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「公的不動産の活用事例と課題」をテーマに議論/RETIO

 (一財)不動産適正取引推進機構(RETIO)はこのほど、「第十回不動産再生研究会」の議事録を公開した。同研究会では、喫緊の課題となっている不動産の再生をテーマに、有識者からのヒアリングを通じて、不動産再生を妨げる諸問題およびその改善策等について、2014年1月から、月に1回、幅広く議論している。

 今回は、三井不動産(株)不動産ソリューションサービス本部公共法人室長の財間俊治氏、および同室主査の岡本 修氏が、「ディベロッパーの視点からみた公的不動産の活用事例および課題の整理」をテーマに、同社の取り組み事例について説明し、意見交換を行なった。

 まず、PFI 事業の事業費の回収方法や事業累計など、PFI事業の概要について説明。事業費の回収方法は大きく分けて、施設を整備もしくは運営する事業者に対し公共がその対価を払う「サービス購入型」のほか「独立採算型」、その混合型があり、内訳としては、サービス購入型が72%、独立採算型が4%であることや、事業件数は1999年から2013年度の15年間で日本国内で440件のPFI事業がなされており、総事業費で4.3兆円という規模であることなどについて触れた。
 事業類型については、民間が建て、民から官に所有権が移り、民が運営するBTO(Build Transfer Operate)方式、民間が建てて運営し、オペレーション期間終了時に官に所有権を移すBOT(Build Operate Transfer)方式の2 つについて解説。現在日本で行なわれている多くの方式は、BTO方式であり、その理由として、官が所有している限り固定資産税が土地、建物ともかからないため固定費が安くなることを指摘した。

 同社の取り組みとしては、ポジティブな事例とネガティブな事例を挙げて説明。
 ポジティブな事例としては、「神宮前1丁目プロジェクト」(JR線「原宿」駅近くの東京都が保有する土地に、警察の施設と、余剰地に民間活用施設、収益事業施設をセットで開発するという事業)を紹介。建築コストを含め入札金額が安ければ安いほどよいとされていたPFI事業において、単純にコストを安くするのではなく、総合的なまちづくりという点が評価されたことなどを挙げた。そのほか、民間が取得する不動産の流動化を認めた事例として「南青山1丁目団地建替えプロジェクト」についても紹介している。
 一方、ネガティブな事例としては、定期借地契約の中に「差し押さえ条項」がある場合や、事業制限としての転売・転貸の禁止項目に関する事例を挙げている。

 最後はまとめとして、PFI事業で民間の知恵と資金を使うことに関し、マーケットリスクを民間に移行する場合は民間側がある程度コントロールできるようにすること、また、そこを全部官が持つ場合は、民間はリスクを取れないので民間が出す費用を債権のように回収できるようにすることなどの必要性を強調した。

 なお、議事概要については同機構ホームページで公開している。


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