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建築から廃棄までCO2排出量収支ゼロのデモ住宅を公開/建築研究所

デモンストレーション棟の外観。建物南側を大開口とするとともに、光と風を取り込みやすいパラボラ状の壁形状とした。冬は窓を閉めてサンルーム状の空間とし、夏は窓を開放して縁側を軒下外部空間とすることで自然エネルギーを利用していく
空気の流れを作り出す通風塔を建物の北側に設けた
建物内部から見た南側大開口部。日射をコントロールする木製ルーバーを設置した

 (独)建築研究所は4月28日、国土交通省国土技術政策総合研究所および一般社団法人日本サステナブル建築協会と共同で研究開発を進めてきた「ライフサイクルカーボンマイナス(LCCM)住宅」のデモンストレーション棟を、報道陣に公開した。

 同研究は、同協会内に設けられたライフサイクルカーボンマイナス住宅研究・開発委員会(委員長:村上周三(独)建築研究所理事長)において2009年度から3年計画で進めているもの。住宅の建設、運用、改修、解体・廃棄の過程において可能な限り省CO2に取り組むとともに、太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーを創出することでCO2排出量の収支をマイナスとする住宅の提案を目的としている。

 デモンストレーション棟は温熱・風・光環境のシミュレーションや建設時のCO2削減のための材料・工法の検討などの設計プロセスを経て2011年2月、同研究所(茨城県つくば市)内に完工したもの。木造軸組工法の2階建て、延床面積142平方メートル。太陽光や風など、自然エネルギーを取り入れることで、季節や時間に応じて空間環境を変えていく“衣替えする住宅”を設計のテーマにしている。

 主要設備には、太陽光発電パネル(約8kW)、ヒートポンプ式エアコン、太陽熱集熱器対応ヒートポンプ給湯器、家庭用燃料電池、LED照明、ホームエネルギーマネジメントシステムなどを導入。建築コストは、一般的な住宅と比較して、開口部の性能向上により約250万円、設備費で約200万円、太陽光発電システムで約700万円のコストアップとなる。 

 研究では、建設時のCO2排出量を正確に計測するため、施工中の廃棄物などを含めて施工調査を実施。また、4人家族が居住することを想定し、生活状態を再現したうえで、エネルギー消費量や温熱環境などを調査していく。2011年3月上旬に実施した居住実験では、5日間で40~50kgのCO2削減を実現、これにより建築から運用、解体を含め、約30年間でCO2の排出量の収支がゼロ以下になると試算している。今後も四季に応じた居住実験を実施、同住宅の普及のためのツール整備や仕組み作りなどを視野に研究を進めていく予定。

 村上理事長は「CO2排出量は、運用段階だけでなく、建設段階を含めて総合的に最小化が図られるべきであり、それを評価する新しいツールとしてLCCMを提案していく」と述べ、建築物環境総合性能評価システム「CASBEE」と併用し、CO2排出量の評価認証制度の発展・拡充を進めていく方針を示した。


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