国土交通省は16日、建物の質の確保・向上に向け、建築基準法などの建築法体系全体の目指すべき基本的方向について検討してきた「建築法体系勉強会」(座長:久保哲夫東京大学教授)の検討結果を公表した。
勉強会では、建築規制等が、事故・災害の発生等に対応する形で法令改正を重ねてきた結果、複雑でわかりにくいものとなってしまっていること、行政庁の政策判断や地域住民の意向等、地域の実情を建築規制に反映させる仕組みが不十分であること等を指摘した。
建築確認検査制度については、特定行政庁・民間審査機関における技術的審査能力の確保、専門分野等の現行審査体制では対応困難な分野への審査能力向上等を課題として挙げたが、構造計算適合性判定の対象の見直しや確認とのワンストップ化の必要性については、賛成派と慎重派で意見が分かれた。
資格制度については、意匠・構造・設備の分野間の調整が的確になされず、設計図書間の不整合などの不備発生や確認申請図書と施工内容の不整合等、施工段階の品質管理が必ずしも的確に実施されていないことなどを指摘した。
これらの課題を踏まえ、勉強会では(1)わかりやすい規制体系への移行、(2)実効性が確保され、効率的な規制制度への見直し、(3)専門家の資質確保・向上に資する資格制度への見直し、(4)所有者等が的確に判断できる法体系への見直し、という基本的方向を示した上で、建築規制項目・内容(基準体系)の再検証、整備段階に係る規制手法、資格制度の再検証など、解決に向けての具体的な検討課題を挙げた。
また、指摘された多くの課題に対応するために、「建築規制などの目指すべき基本的方向と関連検討課題を踏まえ、今後は建築実務者や利用主体などの関係者も交えて建築法体系の具体的な見直し・再編等を検討すべきである」と明記。不適切な住宅リフォーム工事の防止に向けた建設業法などの関係法令見直しや、不良化した建築ストックの解消に向けての税制見直しなど、「建築規制等以外の仕組みについても、見直しが必要との指摘があった」とし、必要な検討を併せて進めるよう努力すべきである、としている。