房枝氏は、同様の意見を述べたうえで「現在の行政の資料では、建て替え推進ともとれるのでは?」と指摘。これについて行政側は、「建て替えは管理の延長にあるものであり、各NPO法人同様に建て替えはあくまでも最終段階として、今回の法整備はそうした場合にいかに円滑に進めるかを主眼に置いている」と説明した。
最後に(社)高層住宅管理業協会の川崎理事長より、「建て替え問題を機に、変わりつつある共同居住社会のあり方、危機管理などについてもさらに深く協議していく必要がある。無論、建て替えは、良好なコミュニティが形成されていなければ、実現は難しいのでは?」と業界団体として、管理の重要性を訴えた。
今後は、国、地方それぞれが「マンション建替えの円滑化プログラム(案)」に沿って、円滑化にかかる推進施策を実施。国レベルでは、6月を目処にNPO法人、業界団体、居住者団体、消費者団体等で構成する「マンション建替え協議会」を設立する予定。また、「マンション建替え新時代」をテーマに、6月のまちづくり月間のメインイベントとしてシンポジウムを開催する。なお、これに先立ち、1月22日に小林座長、全国マンション管理組合連合会会長の穐山精吾氏が出席し、「マンション建て替えフォーラム」が開催された。この模様は、3月7日23:00よりNHK教育テレビにて放映される予定。