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ストックを活用した居住支援のあり方を議論

住宅確保要配慮者等に向けた先進的な居住支援活動の事例報告も行なわれた

 国土交通省・厚生労働省は5日、JAカンファレンスホール(東京都千代田区)で、「平成29年度居住支援全国サミット」を開催。新たな住宅セーフティネット制度とこれからの居住支援をテーマに、研究者、行政担当者、実務家らが講演、ディスカッションを行なった。

 「ストックを活用した多様な居住支援」と題した基調講演で京都大学大学院教授・三浦 研氏は、高齢者居住施設における課題として、専門的介護を受けられる一方で入居高齢者の能力(主体性、就労)等は十分生かされているとは言えないとするデータ等を発表。そうした問題を解決していく取り組みとして「施設と住まいの歩み寄り」の必要性を説明し、国内外におけるストックを活用した多様な住まいや交流施設の事例を紹介した。

 全国各地で住宅確保要配慮者等に居住支援活動を行なう3実務者による事例紹介も行なわれた。

 北九州市で30年前からホームレスの自立に取リ組んできたNPO法人抱撲(ほうぼく)の理事長・奥田知志氏が不動産オーナー、家賃債務保証会社、同法人の3者連携による民間賃貸住宅「抱撲館」の開設などについて説明。「単身高齢者がますます増加していく中、孤立死は深刻な課題。これからは地域コミュニティが葬式をあげるような仕組みづくりが必要だ」と語った。

 石川県で空き家を活用し、まちなかに多様な世帯が居住できる環境を創出している社会福祉法人佛子園の常務理事・村岡 裕氏は、2008年に廃寺を地域コミュニティセンターにし、にぎわいある多機能施設を創り出した取り組みなどを紹介、多様な人々や機能が「ごちゃまぜ」になることがまちの活力を生み出すとした。

 (株)あんど代表取締役・西澤 希和子氏(千葉県船橋市)は、同社が取り組む生活サポート付き住居について説明。サンセイランディック、百戦錬磨、(一社)honeybee等との連携で、障がい者、高齢者に向けた住宅紹介や、いざというときの民泊を利用した住まい提供、働く場の紹介など全面的に生活を支援している同社の事業について述べ、突然両親が他界し倒壊寸前のゴミ屋敷で生活していた障がい者をサポートした事例も紹介した。
 また、同氏が所属する(一社)全国住宅産業協会の「不動産後見アドバイザー資格」についても説明した。

 国土交通省住宅局長・伊藤明子氏、厚生労働省社会・援護局長・定塚 由美子氏も出席、両省の担当者から居住支援に関する制度についての情報提供も行なわれ、全国の自治体関係者ら400人近くが傍聴した。


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