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東京・大田区の木賃アパートを1棟リノベーション/ブルースタジオ

「やよい荘」1階室内。キッチン下に空間を設けることで、住み手が自由にアレンジできる余地を残している。右に見える箒は、神奈川県・中津の「中津箒」(作者:吉田慎司氏)。全居室にあらかじめ設置している
天井は建設当初からある松の梁をあえて見せて、木の味わいを空間とした。鴨居より上は濃いブルー系の塗料で塗装
通常より幅の広いサッシュは同物件オリジナル。それを生かすべく、1階は専用庭を設け、さまざまな草花を植栽。コーディネートを東京都渋谷区にあるフラワーショップ「kusakanmuri」が手がけている

 (株)ブルースタジオは12日、1棟リノベーションした木造賃貸アパート「やよい荘」(東京都大田区、総戸数4戸)の記者向け内覧会を開催した。同社では、10数年前から木賃アパートが密集するエリアのスラム化や高齢化を避けるため木賃アパートを再生しており、今回はその第8弾プロジェクト。

 「やよい荘」は、東急池上線「洗足池」駅より徒歩8分に位置する、敷地面積215平方メートル、1973年築の木造2階建てのアパート。オーナーは、かねてより同社と付き合いがあり、2008年10月に老朽化した同物件の再生について相談。以来、準備を進め、11年10月に着工した。工費は坪80万円、工期は3ヵ月半、竣工は12年3月。

 建物は、構造の状態を調査し、耐震補強を実施。それに伴い、外壁・天井面の大部分に断熱材としてグラスウールを充填した。

 居室は、既存の幅の広い窓サッシュを活かすため、その窓から見える専用庭(1階住戸のみ)には、シンボルツリーなどを植栽。また、2階居室は天井を抜いて、木造在来工法によくある松の丸太材の梁をあえて現すことで味わいと広がりをもたせた。鴨居より上は濃い色で塗装することで、サッシュのラインとともに水平のラインを強調、部屋全体の統一感を出している。押し入れがあった部分は居室床を拡張し、収納としてはもちろん、机やソファーを置いたり、入居者が自由にアレンジできる空間とした。
 水回りはすべて刷新。もともとトイレや収納があったスペースは、間仕切り壁を外して、ウォークインクローゼットとして再生している。

 専有面積36.67平方メートル、間取りは1LDK。賃料は9万6,000~9万9,000円(共益費5,000円、改修前は4~7万円)。4戸すべて入居が決まっている。入居者は全戸、30歳代前半のカップルで、内覧会の場で即決だったという。同社専務取締役・クリエイティブディレクターの大島芳彦氏は「20~30歳代を中心に生活に対する価値観が変わってきた。歴史の質感を楽しむ感性がある。また、オーナーからも資産運用方法の一環としてリノベーションに注目が集まっている」と述べた。


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