国土交通省が19日に発表した「2006年都道府県地価調査(基準地価)」結果について、業界団体・各社のトップから以下のようなコメントが発表された。
(社)全国宅地建物取引業協会連合会会長 藤田 和夫氏
平成18(2006)年の都道府県地価調査結果では、全国平均で住宅地▲2.3%、商業地▲2.1%と2%台の下落にとどまり、平成17年(2005)年(住宅地▲3.8%、商業地▲5.0%)に比べると下落幅が縮小している。
三大都市圏では、住宅地、商業地ともに16年ぶりに上昇に転じたことについては、年始の地価公示と同様な地価上昇傾向が継続しており、喜ばしい状況である。
しかしながら、地方圏では下落幅が縮小したとはいえ、住宅地、商業地ともいずれも下落(住宅地▲3.1%、商業地▲4.3%)しており、依然として地価の二極化傾向が続いている点については憂慮している。
今後とも不動産市場の発展が健全に持続するためには、三大都市圏および地方ブロックの中心都市のみならず、全国的な地価の安定が図られるよう、地方圏においても不動産取引や証券化が活発化されることが重要である。
現在、社会経済の格差問題是正が最大の政策課題となっている中で、このたび発足する新政権においては、地価の二極化傾向を踏まえ、全国的な「資産デフレの脱却」を目指した施策の展開を希望したい。
本会では、抜本的な土地住宅税制の見直しを実現するため、「今後の土地住宅税制のあり方研究会」(座長:山崎福寿上智大学教授)を設置し、平成19(2007)年度税制改正要望に向けて政策提言をまとめているところであるが、特に、長期所有土地から土地・建物等への事業用資産の買換え特例制度については、企業の新規事業投資や不効率な資産整理に威力を発揮するのみならず、地方においては、買換えを促進する中で、地域・街なか再生に資するものとなり、延長を強力に要望していきたい。
(社)不動産流通経営協会理事長三浦 正敏氏
地価は、住宅地、商業地ともに平成17(2005)年調査に比べ全国平均で下落幅が縮小し、特に三大都市圏においては、都心部に加え、都心部に近接した地域および都心部からの交通利便性の高い地域を中心に、上昇に転じた地域は広がりをみせているが、一方、圏域全体としては3割から4割の地域では依然として下落が続いている。
また、地方圏では、地方ブロックの中心都市等で、上昇、横ばいの地点の増加も見られるようになっているが、その他の地域では、ほぼすべての地点が依然として下落しており、本格的な回復に向かっているとはいえない状況にある。
このように、全国レベルでの地価動向をみると資産デフレ状況はなお継続しており、今後、我が国経済の活性化をさらに促進していく必要がある。そのためには、国民生活の基盤である土地・住宅に関する需要の持続的な拡大が不可欠であり、特に、本年度施行された住生活基本法にも示されているとおり、住宅ストックの有効な活用を図る既存住宅流通市場の活性化は、今後の政策上の重点課題といえ、不動産流通を促進する税制の継続実施および住宅投資等に対する幅広い政策面での支援策の強化が、引き続き求められる。
三菱地所(株)取締役社長 木村 惠司氏
三大都市圏では商業地・住宅地ともに平成2年(1990年)以来16年ぶりに平均で上昇に転じた。全国平均の地価も、商業地、住宅地とも下落幅が縮小している。
商業地では、三大都市圏中心都市の都心部でほぼ全ての地点が上昇し、更に周辺地域へと面的な広がりを見せた他、札幌市・仙台市・福岡市などが平均で上昇に転じるなど、地価の下げ止まり・反転傾向は地方圏にも波及している。
J-REITやファンド等の投資行動を見ても、徐々に地方圏への投資割合が高まってきていることから、各地方圏の中心都市等における地価回復傾向は、そのエリアを広げながら継続して行くものと思われる。
住宅地でも、三大都市圏内の主要都市等が平均で上昇に転じ、各地方圏の中心都市の多くで下落幅が縮小するなど、地価の回復はより鮮明になっている。首都圏では底堅い需要に支えられた分譲マンション市場は非常に好調であり、デベロッパーの用地取得に対する意欲は依然強い。特に、都心中心部においては高級賃貸マンション用地を取得するファンドとの競合がおこっている。
このような地価の動向は、日本経済回復に伴う不動産ニーズの増加を反映したものであると考えられる。当社は、来年4月に「新丸の内ビルディング」を竣工させるなど丸の内再構築を推進しているが、丸の内に限らずあらゆる局面で不動産価値創出能力を発揮しこれらのニーズに応えていきたい。また、不動産市場の安定的な成長に資する法制度、税制度の適切な導入・運用等にも期待している。
東京建物(株)取締役社長 畑中 誠氏
東京・大阪・名古屋の三大都市圏を中心に都市部の地価が強含みで推移しているが、これは、構造改革や規制緩和の進展により都市再生の動きが活発化し、都市の利便性や快適性が向上するなかで、不動産の収益性が向上したことによる。
最近の不動産取引は、J-REITなどの不動産証券化市場の拡大により、既に、収益還元に基づき合理的な地価水準に収斂するメカニズムが働く健全なマーケットが形成されつつあり、不動産の収益性を無視した取引が頻繁に行われたバブル時の状況とは質的にまったく異なるものである。
わが国経済を内需主導型の持続的な成長軌道に乗せるためには、官民一体による都市再生、不動産証券化市場の拡大、税制の支援など各種施策が不可欠であり、その効果は、大都市だけではなく、長引く土地資産デフレから脱却できない地方都市の経済活性化に寄与するものとなろう。