(一財)建築環境・省エネルギー機構(IBEC)、および(一社)日本サステナブル建築協会(JSBC)は25日、建築会館ホールにおいて、世界グリーン建築評議会(World Green Building Council、略称WGBC)のアジア支部である、アジア太平洋地域ネットワーク(Asia Pacific Regional Network、略称WGBC・APN)の会議が日本で開催されることに合わせ、アジア地域におけるグリーン建築に関する課題や対策を共有するシンポジウムを行なった。
IBEC理事長の村上周三氏による、2002年に創立したWGBCと、今回のシンポジウムの開催主旨を説明する主催者挨拶に続き、ヨーロッパネットワークおよび会員マネジャーのDominika Czerwinska氏が、来賓挨拶を行なった。同じく来賓者の国土交通省住宅局局長の橋本公博氏は、日本政府が進めるグリーン建築に関する取り組みについて説明しつつ、「今後は諸外国でも行なわれている省エネ基準の適合の義務化に関する規制を立て、普及の一歩を政府側からも踏み出していきたい」と述べた。
続いて、建築家で東京大学教授の隈 研吾氏が「場所の力」、ブリティッシュコロンビア大学教授のRaymond J Cole氏が「Changing Performance Expectations:towards Regenerative & Net-positive outcomes」と題した基調講演を行なった。
隈氏は国内外で手掛けたその土地の自然の力を最大限に生かした建築物を写真とともに紹介。日本と中国で話題となった「Great (Bamboo)Wall」の「竹」に代表されるように、その場所(土地)にある素材を生かし、自然を敬い一体化して作っていく建物の魅力を紹介した。
Cole氏は将来の建築への方向性は、グリーンではなく「Regenerative(再生)」であると表現。1970年代から続く環境への取り組みの限界論について触れながら、「自然からの恩恵物は縮小傾向にある現在、脱物質化が大きな問題。それを実現化していくのは、Collaborative economy(共有する経済)である。また、グリーン建築のパフォーマンスとプロセスを分けることも大事」などと述べた。
「アジア・太平洋におけるグリーン建築の推進」を議題にしたパネルディスカッションには、APN地域マネジャーのMann Young氏、香港グリーン建築評議会副議長のConrad Wong氏、オーストラリアグリーン建築評議会アドヴァカシー・ディレクターのKaty Dean氏、シンガポールグリーン建築評議会ゼネラルマネジャーのYvonne Soh氏、(株)日建設計執行役員の山梨知彦氏が登壇した。モデレーターには、建築家で東京都市大学名誉教授の岩村和夫氏があたり、活発な議論がなされた。