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低未利用不動産ストックの再生へ、不動産会社向けガイドライン/国交省が検討会

 国土交通省は1日、「不動産ストック再生・利用推進検討会議」(座長:早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授・川口 有一郎氏)の初会合を開催した。

 不動産ストックの再生・利用を効率的に進めるための資金調達、収益化、地域の不動産会社の企画、経営のあり方を検討していく。冒頭挨拶した同省土地・建設産業局建設市場整備課課長の小林 靖氏は「全国的に低未利用ストックが増えており、地方創生の観点からも効果的な活用が望まれている。多様な資金調達方法や地域の不動産会社が参加できる方法などの検討が必要。ガイドラインにより、ストック再生・利用にかかる道筋を示したい」と述べた。

 初会合では、不動産ストック市場の実態、成功事例の分析やプレイヤーの課題認識、資金調達方法について検討を行なった。

 事務局から、これまでの低未利用不動産ストック再生事例が発表され、地方都市の小規模アセットは資金調達のため、既存制度のアレンジや複数手法の組み合わせが必要であると指摘。地方都市での利用が可能なクラウドファンディングについてミュージックセキュリティーズ(株)代表取締役の小松真実氏が事例を踏まえて紹介した。同氏は、現行制度では不動産関連分野への活用が限定的であることから、地域の不動産会社の参入を促進するため、資本金要件を緩和することなどが必要と指摘した。

 また、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授の松村秀一氏は、これまでの低未利用不動産ストック再生の事例を通じ、利用の構想力や空間資源の発見、空間資源の「場」への変化の重要性を説明。(公社)全国賃貸住宅経営者協会連合会会長の川口 雄一郎氏は、賃貸ストックの有効活用のためには、改修履歴や投資情報、管理情報、滞納情報等を含めた住宅評価や担保評価が必要と訴えた。

 参加した委員からは「都市部と郊外では条件が変わってくるため、段階を踏んだガイドラインが必要」((公社)全国宅地建物取引業協会連合会専務理事・市川 三千雄氏)、「担い手の育成、非住宅の流動化、物件貸し出しに際してのインセンティブの付与、リノベーションの認知度アップがポイントになる」((一財)不動産適正取引推進機構総括主任研究員・井上雅夫氏)、「ファイナンスの前にマーケットの醸成が重要。利用用途のフレキシブル性を上げることが求められている。事業者が積極的に関与できる環境が必要」((一社)リノベーション住宅推進協議会会長・内山博文氏)といった意見が挙がった。

 10月に開催予定の次回会合では、不動産ストック再生・利用・管理などに携わる事業者の実態把握や小型案件等事例の成功要因を検討し、第3回(2016年2月)でガイドライン案を示した上、同年3月に地域の不動産会社向けのガイドラインを発表する予定。


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