国土交通省は、2011年11月に第1回を開催して以来計4回にわたり実施してきた環境不動産懇談会(座長:野城智也東京大学生産技術研究所所長、教授)がとりまとめた提言を発表した。
環境不動産懇談会は、オフィスビル等の収益用不動産を対象に、投資・金融、オーナー、不動産仲介など立場の異なるさまざまな市場参加者により構成。環境性能が高く良好なマネジメントがなされている環境価値の高い不動産(環境不動産)が適正に評価される市場の形成と、持続可能な不動産ストック形成に向けての方策について議論をすすめてきた。
情報の可視化・流通促進の観点からは、環境性能評価の総合的なラベリングが日本のCASBEE、アメリカのLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)、イギリスのBREEAM(Building Research Establishment Environmental Assessment Method)等、国内外で多種多様であることから、比較が困難であり、テナントによる認知度も低いこと。そしてオーナーにとっては認証取得に時間・手間・費用がかかるため、ラベリングの普及が進んでいない現状を指摘。現在あるレーティングの十分な活用・普及と、今後議論されるであろう世界共通指標との整合等が重要であると言及した。
また、オーナーの立場では、情報の効率的な計測・保管の推進、必要に応じての可視化・提供が、投資・金融、テナント、不動産仲介の立場では、環境不動産の選好・選別に向けた情報の積極的な活用が、それぞれ求められている、とした。
既存ストックの対応とテナントの需要喚起による環境不動産の拡大の観点では、適正な費用分担・利益分配によるwin-winの新たな枠組みづくり、中小ビル・地方部を初めとした環境対応の推進、テナントニーズの吸い上げと新規需要開拓、インセンティブによる需要の後押し、テナントとしての公的機関による環境不動産への入居推進が必要である、と指摘している。
今後の展開については、各市場参加者においては経済活動を通じて、持続可能な社会への転換へ向けた最善の取り組みを推進すること、行政などの公的機関においては、民間の自主的な取り組みを後押しするため、官民連携のもと必要な検討を進めていくことが求められる提言。
その上で、各市場参加者が幅広く連携・協力しあう体制のもとに具体的な検討を進め、前進していくことが重要であり、これによりわが国の不動産ストックの持続可能な社会基盤への転換が進むことが期待される、と結んでいる。