(社)不動産証券化協会(ARES)と日本不動産金融工学学会(JAREFE)は5日、経団連会館国際会議場(東京都千代田区)にて、「不動産投資インデックスセミナー2009」を開催した。
セミナーの冒頭、同協会事務局次長・友永圭亮氏は、「1990年代以降、拡大を続けてきた不動産証券化市場は、米国サブプライムローン問題に端を発した金融危機などの影響を受け、今、大きな転換期にきているといえる。先行き不透明な状況ではあるが、不動産投資インデックスは、市況の把握やリスク評価、パフォーマンスの測定など市場の透明性を確保するもので、今後ますます重要な指標と認識されていくことに期待したい」とあいさつした。
講演では、同協会上席研究員の澤田考士氏が「ARES J-REIT Prperty Indexの最近の動向」と題し、同協会が示しているインデックスの算出式や根拠を示したうえで、デリバティブ取引で使用頻度の高いインデックスを取り集めた国際スワップ・デリバティブス協会(ISDA)の「インデックスデリバティブ契約書雛形案Annex-A」に掲載されたことなどを紹介。同インデックスへの注目度の高まりについて言及したほか、ある時点を100とした場合の指数値である「価格インデックス」を試作段階であることを明らかにした。
また、スタンダード&プアーズのマネージング・ディレクター兼指数委員会チェアマンのデビット・M・ブリッツァー氏は、同社の算出する「ケース・シラー住宅価格指数」を用いながら、昨今のアメリカの住宅市場について解説。サブプライムローン問題前は、住宅が過剰に価格付けされていたことや、地域トレンドとしてピーク時からの住宅価格の下落率などを提示、インデックスの有益性を示した。
日本不動産金融工学学会会長で早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授の川口有一郎氏は、「不動産投資インデックスを巡る最近の動向」と題し、学術的な観点から、ボラティリティー(金融商品の予想変動率)とノイズの問題などを指摘しながらインデックス作成にあたってのさまざまなアプローチ手法や統計理論などを紹介。各種あるインデックスは、どれがもっとも優れているかではなく、それぞれの情報の効率性の違いを利用すべきであるなどと論じた。