(独)都市再生機構(UR都市機構)は6日、国土交通省の住生活月間の取り組みの一環として「平成28年度 URひと・まち・くらしシンポジウム」(東京会場)を開催、約600人が参加した。
同シンポジウムは、昨年度まで「UR技術・研究報告会」という名称で実施。前身の住宅公団発足から60周年、同会開催が今回で30回目の節目を迎えたことから、名称を「URひと・まち・くらしシンポジウム」に改め、内容も調査研究報告が主体だったものから、さまざまなテーマを共有・検討できるパネルディスカッションを中心としたものに変更した。
今年度のテーマは「人と地域をつなぐまちの再生」。同機構副理事長の石渡廣一氏は「当機構の事業において、ハードの工夫はもちろんだが、ソフト面でいかに地域とつなげたまちづくりを行なっていくか、それぞれの地域や住まいの特徴を生かした活性化をしていくかが重要。当機構が取り組む、団地再生、都市再生、震災復興支援どの事業においても人と地域をつなぐ観点が重視されている」と述べた。
都市再生をテーマとしたパネルディスカッションでは、(株)新建築社取締役『新建築』編集長の四万 裕氏をコーディネーターに迎え、同機構で再開発や団地再生に携わる担当者がパネリストとして登檀。大手町連鎖型都市再生プロジェクトや渋谷駅街区土地区画整理事業、赤羽台団地建替事業などを紹介。大手町や渋谷では、大規模プロジェクトを進める中、官民の中立な立場で緻密な調整を図ってきたこと、長期スパンを見据えながらもスピード感をもって展開してきたことなどを説明。建替事業では、居住者とのパートナシップの形成、団地内や地域との交流促進事例などについて触れた。
特別講演では、横浜国立大学名誉教授の小林重敬氏がエリアマネジメント、東京理科大学理工学部建築学科教授の伊藤香織氏がシビックプライド(都市に対する誇りや愛着)について解説し、両氏によるディスカッションを行なった。小林氏は「エリアマネジメントの中でも、特に地方都市の取り組みはシビックプライドとの接点が深い。エリマネを進める際のネットワーク構築の考え方もシビックプライドを持つための活動とリンクする」、伊藤氏は「マネジメントとユーザー視点と異なる観点ではあるが、いかに地域価値を増幅していくかなど、取り組んでいる内容は似ている」などと述べ、相互に関連性が高いことを示した。
UR都市機構との関連性では、小林氏は「長期スパンで考えなければならず、公共性にも関連してくるエリアマネジメントの主体、調整役としてUR都市機構が適している」、伊藤氏は「シビックプライドの活動を団地で展開することで、居住者はアイデンティティが持てるはず。また、より一層幅広い人が活動に関わりやすい体制があると良いのでは」と話した。