国土交通省は8日、3回目となる社会資本整備審議会の住宅宅地分科会勉強会を開催した。住生活基本計画(全国計画)の見直しに向けた個別論点を整理するためのもので、今回は「住宅セーフティネット」について議論した。
勉強会では、臨時委員の岩田正美氏(日本女子大学名誉教授)、川口 雄一郎氏((公社)全国賃貸住宅経営者協会連合会会長)、児玉桂子氏(日本社会事業大学大学院特任教授)、永島恵子氏(東京都市警備局都営住宅経営部長)、瀬良智機氏((独)都市再生機構理事)が発表した。
岩田氏は、国政調査等や生活保護受給世帯の居住実態に関する調査結果を基に、「不安定居住」問題と被保護者の住宅について報告。路上生活者を生み出す場所として、労働宿舎が多いのが日本の特徴であると述べた。また、1995年と2010年の国勢調査の結果から、住宅以外に住む一般世帯の中で、「その他に住む人が増えており、年齢別にみると、特に70歳以上の高齢者が急激に増えているとし、「高齢者施設のみならず、さまざまな場所で介護や看取りの問題が発生している」と述べた。
川口氏は、住宅セーフティネットである公営住宅について、本来公営住宅が住宅セーフティネットとして機能すべきであるが、実際には、国や自治体の財政難により公営住宅が減少傾向にあること、また、借上公営住宅制度を導入しても、借上家賃が高いと財政負担となる自治体があることや、管理などの手間によりマンパワーが必要とされることから、取り組みが進んでいない現状について説明。今後の課題として、地域の事情に応じた住宅ストックの活用や、地域ごとの商慣習により異なる賃貸借契約ルールの統一化などの課題を挙げた。
児玉氏は、人口の高齢化とともに、認知症を持つ高齢者が増加していることを報告するとともに、福祉分野では、認知症高齢者における施策はさまざま展開しているものの、住宅分野においては認知症を考慮した取り組みがなされていないと指摘。高齢者が認知症となっても地域に住み続けられるために、今後10年の住宅施策の中で取り上げることが急務であると提言した。
さらに永島氏が都営住宅の現状と取組について、瀬良氏がUR都市機構における住宅セーフティネットへの取り組みについて報告した。
委員からは、「もう少し民間賃貸住宅を積極的に活用することを考えた方がよいのではないか」「住宅セーフティネットの対象となるボリュームを精査した方がよいのではないか」「不動産と福祉とを融合させ、地域に根差した施策を進める必要がある」「どこにどれだけ手厚くしなくてはいけないのか、また、入居したら終わりではなく、その先のことも考える必要がある」などの意見が挙げられた。
なお、次回分科会は9月30日に開催予定。