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「マンション敷地売却制度」の有用性についてセミナー/旭化成不動産レジデンス

懇談会の様子

 旭化成不動産レジデンス(株)マンション建替え研究所は4日、マスコミ向けに第4回目となる「高経年マンション再生問題メディア懇談会」を開催した。

 第1部では、同研究所主任研究員の大木祐悟氏が、2014年12月24日に施行された「改正・マンションの建替えの円滑化等に関する法律(マンション建替え円滑化法)」により新たに可能となった「マンション敷地売却」を取り上げ、制度改正で変わった点や具体的手続きについて解説した。これまでとの大きな違いとして、オフィスビル等、マンション以外の建物に再建することが可能になった点や、従来では対応が困難であった場合でもこの制度を使って建て替えが可能になることがある点などを挙げた。

 続いて、戎・太田法律事務所の戎 正晴弁護士と大木氏をパネラーに、施行されたことで見えてきた実務上の課題についてパネルディスカッションを実施。戎氏は、組合を設立して、敷地売却事業という中で売却手続きが出来る点が非常に画期的であることを強調。これにより、区分所有者の持分が一旦、組合の単独所有になり、ひとつの土地の所有権になるため売却がスムーズになることを解説した。ただしその一方、組合所有の段階で区分所有者に資金を分配する必要があるのに対し、売却(資金回収)までに時差があることから、事前の計画によっては資金ショートの可能性がある点を指摘した。
 また、制度利用には、耐震性不足の認定を受けることが前提となるが、耐震診断に必要な設計図書を紛失しているマンションが相当数あり、新たに設計図書を用意するには何千万単位の金額が必要になること、現在の制度は一棟建てのみの適用で、団地での適用は想定されていないことなどを問題点として挙げた。
 さらに、資産の移転が複数回に渡ることで、税務上の課題として、ケースによっては現在の買い換え特例適用に該当しない場合もあり、思わぬ税金の支払いが発生する可能性など示唆した。

 最後に制度の特徴として頻繁に取り上げられる「容積率緩和」について、「1.5倍になるという話が独り歩きしている。容積率以外の『高さ』、『日影規制』などが緩和されるわけではないので理論上、容積率が緩和されたとしても実際には使えないケースが出てくる」などと安易な考え方に注意を促した。

 また、大木氏は今度、同社がこの制度を積極的に使うかどうかについて、「オフィスビルなどマンション以外に建て替えする場合は、この制度を使うしかないが、マンションに建て替える場合はいろいろな選択肢の内の一つとして考えている。管理組合の意向もあるが、状況を見て、この制度の方が他の手法より手続きが簡易になるなどのメリットがある場合には選択する」と述べた。

 続いて第2部では同研究所による「高経年マンションにおける区分所有者とコミュニティの高齢化について~限界集落化する高経年マンション~」調査の結果について報告した。調査結果については、こちらのニュースを参照。


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