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オフィスビル、地震リスクが低いほど賃料は高く/ニッセイ基礎研究所調査

 (株)ニッセイ基礎研究所は、「オフィスビルの地震リスク評価(PML値)と賃料・利回り」と題するレポートを発表した。

 建物の耐震性は通常建物の強度や粘り強さで評価されるが、金融、不動産投資の分野では、大地震が発生した場合の地震リスク指標として、想定地震被害額から算出するPML値(予想最大損失率:Probable Maximum Loss)を利用する。このPML値が10%以下では耐震性に問題なし、15%を超えると耐震性に疑問符が生じ、20%以上の場合は格付の低下や金融機関からの融資が困難になるため、地震保険への加入が要求される場合が多いとされている。このPML値が賃料にどの程度影響を与えるか検証したもの。

 一般オフィスビルについて地震リスク(PML値)を把握することは困難であるため、JREITのオフィスビルをもとに地震リスクがどの程度賃料や利回りの評価に反映されているのか分析をしたところ、PML値が開示されているオフィスビルの平均PML値は8.2%。建築年が1981年までのビルでは10.8%、82~89年では9.1%、90~2000年では8.0%、01年以降では6.1%と、建築年が最近であるほど、PML値は小さくなる傾向がみられた。

 また、オフィスビルの賃料をPML値と立地エリア等から要因分析したところ、PML値15%以上のオフィスビルを基準とすると、PML値が2%未満のビルでプラス1万170円、2~5%未満のビルではプラス5,330円、5~10%未満のビルではプラス3,600円、10~15%未満のビルでは1,530円の賃料格差が発生。PMLの違いが賃料に反映されている、という結果となった。

 震災前まではPML値が賃貸の現場で明確に認識され、賃料に反映されるという状況にはなかったと思われることから、耐震性能だけではなくさまざまな物件特性(ビルの建築年、規模、グレードや視認性など)の水準が高く、それが賃料の高さにつながっているという可能性もある、としながらも、PML値が高いほど賃料が高い状況に変わりはなく、今後PML値に対する再評価が進むのであれば、推計結果に比べ、さらにPML値に応じた賃料格差が拡大する可能性について示唆している。


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