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改正民法、「契約書の作りこみ」が重要

約220人が聴講した

 (一財)不動産適正取引推進機構は20日、住まい・るホール(東京都文京区)にて民法改正に関するセミナーを開催。約220人が参加した。

 セミナーでは、海谷・江口・池田法律事務所の弁護士・江口正夫氏が「民法(債権法)改正と不動産賃貸借における契約書実務への影響」と題して講演。2020年4月1日に施行される改正民法の概要を説明した上で、不動産賃貸実務に関連するポイントとして「連帯保証契約」「賃借人の賃貸目的物に対する修繕権の明文化」「敷金の定義と返還時期に関するルール明確化」「賃借物の一部滅失等の場合の賃料の当然減額」「原状回復義務に通常損耗は含まないことの明文化」の5点を挙げ、それぞれ解説した。

 連帯保証契約に関しては、個人根保証契約に極度額(保証の限度額)の設定・明示が義務付けられることを説明した上で、「改正民法の施行後に、現在の連帯保証契約と同じ極度額を明示しない条項で保証契約を締結した場合、その契約は無効になる可能性がある」(江口氏)などと解説。極度額の算出方法についても、家賃不払いだけでなく、賃借人の失火による火災や居室内での自殺による損害賠償債務も含まれることを考慮した上で極度額を設定すべきとした。「そうなると、極度額が多額になる可能性もあり、個人の連帯保証人が契約に同意するかどうか分からない。つまり、個人保証と機関保証を併用するケースも増えてくるだろう」(同氏)と話した。

 修繕権に関しては、賃借人が設備等の修繕を申し出ても、賃貸人が相当の期間修繕しない場合に、賃借人による修繕が可能になり、その費用は賃貸人の負担となると説明した上で、物件が老朽化した場合にトラブルが多発する可能性を指摘。例えば、賃貸人が解体撤去を検討していた場合、修繕要求があっても立ち退きを優先して交渉することも考えられる。一定期間が経過すると賃借人が修繕してしまい、コストが必要費として賃貸人に請求されることになる。「こうした事態を防ぐには、『修繕権の行使について、オーナーとの合意が必要』などといった特約を契約書に入れておいたほうがいい」(同氏)などと話した。

 原状回復義務については、経年劣化と通常損耗については賃貸人の負担になる旨が改正民法に盛り込まれたことを説明。一方で、通常損耗の原状回復を賃借人の負担で行なう特約の設定も可能であるとした。

 江口氏は「いずれのポイントでも、賃貸借契約書に明記することが大切。今回の民法改正は、契約書をきちんと対策を盛り込むことでトラブルを回避することができる。20年4月の施行までに契約書を作りこんでおいてほしい」と締めくくった。


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