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住宅政策、「戸数増加」からの決別を/ニッセイ基礎研がレポート

 ニッセイ基礎研究所は19日、「持家率からみた持家需要増大の可能性」と題した不動産投資レポートを発表した。低迷が続く住宅着工戸数の現状を踏まえ、東京都と全国の持家需要の要因と今後の予測、住宅取得政策の効果などを分析したもの。

 東京都の持家率は、1995~2005年にかけ、マンション販売価格の低価格化や東京への転入者の増加などを背景に、上方にシフトし、持家数(および分譲数宅、分譲マンション販売戸数)を大幅に上昇させた。しかし、05年11月の耐震偽装事件の発覚、分譲マンション価格の上昇と販売戸数の減少などを考えると、上方シフトは止まり、05年までの上方シフトが大きかったこともあり、今後の持家率は減少から増加に転じる可能性が高いとした。

 逆に全国の持家率は、近年低下傾向が続いていたが、持家率カーブの下方シフトの終了と、規模の大きい団塊ジュニア世代の持家率が拡大するものの、総世帯数の大幅な減少を反映し、若年層の持家世帯増加数は減少を続けるとした。

 また、これまで住宅ローン減税をはじめとした住宅取得支援策により持家率の上方シフトがなされてきたものの、その反動として、次の期の持家率の増加分を圧縮させることがわかり、年齢層が若いほど人口が減少する状況を考えると、反動による低迷は深刻なものになる、と分析。過去のさまざまな住宅取得政策にもかかわらず持家率が下落していることから、政策的に持家率カーブを上方誘導・維持することはほぼ不可能と結論付けた。
 そのうえで、「空家が増加を続ける現在、経済波及効果を目的とした持家取得施策は、空家の増産につながる恐れが強く、資源配分の面からも、これまで以上の配慮が必要であるように思われる。大規模な住宅取得支援策は、その政策の効果が高いほど、その後に大きな低迷をもたらす可能性が高い。今後の賃金上昇が見込めないなかで、中期的な住宅施策は、住生活基本法の理念にのっとり、波及効果を目的とした戸数増加から明確に決別し、持家や賃貸住宅の質の向上へと転換する必要があるのではないだろうか」としている。

 レポート全文は、http://www.nli-research.co.jp/report/misc/2009/fudo091119.pdf参照。


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