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不動産流通のあり方テーマにシンポジウム

シンポジウムの様子

 明海大学不動産学部は20日、不動産学シンポジウム「2020年不動産流通はどのように変わるべきか~都市と地方の不動産市場の実態と不動産評価のあり方~」を開催した。

 基調講演には、(公社)日本不動産鑑定士協会連合会会長の熊倉隆治氏および、(独)都市再生機構東日本都市再生本部まちづくり支援部長の細川忠政氏が登壇。
 熊倉氏は「中古住宅の価値評価が変わる~不動産鑑定評価の改革」をテーマに講演。これまで不動産鑑定評価における住宅(建物)評価はあまり行なわれていなかったが、既存住宅へのニーズが高まっている中、適切な残存耐用年数の算出等により既存住宅の鑑定評価を行なうことが重要であるとした。
 細川氏は「地方都市を変える~UR 都市機構のまちづくり支援の取組と展開」をテーマに、地方自治体に対するまちづくりサポートの手法などを紹介。これまでは実現可能なまちづくりのシナリオづくりや効率的な事業スキームの検討などを行ってきたが、ニーズの多様化に対応するため、地域ニーズの把握、マッチングの支援、利活用や整備などを行なうことが求められているとした。

 そのほか、既存マンションのリフォームが取引価格に与える影響、(公財)不動産流通推進センターの価格査定マニュアルデータからみた不動産評価の現状と課題などの研究成果が発表された。

 全国6大都市における06~16年の取引された既存マンションデータをもとにリフォーム実施有無の取引価格差率について検証、その内容を公表した。価格差率が最も高くなるのは、福岡市以外5都市で60平方メートル、福岡市で90平方メートルだった。所在地や面積にかかわらず、築年数が経過しているほど、また最寄り駅までの徒歩時間は長いほど、取引価格差率は高い傾向にあるとした。

 戸建て版の価格査定マニュアルの査定価格は市場での取引価格に反映されているのか、査定価格と取引価格に差があるのか、レインズデータを用いた検証結果を発表。同マニュアルを用いた場合、査定価格と取引価格はほぼイコールであることがわかった。しかし、市場全体におけるマニュアル利用率はまだ高いとはいえず、取引価格は物件を適切に評価しているとは言い切れないものが多いという実態も浮き彫りに。マニュアルの普及促進や買い手における適切評価価格の認知度向上が今後の課題であるとした。


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