三井不動産(株)は、鹿島建設(株)と共同で、長周期地震動の揺れを大幅に軽減する超大型制震装置TMD(Tuned Mass Damper)を開発。新宿三井ビルディング(東京都新宿区)に設置する。
同装置は、超高層ビルの風揺れ対策に利用していた振り子式の錘を発展応用し、超高層ビルの地震の揺れ対策として実用化したもの。屋上に、ケーブルと油圧ダンパーで支持された巨大な錘を設置。錘の重量は、風対策のTMDの60tを遥かに上回る300tもあるため、既存柱に荷重を直接伝える架構工法も同時に開発した。一般的なオイルダンパーを窓際等に設置する制震装置と違い、居室内の有効床面積を減らさず済むほか、居室内の工事がないため、テナントの執務に影響を出さずに済むメリットがある。
新宿三井ビルには、同装置を屋上に6台設置するほか、低層部の倉庫内に、オイルダンパー48台を併設。総工費は、約50億円。同装置を導入することで、長周期地震動を約6割軽減できるほか、東日本大震災と同じ地震がきた場合、床の移動量を100cmから40cmに、直後の揺れの収束を120秒から20秒に短縮できる。また、台風時の揺れも大幅に軽減できる。今年8月から工事を始め、2015年4月末に完成予定。
29日会見した、三井不動産ビルディング本部運営企画部長の丸山裕弘氏は「東日本大震災により、新宿三井ビルは、他エリアのビルよりも大きな揺れを確認したため、震災直後から制震対策を強化するための方策を検討してきた。従来のオイルダンパーによる方法も数十種類検討したが納得ゆくものができず、一から考えた。この装置を使えば、既存ビルが最新鋭の超高層ビル並みに耐震性を実現できる」と語った。ただし、今後の導入については「他の自社ビルは、東日本大震災でも揺れが小さかったり、階数も低いなど設置条件を満たさなかったりするため、今のところ導入の予定はない」とした。