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一部に説明不十分の鑑定評価書/国交省、不動産鑑定業者を立入検査

 国土交通省は17日、「平成20年度不動産鑑定業者に対する立入検査結果」を発表した。

 鑑定評価書の記載の充実や収益還元法における収支項目の統一等を定めた不動産鑑定評価基準改正(07年7月施行)から概ね1年が経過し、改正後基準に基いた鑑定評価も蓄積されたことから、(1)法令遵守の状況、(2)鑑定評価業務の受注、実施及び審査等に関する状況、(3)証券化対象不動産に係る鑑定評価書の審査など、業務が適切に行なわれているかどうかを把握することを目的に調査したもの。証券化対象不動産の鑑定評価書交付件数の多い30業者と、07年7月~08年8月の14ヵ月間に交付した証券化不動産に係る鑑定評価書のうち167通を審査した。

 法令遵守の状況については、すべての業者で法令の遵守が認められたものの、押印はあるものの、不動産鑑定士の署名(自署)ではなく「記名」により交付された鑑定評価書や、5年間の保存義務が課せられる書類の一部に、保存が不備な例がわずかに確認された。
 
 鑑定評価業務の受注、実施および審査等に関しては、一部で(1)受注審査や依頼者への業務説明等に係る統一的な対応要領等が作成されず、対応に当たる職員に一任していた、(2)採用数値の再点検や誤字・脱字・転記ミスの防止等品質管理の必要性に関する認識が希薄、組織体制が十分に整っていない、(3)鑑定評価業務の独立性の確保、守秘義務の徹底等について十分な措置を講じていない、といった事例が見られた。

 また、鑑定評価書の審査では、おおむね適切な記載で十分な説得力があったが、一部でDCF法の適用にあたり運用収益・運営費用項目や資本的支出等の査定、将来予測に関する妥当性や判断の根拠について、運営収益の増加、空室等損失の低減に関する根拠の記載が十分ではなかったり、貸室テナントの契約期間や賃料改定条項、修繕費負担区分等の賃貸借契約内容の記載が十分ではないといった具体的根拠の記載不足が見られた。

 不備が見られた業者については検査官が指摘・指導を行なったほか、(社)日本不動産鑑定協会の行なう研修等への反映により、業者への周知徹底を図っていく。


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