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物流倉庫のストック更新へ、年間1,000万平方メートルの着工が必要/一五不動産情報サービス

 工業用不動産の不動産調査を行なう(株)一五不動産情報サービスは28日、「人口減少社会における物流倉庫ストックの長期展望」と題した調査レポートを発表した。

 物流倉庫ストックは1980年の段階で2.6億平方メートルであったが、2010年では5億平方メートルと約2倍にまでストックが拡大。またストックの変動については80年代は3~5%の増加率であったが、2000年代は、06~08年の大都市圏における賃貸物流施設の大型開発が相次いだものの増加率は0~1%と、全国ベースのストック増加率に与えた影響は限定的であるとした。その結果、10年におけるストック変動率はプラスであるが、今後の人口減少を考慮すると、物流倉庫ストックの変動率がマイナスに転じる可能性は高く、短期的には東日本大震災の影響が反映される12年のデータにおいて、物流倉庫ストックが縮小する可能性が高いと指摘している。

 さらに、将来推計人口からみると、04年をピークに人口減少が始まり、40年後の50年には9,500万人にまで減少の見込みであることから、中長期的には物流倉庫ストックも縮小に転じると予測。

 一方、フローの分析では、60年代に新規着工された物流倉庫が耐用年数を迎えつつある事実を鑑み、寿命を迎える物流倉庫の床面積を予測すると、10年代後半に1,000万平方メートル超、20年は1,000万~1,500万平方メートル、30年代には1,500万平方メートルを突破することも起こりうると分析。
 新築着工の予測については、10年代後半から上昇し、20~30年代にかけて1,000万平方メートル前後の新規着工の発生が予測され、また11~50年までの40年間の新規着工面積推計の平均値は846万平方メートルと試算した。

 これらの結果から、寿命を迎えた物流倉庫ストックの更新をスムーズに進めるためには、現時点の物流倉庫の着工水準(10年:422万7,947平方メートル)を大きく上回る年間1,000万平方メートル前後の新規着工が必要になると分析している。

 なお短期見通しとしては、今後数年間は物流倉庫の老朽化が進みつつあるものの、取壊しや建替えをせずに維持管理をしながら耐用年数を引きのばす努力を続ける所有者が多いと予想されることから、東日本大震災による取壊し分を除けば、物流倉庫ストックはほぼ横ばいに。長期見通しとしては、年間1,000万平方メートル前後の新規着工が発生すれば物流倉庫の新陳代謝が進み、新規着工が伸び悩めばストック更新はあまり進まず、物流倉庫のストック高齢化が進み、サプライチェーンの変化に物流倉庫ストックが対応できないだけでなく、大震災による倒壊リスク増大や雇用環境の悪化等、問題を引き起こす可能性が否定できないとしている。


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