政府与党が15日発表した「平成18年度税制改正大綱」ついて、業界団体のトップから以下のとおりコメントが発表された。
■社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会 会長 藤田 和夫氏
平成18年度土地・住宅税制改正は、企業の設備投資増大、日経平均株価の回復等、景況感の回復ムードが高まる折、政府が財政健全化の旗印のもと歳出削減と税収増を図るため、景気対策として過去に導入した減税措置を縮小・廃止する方向性を示した中で行なわれた。
特に最重点事項である登録免許税や不動産取得税の軽減措置の延長については、一旦政府税調にて廃止の答申が出されたが、私ども全宅連の精力的な陳情活動により、事業用不動産では一部縮減されたものの住宅では平成18年4月より2年間現行税率のまま軽減措置がとられた。これは、私共会員の「資産デフレは依然として地方などで続いている」との切実な訴えが取り上げられた結果だと自負している。
また、550万円まで非課税、1,500万円まで5分5乗方式で計算する住宅資金贈与の特例措置は残念ながら認められなかったものの、住宅取得目的で生前贈与を受ける場合の贈与税の非課税枠(3,500万円)は平成19年末まで延長された。少子高齢化の中、引き続き高齢者の資産が有効活用される制度が維持できたことは大きな成果である。
さらに耐震に関する関心が高まる中、耐震改修した場合の所得税の税額控除や固定資産税の減免措置が創設されたことは今後、リフォームや中古住宅の流通の活性化に寄与することを期待したい。
今回の税制改正は、まさに“ゼロ”からの出発であったが、起死回生のごとく90点以上の成果を勝ち得たのは不動産業界への配慮の現れであり、今後の不動産市場が活性化し、日本経済のデフレ脱却を望むものである。
■(社)日本ビルヂング協会連合会 会長 高木 丈太郎氏
建物耐震改修税制については、総合的には一定の評価ができる内容となった。安全な都市づくりの見地から、事業用建物については改修促進のインセンティブとして特に税制に期待するところが大きかっただけに、特別償却割合が10%に止まったことは残念だが、制度の枠組みができたことは時宜を得たものとして意義がある。
土地の固定資産税については、条例減税制度を含む複雑な制度が延長されることになった。一方、家屋の評価については18年度の評価替えに際し何らかの制度改善を期待していたが、全く前進が見られなかった。固定資産税については、商業地等の過重負担など不合理な面を多々含み複雑化した現行制度の枠組みをいつまでも放置しておくのではなく、早期に納税者の納得ゆく簡素でわかりやすい制度に抜本的に改める必要がある。
流通税特例措置の延長が、土地部分を中心に認められたことは、資産デフレ脱却を確実なものとする見地から一定の評価ができるが、将来的には流通税自体のあり方について根本的に見直す必要があると考えている。
■(社)不動産流通経営協会 理事長 三浦 正敏氏
今般発表の税制改正大綱は、財政再建、三位一体改革という難しい環境の中で、デフレ克服、不動産流通の促進を図る観点から、税制面でも一定の配慮がなされたものと理解している。
具体的には、当協会の重点要望事項でもあった「流通諸税の特例措置延長」に関し、土地の売買等による所有権移転登記の特例、および住宅関係を中心にした不動産取得税の特例措置の延長が図られたことは、住宅流通市場に与える影響に配慮されたものとして評価したい。しかしながら、贈与税等の特例に関しては、住宅取得等資金に係る相続時生産課税制度の特例の延長が図られる一方で、現場等での制度浸透度、利用度の高かった5分5乗方式の特例が廃止されたことは残念であり、市場への影響等を注視していきたい。
その他、耐震改修に関する税制度の新設も、国家的な課題である耐震性向上による良好なストックの形成に寄与するものであり、流通市場にも好影響を与えるものと期待される。なお、この耐震改修税制および住宅ローン税額控除に関する今般改正でも明らかとなったが、三位一体改革による税源移譲の中で、国税と地方税の関係がさらに重要になってきており、減税効果が低減することのないような対応が不可欠であると考える。