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ビルの大型化と機能向上により、都心回帰さらに進む/ニッセイ基礎研究所レポート

 (株)ニッセイ基礎研究所は6日、「オフィス市場と超高層ビル供給の動向」と題するレポートを発表した。

 レポートによると、賃貸オフィス市場は、空室率が低下し賃料が上昇する局面にあり、ビル事業者にとって好ましい状況にあるとしている。最近の超高層ビルラッシュの背景を考えると、景気循環的な需給バランスの量的変化という要因に加え、賃貸オフィス市場構造がバブル時代と現在では大きく異なっていることから、需要面と供給面の質的な変化に注目する必要があると指摘。
 現在は堅実な事業計画に基づく実需が中心であるうえ、事務所経費やリスク管理、環境問題などに対する意識も高まるなど、オフィス需要は高度化して非常に選別的なものとなっており、「近・新・大」といわれる最新鋭の大型ビルに人気が集まる一方、商品性に劣る旧式・中小ビルに対する需要は弱いとし、稼働率や賃料の大幅な上昇は期待できないとした。

 需要の質的変化を大きな要因として、90年代後半以降、ビルの大型化の傾向と立地の都心志向が強まっているうえ、建築・設備性能や動線・フロア計画、管理サービス面をみても著しい改善がみられることや、開発プロジェクトの事業性のみに着目して金融機関や投資家から資金調達する開発型証券化が可能となったことによる不動産証券化の影響もなどを挙げている。
 以前であれば開発資金の調達が難しかったケースも、計画するビルの競争力が圧倒的に強いと見込めれば、幅広い投資家や金融機関から資金調達して事業をすすめることが可能になったとしている。

 今後の展望としては、東京などの大都市都心部を中心に今後も超高層ビルの建設が行なわれ、オフィスビルストックにおけるビルの大型化と機能向上、都心回帰は着実に進むものと予想。しかし、長期的にみれば人口減少と高齢化を背景に、オフィスワーカー数は減少に転じるとみられることから、賃貸オフィス市場では、限られたパイをめぐって新旧ビル間の競争が激しくなることが予想されるとした。さらに長期的には、経済価値が陳腐化した超高層ビルの建て替えも大きな社会課題となると指摘した。


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