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中古取引促進のための情報提供の在り方を議論/不動産流通市場活性化フォーラム

 国土交通省の第2回「不動産流通市場活性化フォーラム」(座長:日本大学経済学部教授・中川雅之氏)が、2日に開かれた。

 今回のフォーラムでは、不動産取引を活性化するために必要な情報と、その情報をどのようなタイミングで提供、また蓄積していくかなどについて、実務に詳しい委員からヒアリングし、その方向性について議論した。

 独自に中古マンションの評価を実施している(株)風代表の大久保恭子氏は、中古マンションの耐震性・耐久性・維持管理に関する情報やリフォームにおける制約情報の事前入手が困難であると指摘。「これらの情報を購入検討段階に提供しないと消費者の不安は払拭できない」とし、仲介にインスペクションやリフォーム提案を含めたワンストップサービスを仲介会社を通じ確立すべき」と提言した。

 さくら事務所代表取締役の長嶋 修氏は、自身が手掛けてきたインスペクション事例を通じ「申し込みから契約までの時間が短いとインスペクションができない」ことや「ホームインスペクターの見落としなどに対する賠償責任をどう担保するか」「売り主のインスペクションに対する理解の低さ」といった課題を挙げ、売り主・仲介業者からのインスペクションの奨励、インスペクション結果による契約の白紙解約特約の推奨、ホームインスペクター向けの業務賠償保険制度の導入などを提言した。

 また、(社)全日本不動産協会副理事長の林 直清氏は、宅建業者が行なう重要事項説明項目とその他告知すべき項目について報告。これらの情報を正確・確実に消費者に提供するために「売買取引ごとの物件に関する情報のファイル化と永久保存」「売買や新築・リフォームごとの設計図書・工程写真のファイル化と永久保存」「インスペクション制度の確立」などを提言した。

 その後、これらの提言について、委員から意見を求めた。各委員からは「情報を提供する側の責任だけでなく、情報を受け取る消費者の責任をどう定めていくか」「売り主と業者の負担が重くなり過ぎると、かえって流通を阻害するのでは」「売主も消費者である以上、こうした施策を導入してどのようなメリットやインセンティブがあるのかを明確にすべき」などの意見が挙がり、消費者保護と自己責任原則のバランスをどう取っていくかという課題に収斂した。 

 なお第3回フォーラムは、2012年1月に実施する予定で、今回同様、不動産取引に必要な情報の提供手段などについて議論する予定。


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