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戸建てへの侵入「腰高窓」が4割に、2世帯住宅は被害減/旭化成ホームズ調査

 旭化成ホームズ(株)・ロングライフ住宅研究所は、「戸建て住宅の侵入被害開口部に関する実態調査」をまとめた。同社が1994年以降供給した「ヘーベルハウス」のうち、2004年・2005年に侵入被害による修理依頼をうけ、かつ被害箇所の特定ができるものにつき分析を行なったもの。調査に当たっては、国交省「防犯に配慮した共同住宅に係わる設計指針」などに携った明治大学助教授の山本俊哉氏の協力を得た。サンプル数は、被害棟数276、被害件数287。

 侵入被害開口部の実態では、1階の被害箇所の開口部下端の高さでみた場合、玄関、勝手口、掃出し窓の合計が5割を超えているが、下端が1.4メートルと高い腰高窓が単独で41.4%もの被害を受けており、開口部の中でもっとも被害確率が高いことがわかった。逆に、腰高窓以上の高さを持つ1階開口部は被害がなく、住宅性能表示の防犯区分である「高さ2メートル超」なら比較的安心であるという結果が出た。開閉様式では、開口部が大きく鍵の位置がわかりやすい引き違い窓に被害が集中(68.7%)した。被害内容については、75%がガラス割りによるもので、防犯ガラスの被害確率は、普通ガラスの3分の1と小さかった。
 また、敷地条件でみると、被害は道路から見て背面が5割、側面に4割が集中。側面は6メートル以上奥に85%の被害が集中しており、道路からの見通しの悪い部分が狙われていることがわかった。
 一方、居住形態別に被害を分析したところ、2世帯住宅や賃貸併用住宅の被害確率は、単世帯住宅より半減することがわかった。この傾向については、親世帯の在宅率が高いこと、集住形態は見守りあっているイメージが強いこと、2世帯住宅は構造が複雑なため侵入後の段取りが予測しづらいことなどが要因と分析している。

 今回の調査結果について、山本助教授は「今回の調査は、防犯環境設計の4つの要素のうち、これまでデータが得られなかった監視性の確保、接近の制御といった部分で貴重なデータが得られた。住宅性能表示では、どの範囲の開口部をCP部品で対応するか施主やメーカーの判断にゆだねているが、今回の調査はそうした防犯対策を限られたコストのなかで行なうための重要な判断材料となる」と評価した。また、同社ロングライフ研究所主幹研究員の松本吉彦氏は「犯罪に対する対策が、実際の犯罪に対して必要な対策となっていないことが多い。今回の調査をもとに対策の焦点を合わせ、最小限の対策で最大の効果を得られるような提案をしていきたい。1980年以降のヘーベルハウス居住者に対して、こうした対策を積極的にアピールしていきたい」としている。

 同社は、今回の調査結果をもとに、住宅性能表示制度における「CP部品」の使用といった「被害対象の強化」だけでなく、立ち入り範囲の明確化、道路からの見通しを活かした防犯対策といった防犯環境設計「ゾーンディフェンス」を提案していく。


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