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調布市の木造アパート2物件のリノベーションが竣工/木賃アパート再生ワークショップ

「あさひハイツ」の窓際にはフタを開ければ収納になるベンチを設置。キッチンと居室の間にはどちら側からも使える棚をつくった
「Rハイツ」の1階はロフトのハシゴの下に収納を置くことで、ロフトまでの距離を短くした(写真上)。2階はロフト下にハシゴの幅に合わせた収納をつくることで空間を有効活用した(写真下)

 大学生を中心とした産学連携の建物再生チーム「木賃アパート再生ワークショップ」(代表:連 勇太朗氏(慶応義塾大学政策・メディア研究科))は6日、同チームが手がけた東京都調布市にある木造アパート2物件のリノベーションが竣工したとして、記者向けに公開した。

 「木賃アパート再生ワークショップ」は、2009年に(株)ブルースタジオの大島芳彦氏と(株)良品計画の土谷貞雄氏の声かけにより発足したもの。専門家の協力のもと、大学生の手によって、老朽化や収益性の低下などが問題とされる1960~80年築の木造賃貸アパートの価値を再考し、ワークショップ形式でプロジェクトを進め、現代の暮らしや木造アパートの新たな生活像と生活環境を提案する活動を行なっている。

 今回は、同チームが11年4月より第2弾プロジェクトとして手がけてきた木造アパート3物件のうちの2物件「あさひハイツ」「Rハイム」(ともに東京都調布市)を公開した(プロジェクト内容の詳細は、11年7月22日付けのニュースを参照)。

 「あさひハイツ」は、京王線「西調布」駅から徒歩5分、築43年の木造2階建てアパートで、総戸数8戸のうち5戸が空室だった。今回はそのうち1階にある1戸(洋室6帖、キッチン3帖の1K)をリノベーション。通風が良いという利点を生かし、窓の外側に縁側を、室内側にベンチとしても機能する収納をつくり付けた。玄関横にある押入れは中板を抜き、洋服をかけられる金属製のバーを通すことでクローゼットに。玄関との間には棚板の幅を自由に変えられる収納をつくることで、靴、洋服両方の収納棚として活用できるようにした。また、居室とキッチンが中途半端に区切られていたことから、鴨居の部分に高さの低い収納をつくることで、ゆるやかなゾーニングを実現している。
 「オーナーさんが年長者であることなどから、新たな考えを理解してもらうのには労を要しましたが、逆にアドバイスを受けて付けた長押が、洋服をかけたり、お気に入りの小物を置けたりと、空間のアクセントとなったり、相互の考えを交えて物件をつくりあげることができました」(武蔵野美術大学造形学部・川瀬英嗣氏)。工費は約80万円。賃料は5万5,000円(従前5万円)。

 「Rハイム」は、京王線「調布」駅から徒歩5分、築20年の木造2階建てアパート。総戸数4戸のうち、1階の1戸と2階の1戸を改装(洋室6帖、ロフト3帖の1R)した。収納の機能しかないロフトの活用、傾斜した天井や段差のある床などによるいびつな空間の整理などを統一のテーマに、1、2階それぞれのコンセプトで改修した。
 1階の居室は、ロフトを書斎のように活用できるよう、L字型の収納をつくりつけたほか、床とロフトの距離が短くなるよう、ハシゴの下に固定収納を設け、ハシゴの長さを短くした。またリビングとロフトが一体化に向け、ロフトの板材、ハシゴ、長押が一続きになるよう、木材の色・素材を統一。床は無垢材をしているが流通品を使用することで安価に抑えた。
 2階の居室は、圧迫感のあるロフト下には、ハシゴ横のスペースを活用した収納や、低い天井だからこそできるモノが吊れる金属製のバーをつくり付けた。「収納棚は、ハシゴの踏み板の高さと合わせてつくることで、ハシゴと収納が一体化したようなおもしろさを出しました。また、大小さまざまなモノが置けるよう、棚板の形や奥行きなどに変化をつけました」(立教大学観光学部・田丸華子氏)。ロフト部分は、畳敷きの空間とし、自由にくつろげる“離れ”をイメージした。
 工費は2戸合わせて150万円、賃料はともに5万5,000円(従前5万円)。

 なお、客付けは、プロジェクトの協力関係にある(株)エイブルが行なう。あさひハイツはすでに入居者が決まっており、Rハイムは募集中。一般向け内覧会は8日(土)に開催される。詳細は同チームのホームページまで。


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