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業界団体トップ、2012年の年頭所感(2)

 住宅・不動産業界団体トップが発表した年頭所感は、以下のとおり。

(社)不動産流通経営協会理事長 袖山靖雄氏
(社)住宅生産団体連合会会長 樋口武男氏
(社)日本ツーバイフォー建築協会会長 生江隆之氏
(社)プレハブ建築協会会長 和田 勇氏
(社)日本住宅建設産業協会理事長 神山和郎氏
(財)日本賃貸住宅管理協会会長 三好 修氏
(順不同)


■(社)不動産流通経営協会理事長 袖山靖雄氏

昨年の東日本大地震による影響に加え、世界的な金融収縮により今後の日本経済の先行きは予断を許さない状況です。

不動産流通市場も、大震災により落ち込んだ既存住宅取引が7月頃まで緩やかな回復基調にありましたがその後は伸び悩み、ホールセール市場も、大震災以降、投資家の模様眺めの状態が続き市場拡大の兆しは未だ見えません。

このようななか、昨年12月に発表された政府税制改正大綱において、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の拡充・延長など、良質な住宅ストックの形成を図る観点からの措置が講じられました。

当協会としましても、流通新時代へ向けた国の施策を踏まえ、消費者動向や流通量に関する調査研究、市場の信頼を高めていく為の教育研修、消費者の関心・理解を深める為の広報などの活動を通じ、政策提言や情報発信をより一層強力に推し進め、不動産流通業の活性化に寄与すると共に、内需拡大の牽引役となるべく一層尽力してまいります。


■(社)住宅生産団体連合会会長 樋口武男氏

謹んで新年のお祝いを申し上げます。

昨年ほど「絆」という言葉が多く語られた年はなかったように思います。未曾有の災害からの復興は緒についたばかりですが、国民が心をひとつに力を合わせて、この難局を乗り切っていかなければなりません。
わが国経済は、長引く円高、デフレから脱せぬまま度重なる天災や事故の影響を受け、基幹産業が電力不安や天然資源の高騰を理由に海外移転の動きを加速するなど、勃興するアジアの成長を取り込む絶好のチャンスを迎えている中で、十分な成長戦略を描けぬまま停滞感の漂う状況で年明けを迎えております。

住宅産業界においては、「住宅版エコポイント」がエコ住宅への関心の高まりから人気を呼び、子育て世代の住宅取得者の負担軽減に大きな効果をあげている「フラット35S」とともに期限前に予定の申込数に達して終了いたしました。その他の租税特別措置などの住宅取得支援策が寄与して、今年度は84万戸程度で前年度比微増となる見通しで推移しております。

住団連としましては、震災後高まった安全安心と省エネルギーという国民的ニーズに応えるべく、エコポイントの延長や贈与税の非課税枠の拡大延長などを各方面へ要望してまいりました。その結果、第3次補正予算では住宅版エコポイントとフラット35Sが継続され、平成24年度の税制改正大綱では懸案であった固定資産税の軽減措置の延長、並びに長期優良住宅に係る特例措置の延長、さらに、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税枠の拡大、省エネ改修促進税制の創設等、様々な優遇制度の延長・拡大が認められました。

これらの施策による良質な住宅ストックの推進こそ、わが国が直面する「人口減少社会」「低炭素社会」「ストック型社会」という諸課題への対応策であり、厳しい経済状況が続く中、内需拡大、地域経済の活性化に貢献するものと確信しております。

今後「社会保障と税の一体改革」で、消費税の議論が活発化してくると思われますが、多重多岐にわたる住宅に関わる税に加えて、これ以上国民負担が増加することのないよう、特段の措置を引き続き要望して参ります。

今年の干支、壬辰(みずのえたつ)には、長期的視野に立ち、困難に耐えて着実に目標を達成する年という意味があります。

住団連としましては、昨年の震災を踏まえて安全・安心という基本に立ち、住宅は国民皆で守るべき「社会的資産」であるという考え方を啓発していく活動を継続してまいります。同時にそれに相応しい耐久性や耐震性能を備えた、しかも環境・エネルギー問題を解決する「ゼロエネルギー住宅」の着実な普及促進に努力してまいりたいと思います。

一層のご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げますとともに、皆さまにとって本年が良き一年になりますことを祈念いたしまして年頭の挨拶とさせていただきます。


■(社)日本ツーバイフォー建築協会会長 生江隆之氏

平成24年の初春を迎え、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

会員の皆様には、協会運営に当たり、日頃よりご協力いただきまして誠にありがとうございます。

平成23年度の住宅着工戸数は、4月から8月かけて前年を上回るものの、9、10月に大幅なマイナスとなり、年度の累計では80万戸台半ば程度と予測されております。

この様な状況のもと、ツーバイフォー住宅の着工戸数は10万戸に迫る勢いで、前年同様、住宅着工戸数の約12%の占有率となる見込みであります。今後も、本部支部と十分に連携し、会員の皆様の満足向上に向けた活動を行い、会員増加と合わせて、ツーバイフォー住宅の裾野を拡大したいと思っております。

平成16年に国土交通大臣認定を取得した耐火構造建築は,累計約1,700棟を数え、着実に着工棟数を伸ばしており、市場が拡大傾向にあります。なかでも福祉施設はこの2、3年増加し、ツーバイフォー工法の優れた特性を充分発揮して高い評価を得ております。本年も引き続き、大型建築物分野の市場開拓に向け、技術の向上と関係者との連携強化を図りたいと考えております。

ツーバイフォー住宅はオープン化以降の累計着工戸数は昨年6月に節目の200万戸に到達しました。これは、行政の方々のご支援ご指導を頂き、会員の皆様方が地道な努力を積み重ねた結果であると感謝しております。東日本大震災を顧みて、国民にとって安全、安心で良質な住宅が必要であると再認識いたしました。会員の皆様と共に高品質、高性能なツーバイフォー住宅の普及に取り組み、次なる節目の300万戸を目指してまいりたいと決意を致しております。

会員各社の皆様に満足していただける協会となるように活動をしてまいりたいと存じますので、皆様のご指導、ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。


■(社)プレハブ建築協会会長 和田 勇氏

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

未曾有の大災害をもたらしました東日本大震災をはじめ、昨年は多くの自然災害に見舞われ、まさに国難と言うべき一年でございました。ここに改めまして犠牲者の皆様に哀悼の意を表しますとともに、多くの被災者の方々に心からお見舞い申し上げます。被災地の一刻も早い本格的な復興を望んでやみません。

当協会では、震災発生の翌日に「災害対策本部」を立ち上げ、岩手・宮城・福島各県に「県建設実施本部」を設置し、緊密な連携と情報の共有化を図り各県の要請に迅速に対応出来る体制を整えました。9月末までに総計4万3,206戸の仮設住宅を建設し、また10月からは東北3県および長野県におきまして断熱材の補強、窓の二重化、風除室など寒さ対策工事にもあたっております。9月に西日本から北日本を襲った台風12号の記録的大雨による水害におきましても、和歌山・奈良両県に101戸の仮設住宅を供給致しましたが、昨年は災害時の応急仮設住宅建設における当協会の役割を改めて認識する一年となり、また多くの課題も見つかりました。建設に従事された会員企業の皆様には改めて感謝申し上げると共に、災害時に、被災者に対し一刻も早く、そしてより質の高い仮設住宅を供給する体制づくりに今後も努めて参りたいと思います。

業界全体では、4月から8月までの回復基調から一転、9月以降は住宅エコポイントの終了に伴う駆け込み等の反動もあり、着工戸数について前年比割れの状況が続きました。しかしながら、第3次補正予算による「フラット35Sエコ」の誕生や住宅エコポイントの再開に加え、昨年末の「平成24年度税制改正大綱」では、多くの期限付き特例措置の延長・拡充等が掲げられており、購買意欲を喚起するものと期待しています。一方、消費税引き上げの議論が本格化して参りましたが、多重多岐に課税されている住宅税制の現状も踏まえ、住宅購入者の負担を軽減すべく、本年も関係機関に働きかけて参りたいと思います。

住宅において良質なストック形成とその活用が一層求められる中、昨年行いました当協会の「住生活向上推進プラン」の見直しはその点にフォーカスするものとなりました。環境分野では「エコアクション21」の活動実績を踏まえて「エコアクション2020」理念、行動指針、環境行動目標を策定しました。また新たに供給する住宅のみならず、これまで供給した住宅の質的向上・流通促進を目指し、従来のリフォーム分科会の後継として「既存ストック分科会」の立ち上げを予定しております。
震災以降、より耐震性の強い住宅が求められるようになり、また環境配慮という点においても、省エネのみならず太陽光発電や燃料電池による「創エネ」、蓄電池による「畜エネ」への関心も高まっております。住宅が災害から身を守るためのシェルターとして強く意識されるようになったわけですが、それは単に身体を守るだけでなく精神的な負担も軽減する『心のシェルター』であることも今回の震災を通じて考えさせられました。そのような住宅に対する意識の変化に応えるべく、質の高い住宅を提供していくことが当協会の務めであると考えております。会員の皆様におかれましては、引き続きご支援ご協力頂きますようお願い致します。

最後になりましたが、年頭にあたり今年一年の会員各位のご健勝、ご多幸を心よりお祈りいたしまして、新年のご挨拶とさせて頂きます。


(社)日本住宅建設産業協会理事長 神山和郎氏

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
東日本大震災において被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げますと共に、一日も早い復興をお祈り致します。

欧州の財政・金融危機を背景とした世界経済の減速は、円高や株価下落の長期化を招き、企業活動の低迷、雇用情勢、個人消費に一層の悪影響を与えると共に、金融機関の貸出しの収縮も懸念され震災による打撃から回復に向かいつつある我が国経済にとって大きなリスク要因となっております。

住宅・不動産市場においては、震災・原発問題による購入マインドの冷え込みから脱出しつつあるとの見方もありますが、雇用や所得環境が不安定な中にあって、新設住宅着工はリーマンショック後の大幅な減少からの回復をみることなく依然低い水準にとどまっております。また経済活動の浮沈を示す地価水準は一部の地域で上昇・横ばいが見られるものの総じて下落傾向が続いております。

一方、平成24年度税制改正においては、新築住宅に係る固定資産税の軽減措置の延長、住宅取得資金に係る贈与税の拡充・延長、土地及び住宅の取得に対する不動産取得税の特例措置の延長等が講じられましたことは、新しいフラット35Sエコの金利優遇措置及び住宅エコポイントの再開と相まって住宅市場を下支えするものと大きく期待されています。

さて、現下の最大の課題は、消費税率の引上げ問題です。昨年6月に「社会保障と税の一体改革」の成案がとりまとめられ、本年の通常国会に消費税関連法案として提出が予定されていますが、消費税率引上げに伴う住宅消費税の負担軽減をいかに実現するかという重要な局面を迎えております。

住宅に係る消費税については、「(1)住宅価格は高額であり、長期にわたって所有する資産に対して、取得時に一括して課税されるため、極めて重い負担になっている。(2)住宅の取得時には、消費税をはじめ不動産取得税、登録免許税、印紙税、固定資産税等の税が多重に課されている。(3)諸外国では、軽減措置など政策的な配慮がなされている。(4)現行以上に税率を上げると、特に中低所得者層にとっては、住宅の建設、取得が困難となる。(5)その結果、住宅着工が更にダウンし住宅関連産業の衰退や雇用の喪失など、復興を支える日本経済の成長に大きく影響を与えることとなる。」などの観点から、住宅には少なくとも今以上の負担を課さない特別な配慮が必要であり、是非とも的確な負担軽減が措置されるよう希望するものです。

加えて、昨年秋以降、独立行政法人住宅金融支援機構の組織形態の見直しの議論が行われています。国に代わる機関として、民間ではできない業務を担っている住宅金融支援機構が特殊会社に変更となった場合、住宅ローン金利の上昇や融資審査が厳しくなることが予想され、円滑な住宅資金の借り入れが困難になるのではないかと危惧されております。

本年も住宅・不動産市場を取り巻く環境は厳しいものがありますが、いうまでもなく安全・安心で良質な住宅を供給することは、われわれ住宅供給事業者の責務であり、国民の豊かな住生活を実現するため、業界を取り巻く諸課題に全力で取組んでまいる所存です。

最後になりましたが、皆様方のますますのご発展とご健勝を祈念申し上げまして、新年のご挨拶とさせていただきます。


■(財)日本賃貸住宅管理協会会長 三好 修氏

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年の東日本大震災により被災された皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。東日本大震災は、従来の被災者支援のあり方に再考を強いる大災害でした。このような中、賃貸住宅が『みなし仮設住宅』として活用されたことは、被災者の方々にとってせめてもの救いであり、国民の住生活において賃貸住宅の果たす役割が増大していることと合わせ、賃貸住宅の重要性が再認識された出来事でもあったと思います。

しかしながら、全国の市況を見てみますと、空室率の上昇、礼金など一時金の減少、リフォーム投資の必要性、相続税増税など、オーナーの皆様には大変厳しい状況が続いています。こういう時代こそ、賃貸住宅管理業者はより質の高い業務遂行によってオーナーの皆様をサポートし、借主の皆様に安心・安全・快適な住環境を提供することが、賃貸住宅市場の整備・発展につながるものと考えます。

そこで当協会は、空室対策セミナーを始め、相続に関して的確にアドバイスできる等の人材育成研修、部屋を借りようとする消費者に公正な物差しを提供する「日管協めやす賃料表示」や今般改訂される国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」の更なる普及啓蒙を通じたトラブルの未然防止を、そして特に本年は国土交通省が昨年12月に施行した「賃貸住宅管理業者登録制度」の普及推進に注力し、賃貸住宅市場の整備を図ってまいります。この制度は、国に登録した管理業者にルールを遵守させることで管理業務の適正化を図り、オーナーと借主の利益を守ることを目的としています。具体的には、登録した管理業者は管理受託契約を締結するとき、オーナーに契約の重要な事項を事前に説明しなければならない、どのような管理を請け負っているかを借主に通知しなければならない等の義務を負います。登録は義務ではなく任意であり、登録するか否かはそれぞれの管理業者が選択することになりますが、制度の趣旨に鑑み、当協会は「管理業者はすべて登録するように」と会員に強く呼びかけてまいります。

当協会は本年も、公益を目的とした事業活動により、賃貸住宅市場の整備と健全な発展のために全力を尽くします。
皆様方の今後ますますのご健勝をお祈りし、新年のご挨拶とさせていただきます。


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 このほかの業界団体トップのコメントは1月5日のニュースをご覧ください。


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