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テクノロジーの進化が及ぼす都市構造の変化についてシンポジウム/日本不動産学会

「新しい都市づくりに向け、イノベーションを取り込み、実験と失敗をいかに繰り返せるかが大切」と述べるPwCアドバイザリー合同会社パートナーの野田 由美子氏
パネルディスカッションの様子

 (公社)日本不動産学会は26日、(公社)都市住宅学会、資産評価政策学会とと合同で開催した2016年度秋季全国大会において、シンポジウム「テクノロジーの進化はまちと産業に何をもたらすのか?」を開催した。

 PwCアドバイザリー合同会社パートナーの野田 由美子氏が「日本の都市はどんな技術を使って、どんな問題を解決してきたのか?」と題し基調講演を行なった。
 近年のアジアにおける急速な都市化について、そのスピードはかつての日本の都市化のスピードに似ているとした上で、「日本は都市化に伴う渋滞、大気汚染、災害、廃棄物といった課題に対し、技術だけではなく、政策制度やファイナンスの仕組みをセットで導入し克服してきた。それらの経験はアジアの都市化にもおおいに参考になるだろう」と述べた。
 また、現在の日本では、テクノロジーの進化のスピードがあまりにも早いために、政策や制度が追いついていないと指摘。「今後は計画よりも実行していくことが重要な時代になる。新しい都市づくりに向け、イノベーションを取り込み、実験と失敗をいかに繰り返せるかが大切。行政も情報公開しながら企業、市民とともに取り組んでいくスタンスが必要」と持論を展開した。

 続いて東京大学大学院工学研究科教授の浅見泰司氏をコーディネーターに、野田氏のほか、国土交通省都市局長の栗田卓也氏、東京大学生産技術研究所教授の大口 敬氏らが登壇し、「技術革新はまちと産業に何をもたらすのか?」をテーマにパネルディスカッションを実施した。
 今まで別の物と捉えられていたテクノロジーと都市が、今後融合されることになり、それは都市構造だけでなく、人の働き方やライフスタイル、価値観の変化にまで影響を及ぼすだろうとパネリストの意見が一致。
 パネリストからは「その変化をどう進めていくのか、すでにでき上がっている都市をどうリフォームしていくのかが課題」「今後は効率性を求めるだけでなく、そのような時代において自分がどのように生き抜いていくのかを考える時代になるのでは」「テクノロジーの進化の早さに対応し思想、倫理観の再構築が必要」といった意見が挙げられた。


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