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2009年都道府県地価調査結果に業界団体・各社がコメント

 国土交通省が17日に発表した「2009年都道府県地価調査(基準地価)」について、業界団体・各社のトップから以下のようなコメントが発表された。

■(社)全国宅地建物取引業協会連合会会長 伊藤 博氏
■(社)不動産流通経営協会理事長 大橋正義氏
■(社)不動産協会理事長 岩沙弘道氏
■三菱地所(株)取締役社長 木村惠司氏
■東京建物(株)取締役社長 畑中 誠氏
■住友不動産(株)取締役社長 小野寺研一氏
(順不同)

■(社)全国宅地建物取引業協会連合会会長 伊藤 博氏

 昨年のリーマンショックに端を発した世界金融同時不況は、我が国の不動産市場にも大きな影響を及ぼした。
 平成21 年都道府県地価調査は、昨年に引き続き、全国平均で見ると住宅地(▲4.0%)、商業地(▲5.9%)と全用途で下落となった。これは、去年と比較しても、下落幅が大きくなっており、各都市圏の全域でほぼ全地点が下落となった。
 今年の地価公示においても、全国平均の住宅地、商業地が上昇から下落に転じるなど、世界的な金融不況に影響された不動産市況の悪化を背景に需給の調整が行われ、都心部の高度商業・業務集積地域等をはじめ、上昇から下落に転じた地点が増加した。
 本会では低迷する不動産流通市場を活性化させるために、各種の施策が必要であるとの認識から、今年4月の政府の経済危機対策の策定にあたり、宅建協会の協力のもと要望活動を展開し、「住宅取得のための時限的な贈与税の軽減制度」等の成果を得るとともに、「不動産取引制度に関する研究会」(座長:川口有一郎早稲田大学大学院教授)を設置し、不動産取引における消費者保護と不動産の流動性の向上により、健全な不動産市場の発展を図ることを目的として、不動産取引法と不動産取引所の具現化に向けて研究を実施し、中間のとりまとめを発表している。
 また、安定した不動産市場の確立に向けて政策提言能力の強化を図るため、全宅連不動産総合研究所を設置し、活動を開始している。
 現在、国土交通大臣の諮問機関である社会資本整備審議会などにおいて、それぞれの視点から、不動産流通市場の活性化や消費者保護等に関する研究が実施されており、本年12 月頃に取りまとめ報告等が行われる予定である。それらの報告を踏まえつつ、不動産市況の回復のために尽力していく所存である。
 新内閣においても、地価の安定的な持続確保と内需の柱である住宅市場の活性化は日本経済にとって重要な要素であるとの認識のもと、強力な施策の推進を期待したい。

■(社)不動産流通経営協会理事長 大橋正義氏

 今回の地価調査においては、全国平均で全用途にわたり下落となった。三大都市圏においてはほぼ全地点が下落となり、なかでも東京都区部においては住宅地平均、商業地平均ともに二桁前後の下落に転じ、とりわけ業務高度商業地やブランド力の高い地域においては20ないし30%近く下落した地点が見られるなど大幅な調整が働いた。
 この1年間における地価下落の背景としては、世界的な金融危機を発端とした企業収益の大幅な低下や、個人消費の低迷など、景気の急速な悪化にともなう住宅購入の見送り、オフィスビル空室率の上昇、不動産ファンド等の投資の減少などを如実に反映したものと考えられる。
 一方、東京圏の半期ごとの地価動向を見ると、下落基調が後半鈍化した地点が比較的多くみられるなど、大幅な価格調整による底打ち感に加え、住宅ローン減税の大幅拡充をはじめ、昨今の経済情勢を踏まえた数次にわたる景気対策の効果なども相まって、東京圏では既存住宅取引件数が増加に転じるなど、不動産取得需要回復の兆しも見受けられつつある。
 今後、このような回復の予兆を全国レベルでのバランスの取れた地価の安定化に結び付けてゆくためには、景気の回復はもとより、(1)低迷する需要を換起し持続的な成長を図り、良質な住宅ストックの拡大を下支えするための税制の継続、(2)新たなニーズに対応した住宅取得・買換えの促進を図るための施策の推進、(3)Jリートを中心とする不動産証券化市場の回復を促進する施策の推進、(4)不動産融資の迅速かつ的確な実行などにより、不動産流通市場の活性化を図ることが不可欠である。

■(社)不動産協会理事長 岩沙弘道氏

 今回発表された都道府県地価調査では、全国平均で、住宅地が前年比▲4.0%となり、商業地は▲5.9%となるなど、全用途で下落幅が拡大した。三大都市圏では、4年ぶりに上昇から下落に転じ、住宅地・商業地を含むほとんどの用途で地方圏を上回る下落を示した。地方圏では、全用途平均で4年連続して下落幅が縮小していたが、今回下落幅が拡大した。
 国内の雇用情勢は厳しく、個人消費も依然として低迷していることから、我が国経済の本格的な回復には、まだ相当の時間がかかるものと思われる。
 こうした中、賃貸オフィス市場は、東京都心部で空室率の上昇に歯止めがかかりつつあり、改善傾向が出始めるなど、変化の兆しが見られる。一方分譲マンション市場も回復しつつあるといえるが、着工戸数・販売戸数は未だ低水準にあり楽観できない。特に、大阪圏・名古屋圏を始め、地方については、依然として厳しい状況が続いている。そのため市場動向については、今後も一層注意深く見ていくことが必要と考える。
 地方を含めた日本経済が、直面する危機を脱し、景気回復の兆しを確固たるものとするためには、住宅・不動産市場の回復が極めて重要である。安心・安全で良質な住宅の供給、都市・地域の再生と活性化を推進するため、新政権には強力な政策支援をしていただきたい。

■三菱地所(株)取締役社長 木村惠司氏

 商業地は、全国平均で▲5.9%と前回よりも下落幅が拡大した。これは企業収益に悪化に伴ない賃貸オフィス市場が弱含んでいることや、不動産投資市場の低迷が続いていることなどが大きな要因であると考えられる。
 住宅地は、全国で▲4.0%となり、前回まで3年連続して上昇を示した三大都市圏についてもほぼすべての地点で下落となった。分譲マンション市場については、着工は依然低位で推移しているものの、住宅ローン減税の拡充や物件の価格調整が進んでいることを背景に、在庫調整が進展するなど一部に明るい兆しも見えている。
 国内経済に関しては、設備投資の低迷や失業率の悪化が続いており、当面厳しい状況が続くと考えられるものの、一部に持ち直しの動きがみられる。今後内需主導の安定的な経済成長を果たしていくためには、都市再生や質の高い住宅の供給など不動産業が果たす役割は大きい。新政権には、景気・雇用対策や経済成長に確実につながる政策にスピード感をもって取り組んでいただくとともに、不動産市場の持続的な成長に資する施策の実施・拡充を期待したい。

■東京建物(株)取締役社長 畑中 誠氏

 日本経済は、一部で底打ちの兆しが見えてきているものの、雇用情勢の悪化が続くなど、いまだ予断を許さない状況にある。不動産市場においても、分譲マンションの価格下落やビル空室率の上昇・賃料の下落、不動産投資市場の低迷などで地価も総じて下落している。
 しかし、優良な住宅やオフィス、希少性の高い不動産に対する潜在需要は底堅く、ここにきて分譲マンションの在庫が減少するなど明るさも見え始めている。また、不動産市場安定化ファンドが創設されたことによるJ-REITへの信頼回復が、不動産投資市場の活性化につながっていくものと期待している。
 今後、日本経済が回復するためには、不動産市場の活性化による内需主導型の経済成長策が不可欠である。今般、民主党政権が誕生したが、新政権においても、都市・地域再生による安心・安全な魅力あるまちづくりの推進、併せて不動産市場の安定的な発展に向けた規制緩和、税制支援、投資環境の整備などを継続的に実施していただくことを強く希望する。

■住友不動産(株)取締役社長 小野寺研一氏

 金融収縮と景況感悪化の影響で、昨年来、不動産取引は、総じて低水準で推移している。
 今回は、三大都市圏においても地価が下落に転じたという調査結果となったが、地価公示と併せて見ると、既に下落幅は縮小傾向に入ったようだ。年明け以降の、相次ぐ政策発動によって、効果が出始めたと見るべきであろう。
 既に、日本の持ち家率は6割を超えており、不動産価格の下落が家計に悪影響を与えることは明らかである。また、景気回復のために、内需拡大の最大の牽引車である住宅実需を喚起することは、極めて重要である。需要刺激策の継続が強く望まれる。


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