国土交通省は30日、OECD(経済協力開発機構)との共催で「都市における高齢化(Ageing in Cities)」日本語版発表会を開催した。
同報告書は、OECD「高齢社会における持続可能な都市の成長戦略」プロジェクトの最終結果として作成。高齢社会の課題に対応し、機会を最大限に活かすための分析や政策手法を政策担当者に提供することを目的としたもの。大都市圏における高齢化傾向の分析方法や、高齢社会が持続可能な都市の成長に与える影響、高齢社会のための成長戦略、さらに世界の都市で進む高齢社会の取り組みなどについて紹介している。
司会進行を、OECD公共ガバナンス・地域開発局持続可能な成長のための地域政策課長の佐谷説子氏が務め、檀上には国土交通省大臣官房技術審議官の清水 喜代志氏ら8人が登壇した。
冒頭で清水氏は「高齢社会の政策は新たな成長の機会であり、他の世代にとっても良いものを目指すものである。また高齢社会は長期的に推移するものであり、将来を見通した政策を描くべきである」などと述べた。続いて、OECD公共ガバナンス・地域開発局長のロルフ・アルター氏、三菱総合研究所理事長の小宮山 宏氏が日本の高齢社会における取り組みと今後の課題などについて述べた。
討論会では、OECD地域開発政策委員会副議長の押田 彰氏をモデレーターに、神奈川県知事の黒岩祐治氏、柏市長の秋山浩保氏、日立製作所役員待遇フェローの小泉英明氏、在日フランス大使館経済部参事官のマリック・アイトゥ=アイサ氏が、都市における高齢化をテーマにディスカッションを実施。
マリック氏がフランス都市部で進んでいる交通整備とバリアフリー化や高齢者と若者が同居するシステムを紹介すると、小宮山氏が日本で進む多世代の同居の取り組みを、黒岩氏が神奈川県野公団住宅の老朽化を受けて生まれた「健康団地」の発想について言及するなど、活発な意見交換へ進んだ。ディスカッションの最後には、ロルフ・アルター局長が「報告書の中にあるケーススタディを見ればわかるとおり、都市は高齢者のためだけでなく、多様な人のための器でなければならない」とまとめた。