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日本の消費者が求める建物寿命は「50年」前後/リクルート住宅総研調査

 (株)リクルート住宅総研は12日、「住宅長寿命化大作戦 リクルート住宅総研の200年住宅論」と題したレポートを発表した。消費者視点で住宅の長寿命化を考えるプロジェクトとして実施したもので、日英の住宅取得者へのアンケートをベースに分析している。

 日英の既存住宅に対する意識を比較したところ、英国人が経年変化の価値を尊重するのに対し、日本人は他人の痕跡に潔癖で、経年劣化の意識が強いことがわかった。また、英国人は築100年超の住宅を取得する理由として「美的な個性」と「建築様式・デザイン」を挙げているが、日本人は築30年以上の住宅取得において「安さ」と「相続」以外には特に理由がない、という結果となった。また、英国人は、全体の半数弱が居住地域に対して非常に愛着を強く持っており、その割合は日本人のおよそ倍近かった。
 以上のことから、英国の住宅長寿命化構造について「建物の品質価値、美的価値、地域のアメニティ価値が、複合的なニーズでストック型市場を支えている」と分析している。
 
 一方、日本の住宅長寿命化に対するニーズについては、想定する住宅の寿命は「50年前後」と「自分が生きている間は問題なく使用できればいい」という考えが多勢を占めた。また、建替えやメンテナンスにかかるコストの回避に注目し、環境問題は建前的で後の世代への社会資産という発想はない、という結果となった。
 これら調査結果から、現時点での日本人の長寿命化ニーズは、ストック型社会の実現ではなく、「一世代一住宅社会の完成形」を志向している、と結論付けている。

 同研究所では、日本の住宅長寿命化のための課題として、(1)資産価値議論からの脱却、(2)家に対するこだわり・愛着の醸成、(3)長寿命化に適した法整備、(4)所有と使用の分離、(5)地域に対するこだわり・愛着の醸成を挙げ、「特に家や地域に対する愛着が長寿命化への近道である」と提言している。


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