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投資家・事業者向け1棟リノベ事業提案を積極展開/三井不動産リアルティ

「ジ・アッパー・レジデンシーズ南青山」改修済み住戸(専有面積165平方メートル)内部。来客の多い富裕層をイメージして、PP分離を徹底した間取りに改修。水回りの設備機器も、最新のものに一新した
外観は、複数のデザイナーを登用し、高級マンションにふさわしいファサードに改修。エントランスや建物正面に特徴的なアールスクリーンを設えた
未改修住戸。フローリングや設備機器が陳腐化していた。自分で改修したいというニーズに応え、そのままの状態での販売も行なう

 三井不動産リアルティ(株)は、2009年度に開始した「1棟リノベーション区分販売事業」の積極展開を図る。

 同事業は、いわゆる「買取リノベーション再販」ではなく、都心部でのマンション事業を検討するディベロッパーや投資家を対象に、中古マンションの1棟リノベーション事業を物件取得から商品企画、リフォーム、販売までパッケージで提案するもの。同社は、コンサルフィーと販売手数料から収益を得る。リノベーションは三井不動産リフォーム(株)が、管理は三井不動産住宅サービス(株)が手掛ける。

 都心好立地で質の高い高額マンションは、新築・中古とも供給量が少ないこと、富裕層の実需に加え国内外の投資家や相続対策などニーズが底堅いこと、販売価格の景気変動に対するボラティリティが小さいことなどを投資家やディベロッパーにアピールしていく。

 主な改修対象は、バブル期に大量に供給された、都心5区に立地する高級賃貸マンション。大規模修繕等大掛かりな改修を迎える物件を、それらの修繕に加え、外観・外構、共用部をブラッシュアップ。賃貸入居者が退去した住戸から、陳腐化した設備機器の入れ替えや、間取りの変更を実施。付加価値を付けて販売していく。販売開始時点から、新たに30年間の長期修繕計画を策定。建物構造への瑕疵保険と設備保証も導入する。

 最新販売物件の「ジ・アッパー・レジデンシーズ南青山」(東京都港区、総戸数41戸)は、地下鉄銀座線「表参道」駅徒歩6分に立地する、築22年の外国人向け賃貸マンションを全面改修したもの。高級分譲マンションにふさわしい外観とするため、複数のデザイナーを入れてファサードやエントランスを再構成。専有部も、来客の多い富裕層をイメージし、天然石張りの玄関ホールに改修し、間取りもパブリックゾーンとプライベートゾーンを分離。水回りは最新設備に更新、一部のサッシは複層ガラスとした。
 11月1日から会員限定で販売するのは3戸で、専有面積115~165平方メートル、販売価格は1億9,800万~3億5,000万円。専有部改修費は、約2,000万~4,000万円。今後の改修住戸は、オーダーメイドにも対応。要望があれば、未改修のままの販売も行なう。

 同事業業績は、13年度が取扱高139億円・販売戸数59戸(販売価格:平均1億7,900万円)だったものの、14年度は9月末までで取扱高121億円・販売戸数45戸(同:1億7,800万円)と伸長している。今後も、年間10棟をめどに改修・販売を進めていく方針。

 28日会見した、同社執行役員の石井雄二氏は「当社は都心のプレミアムマンションを数多く販売し、そのニーズを熟知している。いわゆる3A地区に大量に供給された賃貸マンションは、設備の老朽化やニーズに変化で、オーナーは苦労している。ディベロッパーも建築費の高騰や用地難で事業環境が厳しい。これらのニーズを捉え、不動産流通業の視点で物件仕入れ、企画、加工、販売まで一気通貫で提案する。古い物件を顧客ニーズに合わせた新たな付加価値を付けて再生し、流通させるという事業には当社の強みが活かせるし、社会的意義も大きい」と抱負を語った。


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