三井不動産販売(株)はこのほど、報道関係者向けのプレスセミナーを開催。東京都心部における、不動産投資市場の現況について報告した。
同社は、個人資産家等の実需不動産売買や不動産投資コンサルティングを手がける店舗「リアルプラン」を展開しているが、リーマンショック後の金融収縮で不動産業者等を中心とした「プロ」の取引が激減する一方、金融資産5億円以上を持つ富裕層を中心にした個人投資家の不動産投資ニーズが、09年明けごろから顕在化してきたという。
「リーマンショックもまったく関係なかった富裕層、不動産の上昇局面で様子を見ていた人たち、新たに不動産投資に参入してきた人たちが、一斉に動き出した感じ」(同社リアルプラン営業本部リアルプラン営業部長・金子雅生氏)。
これまでプロ間で取引されていた事業用不動産の買い手が無くなり、行き場を失った不動産情報が個人投資家に流れているためで、価格の底入れ感を感じる取引が増えていること、また金融資産に偏ったポートフォリオ見直しの機運が高まったことも、個人の不動産投資意欲を高めている要因。同社リアルプランにおける買主業種別構成も、不動産業者の割合が06年の42%をピークに08年は10%にまで低下。今では、エンドユーザーや一般法人が主役になっている。
また、個人投資家の求める投資物件は、1棟もののレジデンシャルが71%と圧倒的に多く、「3Aと呼ばれる赤坂、青山、麻布を中心に東京都心部所在へのニーズがほとんど」(同氏)。価格は、2億~3億円のもの中心に、5億円以下が60%強を占める。09年以降、金融機関の融資姿勢が柔軟になったこともあり、70%の投資家がローンで資金調達を行なっている。利回りは、リーマンショック以前はグロス10%以上を求める声が多かったものの、現在の取引はおおむね6~8%台で推移しているという。
同社は不動産投資市場を中心とした流通市場の今後について「マーケット変化のスピードが早く、08年末から価格調整が進んでいる。ただ、個人投資家のニーズに合った物件の品薄状態が続いており、価格の調整が難しいケースも増えてきた。直近の市況は活性化してきたが、不動産マーケット全体の活性化につながるかどうかは、今後の景気動向も踏まえて慎重にみていく必要がある」(同氏)としている。