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京町家を「スマートハウス」に。15年1月から居住実証実験/京都市

「エコリノベーション京町家」外観
窓ガラスはすべて、複層ガラスの木製サッシを採用。エネファームは、坪庭の風情を損なわないよう、燃料電池と給湯タンクとを分離して設置した
床下に通気空間を確保し、エアコンを設置。冬場は温風を流すことで底冷えを防ぐ。夏場は、玄関下と庭下の通気口から風を通し、熱気を逃がす
火袋にトップライトを設け、採光と通風を確保。夏場はエアコンからの冷気を、トップライトからの風で送り込む

 京都市は、都市型住宅の環境性能向上に向けた改修ノウハウや省エネ効果のデータを蓄積するため、京都市下京区に実在する京町家のエコリノベーションを実施。2015年1月から、居住実証実験を行なう。

 同市は、産学公の連携による「スマートシティ京都研究会」を10年に設置。省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの普及拡大に加え、京都のまち並みと文化を継承する京町家を「次世代環境配慮型住宅」モデルとして再生する活動を展開している。今回のプロジェクトも、その一環として13年夏に企画がスタートした。

 京町家のリノベーションを手掛ける(株)八清が物件提供とリノベーションを、冨家建築設計事務所がスマートリフォームに係る企画設計を実施。(株)京セラコーポレーション、(株)日新システムズが太陽光発電システム、HEMSなどの機器提供を行なった。

 八清が提供した京町家は、築70年以上と思われるもので、2階建て、延床面積は約84平方メートル。京町家最大の弱点である断熱性能の低さを克服すべく、ベタ基礎内部に断熱材を敷き、天井には厚さ30cmのグラスウールを、内壁にも断熱材を敷き詰めた。窓ガラスはすべて、複層ガラスの木製サッシを採用。柱を重ね、その厚み分外壁の塗り壁を厚くし、断熱材を充填した。これらにより、次世代省エネルギー基準並みの断熱性能を確保している。

 床下に通気空間を確保し、エアコンを設置。冬場は温風を流すことで底冷えを防ぐ。夏場は、玄関下と庭下の通気口から風を通し、熱気を逃がす。また、火袋にトップライトを設け、採光と通風を確保。出格子と縁側も改修し、室内外の温度差を緩和する調整空間として機能させる。

 一方、エネルギーを生み出す手段として、太陽光発電システム(2.28kW)を屋根上に設置。家庭用燃料電池システム「エネファーム」と併用し、昼間時の買電量を極力抑える。エネファームは、坪庭の風情を損なわないよう、燃料電池と給湯タンクとを分離して設置した。また、HEMSにより、電気・ガス使用量の見える化を図る。

 リノベーションコストは、2,000万円台後半。このうち、エコ関連の改修コストは、参画企業からの設備機器の無償提供分を除き約500万円。

 同住宅は、14年8月30日~15年1月末まで「エコリノベーション京町家」モデルハウスとして公開。同時に、11月末まで居住実証実験に協力してもらえる購入希望者を、八清が募る。実証実験では、同じような家族構成を持つ家庭との間で、光熱費を比較。省エネルギー性能を1年間にわたり確認していくほか、未改修の隣住戸に温湿度センサーを設置し、住戸内温熱環境のデータ比較も行なっていく。なお、販売価格は4,380万円。

 22日に行なわれたモデルハウス開所式で挨拶した、スマートシティ京都研究会座長の西川禕一氏((公財)応用科学研究所理事長)は「都市部の伝統的なコミュニティを生かしたまちづくりを検討する中で、京町家に注がれた先人の知恵と技と、エネルギー効率を図るための最新技術をコラボして、新たな形で実用化できないかを考えた。年々減少する京町家の伝統的なまち並みを守り、育て、次代に引き継ぐことは、われわれに課せられた課題。京都は、地場産業を生かして新たなイノベーションを実現し新たな産業を育んできたが、住宅分野でも新たな産業が育つことを期待したい」などと抱負を語った。


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